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「介護時間」の光景㉒ 「境目」 8.21.

    今回も前半は、昔の話になります。
 15年前の8月21日のことです。

 2005年当時は、片道2時間かけて、母親の入院する病院へ通っていました。
 それは、2000年から続く「通い介護」でした。この年は、母親が、重い外科的な病気にもなって、手術を含めて、これからどうするのかを考え、実行しなければいけない頃でした。家に帰ったら、義母の介護も続けていましたが、日常的な焦りが強くなってきた頃だと思います。

 2005年8月21日の、記録です。


なんか、イライラしている。
 時間がなくて、イライラしている。
 でも、しかたがない。この中で、なんとかするしかない。

 母の病室に花の鉢を持っていった。
 お菓子のバームクーヘンを買っていって、母親と一緒に食べたら、好評だった。少し重い食べ物かと思ったのだけど、小さいものだったら、たまに買っていくのもいいのかと思った。

 久しぶりに病室にあるラジカセで、小林旭の「昔の名前で出ています」を流し、それで母親は喜んでくれた。

 夕食は40分かかった。ほぼ完食で、ほっとする。

 最近、毎日来なくて大丈夫、と言うようになった。
 少し余裕が出てきたのかもしれない」。


境目

 夜の7時にいつものように病院を出た。
 すぐに虫の声が嫌というほど、襲いかかってくるように聞こえてきて、道を歩いて、信号を渡って、両方が畑の場所を歩いて、近くの送迎バスが出る病院に着くまで、そのボリュームは、ほとんど変わらず、大きいままだった。
 昨日まで、全然とは言わないけれど、秋の虫の声は、ほとんど聞こえなかった。
 聞こえていたけど、ほとんど気にならないくらいだった。
 今日からだった。
 こんなにハッキリとした境目が分かったのは初めてだった。

                       (2005年8月21日)


 それから、2年後に、母は病院で亡くなり、2018年には義母が103歳で亡くなり、約19年間の、介護生活は終わりました。


2020年8月21日。
今日も、とても暑い日が続いています。

 午前中に出かけた妻から、近所にいちじくの実がなっていることを教えてもらいました。

 最近、妻は、ご近所の方といっしょにいちじくを食べて、なつかしさが蘇っていて、だけど、同時に、昔はよく見かけていたいちじくを、あまり見なくなったと思っていたので、今日、久しぶりに、いちじくを見つけて、あ、と思った、そうです。

 いちじくの木に実がなって、熟し始めているのを見て、それも一つだけだった、そのことを、やや高揚した口調で教えてくれたので、私も興味を持てました。

 午後2時半くらいに、マスクをして家を出たら、それだけで暑さが襲ってきて、空の青さも、やたらと強い色になっているように見えました。

 妻に教えられた通りの道を歩き、このあたり、と思ったのですが、最初は通り過ぎてしまいました。
 わたしが思っていた、いちじくとは違って、緑色が多くて、どちらかといえば、家にあるビワの実と似ていました。教えてもらわなかったら、わかりませんでした。写真を撮ったのですが、それでも、これがいちじくだという確信は持てないままでした。

 帰って、自信なさげに、妻に、撮った写真を見せたら、これこれ、よく分かったね。と言われて、ほっとしました。

 
 わたしが見た感じでは、赤くなって、食べられるようになるまで、2週間くらいかかるような緑色で、硬さも感じたのですが、妻が言うには、「この赤くなりかかっているのは、あと3日くらい」ということでした。

 植物の季節の変わり方のスピードは、知らない人には分からないものだと改めて思いました。


(他にもいろいろと介護について書いています↓。クリックして読んでいただければ、うれしいです)。

介護離職して、介護をしながら、臨床心理士になった理由

「介護時間」の光景㉑ 「ブザー」と「音」 8.12.

介護に関するリクエスト②「サービスを利用するようになってから、不安感が増えました。どうしてでしょうか?」。

「介護相談」のボランティアをしています。次回は、2020年 8月26日(水)です。

「家族介護者の気持ち」

「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」

「介護の言葉」

介護books」②介護が始まるかもしれない人へ。不安を(少しでも)減らすための4冊




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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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