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『「介護時間」の光景』(79)「虹」。10.21.

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

 いつも、このnoteを読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして記事を、書き続けることができています。

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。個人的な経験にすぎず、細切れの記録になってしまいますが、それでも家族介護の理解の一助になれば、と考えています。

 今回も、古い話で、申し訳ないのですが、前半は19年前の「2002年10月21日」のことです。後半に、今日、「2021年10月21日」のことを書いています。

2002年の頃

 個人的なことですが、1999年から介護が始まり2000年に、母は長期入院が可能な病院に入院したのですが、私は病院に毎日のように通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けていました。自分が心臓の病気になったこともあり、仕事は辞めて介護に専念せざるを得ない状況でした。

 自分が、母の病院に通っても、医学的にプラスかどうかは分かりませんでした。でも、通わなくなって、二度とコミュニケーションが取れなくなったままになったら、と思うと、怖さもあって、通い続けていたのが2002年の頃でした。

 入院当初は、それ以前の医療関係者にかなりの負担をかけられていたこともあり、最初は、うつむき加減で通い続けていましたが、2年経つ頃は、この病院では、母親に丁寧に接してくれているのも分かるようになりました。

 さらには、入院費用の減額措置なども使えるようになり、少しずつ、病院のことを信頼するようになってきた頃です。

 毎日のように、記録をつけていました。



 母の病室。午後4時20分頃。窓から虹が見えた。

 それも虹の根元が、山に垂直に立つ柱みたいになって、そして空に大きく半円を描いて、すごくくっきりとした色だった。

 その外側に、もう一本、薄く虹が見えた。

 こんなところで、ダブルレインボー(確か、そんな呼び名があったはずで願い事がかなうみたいな話も読んだような気が……)が見れるなんて、と思った。

 その虹は、それから30分以上、出ていた。しぶとい虹だった。

                        (2002年10月21日)

2002年10月21日

「虹が出たのを、病棟の中の、少し遠いところの人に教えに行ったら、みんなが、窓に横に並んで、見てくれて、喜んでくれて、よかった。

 なんだか嬉しかった。いろいろな人の願いが叶うといいな、と思う。

 夕食は、35分くらいかかる。
 
 午後7時に病院を出る。
 バナナ、あるうちは来なくていいから、と母に言われた。

 外へ出ると、少し小雨。

 気温は、11月下旬らしい。
 11月って、このくらいだったけ、ということを思い、11月の連休には、弟が来るということを言っていたのを思い出す。」


 そんな日々が続き、2007年に、母親は病院で亡くなった。それから、心理学の勉強を始め、大学院に入学し、修了し、臨床心理士の資格をとり、介護者相談も始めることができた。

 妻と一緒に、義母の在宅介護は続いていたが、それも2018年に義母が突然亡くなり、介護生活は19年間で終わった。体調が整うのに1年以上かかったが、その頃にコロナ禍になった。


2021年10月21日

 午後12時ごろ、家を出る。

気温

 午前中に家にいるときは、肌寒いような気がして、厚着をしていたから、外出する際も、ヒートテックを着た方がいいのかも、などと思っていたけれど、支度をしている間に気温が上がったような気がして、さらに外に出たら、日差しも温かいので、予定よりも、自分にとっては、薄着で出かけた。

 ワイシャツに、ジャケット。
 
 歩くと、さらに体温が上がり、ヒートテックを着なくて良かった、などと思う。

緊急事態宣言解除

 人は、普通に、道路を歩いている。
 緊急事態宣言が解除され、行動規制の緩和が言われるようになって、空気もゆるんでいるのだと思う。

 ただ、こうして感染が減少して、人が動いて、そしてまた感染が拡大して、また人の動きを制限する。

 そんなことが、他の国でも起こっていたのだから、今のうちに、様々な対策をしなくてはいけないのに、などと思うが、その動きが強化されているようには思わず、すでに選挙の話ばかりになっているようで、何となく不安にはなる。

 電車に乗って、ふと臨床心理士としての仕事のことを考えると、本当に勉強不足だと改めて思う。もう一度、きちんと読まないと、と、すぐに思い出す本があった。

アルコールポンプ

 電車が走って、窓が開いている場所を探して、その近くに立ったけれど、人がそばにきて、距離が保てなくなって、また移動したりする。

 それから、駅に着いて、車両の中が空いてきて、窓を開けたりするけれど、そんなことを今も気にしているのは、自分だけのような気がする。

 それで、今日は、この路線に乗る時に、除菌のためのアルコールポンプを使うのを忘れていたことを、思い出す。

 そして、目的の駅に降りたら、改札の外に、この前はあったはずのアルコールポンプは無くなっていた。

イチョウ

 ススキの群れが見える。
 弱い風が吹いてきて、一斉に、だけど少し不規則に揺れている。
 秋の感じがする。

 さらに歩くと、イチョウ並木が見えて、まだかなり緑が多い。ただ、もっと進むと、場所によっては、かなり黄色くなっているところがある。

 秋がやってきた、と思う。

 川沿いの道を歩いていると、川の向こう側に3人の中年男性が立派なカメラを持って、固まるように川の方向にレンズを向けている。

 カワセミだった。
 小さく青い鳥が見える。とても鮮やかなのは、遠目からでも分かる。

体温のプライバシー

 建物に入る時、アルコール除菌と、小さな画面での検温に導かれる。
 少し前まで、人が検温していたが、今は、どこも機械化されている。
 自分の体温が出る。

 体温のプライバシーは無くなってしまった、と思う。


夕暮れ

 用事が終わり、建物を出た時は、午後5時を少し過ぎていた
 もう夕焼けのピークを過ぎて、暗くなってきているから、日が暮れるのが早くなっていると感じる。

 秋が進んでいる。

 夕暮れの赤い色は、空の隅の方にかろうじて見える。

コンビニ

 少しでも早く家に戻りたかったので、小走りで駅に向かう。
 改札に着いたら、ちょうど電車が出てしまったようで、次まで6分ある。
 
 それなら、いつも寄る、ほぼ駅の構内のコンビニではなくて、ちょっと離れたローソンに行って、スイーツを買おうと思って、歩く。

 棚を見て、だけど、電車が来てしまうから、焦りつつも、「どらもっち」を買う。

 帰りは、「どらもっち」を食べ、持ってきたポットに入ったコーヒーを飲む。
 次の電車は空いていて、窓が開いている場所を選んで、座席に座る。

 少し気温が下がってきたので、持参したセーターも着る。

 帰りは本を読みながら、時間がたつ。

リモート

 家に戻ったら、午後6時30分。
 午後7時から、リモートのミーティングがある。

 手を洗って、顔を洗って、うがいをする。

 スマホも携帯も持っていないので、ノートブックのコンピューターを使って参加するしかなく、それも電話線を使っているから、使える部屋が限られていて、そのセッティングから始める。

 妻が、すでに、セッティングの一部をしてくれている。
 ありがたい。

 それから、その部屋にコンピューターや、他の機材を運び込んで、準備をしていると意外と時間は早く進む。
 
 午後7時から2時間で、ミーティングが終わる。

 それから、妻は、弁当をレンジで温めてくれて、お吸い物を用意してくれた。
 ありがたい。

 少し遅い夕食になったけれど、こうしてやることがある日は、どうして生きているんだろう、とは思わなかったから、いつもは、時間があるだけなのかもしれない。


 まだ、次の感染拡大の可能性に向けて、十分な準備がされていると思えないのに、また、「GoToキャンペーン」が話題になり始めているニュースを知る。





(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。




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