「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」㉛「セルフケア」を意識する。
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私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。家族介護者の心理的支援を仕事にしています。
家族介護者の負担
まるで、コロナが明けたかのように言う人も増えてきたようになりましたが、ご高齢者に関わることが多い家族介護者の方にとっては、実際はコロナ禍が終息したわけではありませんし、それほど不安の大きさが変わっていないかもしれません。
それに、もともと、介護が始まってから、いつ終わりが来るか分からない毎日が、ずっと続いているかと思います。
その気持ちの状態は単純ではなく、説明しがたい大変さではないかと推察することしかできないのですが、それでも、ほんの少しでも負担感や、ストレスを減らせるかもしれない方法は、お伝えする努力はしていきたいと考えています。
時間的にも余裕がなく、どこかへ出かけることも出来ない場合がほとんどだと思いますが、この「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」シリーズでは、お金も時間も手間もなるべくかけずに、少しでも気持ちを楽にする方法を考えていきたいと思います。
今回は、直接、介護者に向けて書かれたわけではありませんが、セルフケアについて考えるのに適切ではないかと思えた書籍を中心に考えたいと思います。
おつかれ、今日の私
著者は、この書籍について、はっきりとした狙いを持って書いている、と明言しています。それは、コロナ禍で、社会がより緊張感と不安に満ちていることも大きく関係しているようでした。
そして、この著書は、その狙い通りになっていると感じ、それはすごいことだとも思いました。全体的に、セルフケアの方法が書かれているようでした。
介護者にとっては、そのまま参考にできる方法ではないかもしれませんが、自分を大切にする、ということに関して、改めて考えるきっかけになるのではないかと思い、紹介させてもらうことにしました。
報われない日常
例えば、最初の項目。
あまり断定的に語るのも失礼だとは思うのですが、この状況は、家族介護者にとって日常的ではないでしょうか。
どれだけ質の高い介護をしたとしても、特に認知症の方を介護をしている場合は、症状が悪くなってしまうことはあると言われています。そして、毎日、24時間体制で気をつけ続けていても、介護が必要な人の状況が良くなることは、ほぼありません。少しずつ下降線をたどるか、時々、階段を降りるように悪くなったりするか、どちらにもしても、介護という工夫や努力が目に見えて報われることはまずありません。
その上、家族介護者の毎日の大変さが本当の意味で理解され、労われることは、やはり稀だと思います。介護の関係者の注目は、当然なのですが、介護をされる側(要介護者)が中心になると思います。家族介護者が「共倒れ」にならないように、といった話は比較的多くされるとは思うのですが、毎日の介護に対して、きちんと細かく、労われることは、やはり難しいように感じています。
それは、報われない毎日が続いている、といってもいいのかもしれません。そして、もしかしたら、報われることを期待すると、返って傷つくことが多いので、それを諦め、諦めることが日常の感覚になっている可能性もあります。それは、介護者にとっては必要な適応なのかもしれません。
こうした報われないことに関して、著者は、こんなふうに書いています。
もちろん、これは、一般的に労働をしている人を対象としていますので、介護者にとっては、カラオケなど外出は難しいでしょうが、ただ、自分のことを大切にする、という意識は大事ではないかと思います。また、今の自分がどのように癒されたいのか、までを観察するのは、それ自体が、自分の気持ちを大事にすることにもつながるかもしれません。
さらに、誰かに話を聞いてもらうとしても、丸ごと聞ける人はまずいない、という指摘もされているのですが、このことも重要ではないかと思いました。
たとえ友人であっても、親戚であっても、家族でさえも、相手の苦悩に対して、全てを理解することはほぼ不可能ということを、前もってわかっておいた方が、最初に期待してそれが叶えられない、よりも、気持ちのダメージは少ないかもしれません。
特に、介護の大変さを聞いてもらえることはあっても、満足できるほど聞いてくれる人は、あまりいない可能性があります。介護の経験者であっても、同じような状況でなければ、完全な理解は難しいはずです。もちろん、そうして丸ごと聞いてくれる方がいれば、とても幸運だとは思うのですが、そうした方を探すよりも、何人かの、いろいろな立場の人に聞いてもらう、というように考えた方がいいのかもしれません。
ただ、介護の毎日では、そうした方法を模索できるほどの余力が残っていないことも多いかと思いますので、少し元気なときに、考えてもらえたらとも思います。
報われない毎日が続くのは大変ですし、報われない毎日、と決めつけられること自体が、返って負担感を増やしてしまうかもしれないので、失礼な仮定かもしれません。
それでも、少し余裕があったり、デイサービスやショートステイなどで、介護をされている方(要介護者)が家にいらっしゃらないときに、今の生活の中で、限られた時間であっても、例えば数分でも、「自分が何をすると、少しでも気持ちが晴れるのだろう」といったことを、考え始めるのは、いかがでしょうか。
介護が長くなるほど、自分のことは気がついたら後回しになっていて、自分のことを考えること自体が、負担につながる可能性もあります。
それでも、少しでも、自分の負担をやわらげることについて、考えてみよう、といったことから始めてみるのは、試してもらう価値はあると思います。
人間関係
さらには、介護を続けていく中で、関わる人は多くなり、その中で不運なことに、ご自分が悪くないのに、人間関係によって、嫌な出来事に遭遇することもあるかと思います。そうした場合、「自分に落ち度があるのではないか」と責めてしまうことで、さらに負担感が増えることもあるかと思います。
ただ、相手によっては、罪悪感や自責感を増やしてくるような接し方をしてくることもあるのも事実ではないでしょうか。
これを、介護者の対応として、そのまま適用するのは難しいと思います。
ただ、様々な人と関わる中で、例えば、その相手が専門家であっても、どうしても相性が悪い場合もあるかもしれません。
そうしたときに、そうした専門家を別の人に代わってもらう、ということは考えてもいいのではないでしょうか。もちろん、そうした「代える」こと自体が負担になる可能性も高いのですが、こうして、「人間関係」という物理的な環境を変えることで、「気持ちの負担を少しでも、やわらげる」ことにつながる場合もあると思います。
人間関係についての指摘として、これも、確かにそうだと感じました。
こうした「なにを考えているかわからない」相手に対して、つい様々なことを、こちらから考えてしまいがちで、そのことで負担感が増えているかもしれませんが、こうして「なにも考えていない」という見立てによって、(その人と会わないようにするといった方法も含めて)うまく心理的な距離感が取れるのではないか、とも思いました。
こうした一般向けの書籍に書かれているセルフケアの話であっても、そこから、「介護の大変さを、少しでもやわらげる」方法は考えられるかもしれない、と思い、今回、紹介させてもらいました。
少しでも、お役に立てれば、幸いです。
もし、今回、紹介した方法が合わない場合は、別の方法も試してみていただけると、ありがたく思います。
(他にも介護のことについて、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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