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「家族介護者の方へ」③「少しずつ介護に慣れてくる変化期」

    いつも、このnoteを読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして記事を、書き続けることができています。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。


(このシリーズをいつも読んでくださっている方は、「仕事を続けている場合」から読んでいただければ、繰り返しを避けられるかと思います)。

自己紹介

     元々、私は家族介護者でした。
 1999年に介護を始めてから、介護離職をせざるを得なくなり、介護に専念する年月の中で、家族介護者にこそ、特に心理的なサポートが必要だと思うようになりました。

 そうしたことに関して、効果的な支援をしている専門家が、自分の無知のせいもあり、いるかどうか分からなかったので、自分で少しでも支援をしようと思うようになりました。

 介護をしながら、学校へも通い、2014年には、臨床心理士の資格を取りました。2019年には公認心理師資格も取得しました。現在は、家族介護者のための、介護者相談も続けることが出来ています。

「家族介護者の方へ」

   このnoteでは、これまでの私自身の経験や、見聞きしてきたこと、学んだ事なども統合して、できるだけ一般的な事として、伝えることができれば、と考えて書いてきました。

 さらに、家族介護者の当事者というよりは、どちらかといえば、支援者や介護者の助けになりたいと考えている周囲の方々向けを意識してきました。

 それは、実際に介護をされている方々は、とても大変な毎日を送っていらっしゃるのは間違いないので、こうしたnoteの記事を読んでいる時間や余裕がないかもしれない、と思っていたからでした。

 ただ、実際にnoteを始めてみて、読んでくださるのは、当初に想定していた介護の専門家の方々もいらっしゃっるのですが、それと並んで、実際に今も介護をされている方々が読んでくださり、コメントをいただいたりすることに、気がつきました。とてもありがたいことでした。

  家族介護者には、こうしたnoteの記事を読むような時間も余力もないのではないか、という私自身の想定が間違っていたのが分かりました。私自身に、その余裕がなかったのは事実ですが、私が介護を始めたのは20年前のことで、しかも、自分が携帯もスマホも持っていない状況に比べたら、今の家族介護者にとっては、こうしたSNSは、もっと身近なものだと思いました。

 こんな言い訳のようなことを書いて、失礼で申し訳ないのですが、やはり、実際に家族介護者の方へ直接伝える意識を持った記事も必要だと思うようになりました。

 これまでの記事と重複することも少なくないとは思うのですが、「介護の段階」によって、少しでも役に立つような記事を書いていこうと思っています。

 投稿するのは不定期になりそうですが、この「家族介護者の方へ」を新しいシリーズとして始めたいと思いました。

 3回目は、「少しずつ介護に慣れてくる変化期」です。

 突然介護が始まり、かなりの混乱期を、なんとか抜け出し、それでも、介護を続けながら、まだいろいろとわからないことが多いと思いますし、また違う種類の不安が増えているかもしれません。

 今回も、長くなり申し訳なかったのですが、ご自分に必要だと思う項目だけでも読んでいただければ、と思います。

仕事を続けている場合

 介護が始まり、仕事をしながら、その状況に突入した方も少なくないと思います。
 そして、仕事に関して、どうしようかと迷っている場合もあるかもしれません。

 もちろん、人によって思いや考えは違いますので、断言はできませんが、ついおこなってしまうのが、仕事を辞めてしまうことです。

 その決断自体に、誤りということはありませんし、辞めたから終わり、というわけでもありません。人によっては、そのことで介護に専念できて、後悔の少ない介護ができ、結果として、人生への悔いも少なくなる、という場合もあると思います。

 ただ、介護が始まり、当初の混乱期を抜けたとしても、判断力が完全に正常になっている場合は、それほど多くないはずです。だから、今のように、日常的でない気持ちのままでの決断は、後になって、後悔することも少なくありません。

 

 だから、まずは、仕事先で、介護休暇が取れるかどうかも確かめて、いったん休んでから、考えるのは、どうでしょうか。

 介護が突然始まると、動揺もすると思いますが、もし、できたら、会社を辞めずに、介護を続けてみるのを考えてみるのも、いいのかもしれません。

 そのうちに、両方を続けるのは無理となったら、その時は、仕事を辞められてもいいのでは、と勝手ながら思いますが、できるだけ辞めない方がいいと思うのは、いったんやめると、年齢にもよるのですが、再就職は難しくなり、介護が終わったとしても、絶望と徒労感が深くなりやすいので、そのことを防げれば、とも思っています。

 また、仕事をしながら介護が可能になった場合は、肉体的には大変ですが、仕事に集中することが、同時に、介護の負担感を和らげる時間になることもあり得ますので、できるだけ続ける努力をしてもいいのでは、と思います。

 さらに細かい話は、この本↓がとても参考になると思います。ただ、このタイトルはちょっと強すぎる印象もあり、「介護離職」は、場合によっては、離職してもいいとは思っています。

仕事を辞めた場合

 介護のために、仕事を辞めた方もいらっしゃるかもしれません。

 それは、ご自分の判断だと思いますので、そのことは大事にされて、それを前提に、これからの介護をどうしていくかを考えるのがいいのでは、と思います。

 介護を経験された、いわゆる有名人の方、もしくは、支援の専門家でさえ、「介護離職をした場合は、そのあとが悲惨になる場合が多い」といった言葉を発する方がいらっしゃいますが、実際に辞めた方は、その言葉を聞く必要はありません。

 ただでさえ、介護によって負担や負担感や、今後の不安があるのに、さらに余計に気持ちを重くさせてしまいますので、仕事を辞めた方は、そうした見方や言葉は、無視するのをおすすめします。

 それよりも、これからの介護のことを考えてください。

 地域包括支援センターは、平日には開いていますので、そういう意味では、相談もしやすくなったと思います。


介護サービスを利用できる場合

 現在、介護サービスを利用される生活を始められているとすれば、地域包括支援センターには、すでに相談に行かれて、介護保険の審査も受けて、担当のケアマネージャーの方も決まったかと思います。

 そして、介護保険も使って、デイサービスや、ショートステイなども、すでに利用を始めていらっしゃるかもしれません。もしくは、訪問の介護サービスや、訪問の看護や医療も使われている可能性もあると思います。

(もしかしたら、ご存じないサービスもあるかもしれませんので、下記のサイトで、ご確認していただいても、いいのかもしれません)。

 

 介護が必要な方(要介護者)と意思の疎通ができるのであれば、その方の要望を聞きながら、介護サービスを利用されるのがいいと思います。

 もちろん最初からスムーズには行かないことも多いですし、デイサービスやショートステイなど、初めて、他人にご家族を預けるのは不安だとも思います。

 それでも、介護はいつまで続くか分かりません。5年、もしくは10年以上の介護生活になるのであれば、誰かプロの手を借りないと、介護を続けるのは難しいかと思います。

専門家からの情報

 さらに、介護サービスを利用する利点は、情報が入りやすくなることです。
 ケアマネージャーだけでなく、介護施設にいらっしゃるさまざまな介護のプロの方々や、医療であれば、看護師や医師などと接する機会が増えるかと思います。

 介護をすでに始めていられたとしても、まだ分からない点が多いと思います。これで正しいのだろうか、という疑問と不安も湧いていらっしゃるかもしれません。

 そうしたことも含めて、そうした専門家の方々に、機会があれば、聞いてみるのは、どうでしょうか。場合によっては、情報だけでなく、いろいろなことを話せる「介護生活の味方」になってくれることもあります。それは、今後、とても力になると思います。

 その一方で、専門家の話を聞いて、自分が至らない介護者のような気持ちになる場合もあるかもしれません。専門家の言っていることがよく分からなかったり、とてもできそうもないと思うかもしれません。

 相手の方々はプロで経験も豊富ですが、いま、介護を始められたばかりの方は、誰でも、介護の初心者です。

 いろいろなことができなくて当然です。

 焦らず、少しずつ、介護を受けられる方(要介護者)の生活を支えていければ、いいのではと思います。もしも、修正点があれば、日々の生活の中で、直していけばいいだけです。
 
 焦らないこと。人に聞くこと。人の力を借りること。うまく行かなくても卑下しないこと。自分自身を少しでも大事にすること。

 できたら、そのようなことに気をつけていただけないでしょうか。

 毎日、介護をされているだけで、それは、とてもすごいことだと、思います。

介護サービスが利用できない場合

 場合によっては、デイサービスやショートステイ。他にも、訪問の看護や医療など、全てのサービスが利用できず、それでも、介護を続けている方もいらっしゃるかもしれません。

 それは、介護を必要とされるご家族の方(要介護者)が、施設へ出かけたり、専門家の方が家にくること自体を、強く拒否されることで、そういう生活を続けられているかもしれません。もしくは、介護者自身が、どうしても人の手を借りたくないと思われていることもあり得ます。

 そういう場合は、余計に、孤立感があり、焦りや、この介護でいいのだろうか、と思うことも多いと思われます。そういう時こそ、できたら、情報を集めることで、負担感や不安が減る可能性もあります。

 その場合は、まずは信頼できる情報を集めることが大事になります。

 特に認知症の場合には、知った方がいいこともあります。

 もしくは、お手数をおかけしますが、書籍になった情報は、ある程度以上の信頼性があると考えられます。

介護の情報について

 今の時代は、おそらくは情報を集めることには、それほど苦労しないかもしれません。逆に、情報が多過ぎて、どうすればいいのか分からなくなる、ということになりそうですので、信頼できそうな情報をゆっくり理解していくことを重視し、焦らないことが大事になると思います。

 そして、意思の疎通が可能であれば、介護が必要な方(要介護者)の毎日の暮らしが、少しでも快適になるように、また、介護をする方自身が、なるべく負担が減るように、いろいろと試し、もし、何かしら失敗しても、それは自然なことなので、またやり直したりしていき、自分を極端に否定したりすることは避けてもらえたら、幸いです。

 もし、すでに意思の疎通が難しい時でも、介護をしながら、介護を受ける方(要介護者)の様子を見ながら、調整していくことは可能だとも思います。(難しいですが)。

 さらに、介護サービスを利用されていない場合は、今は無理でも、長く介護を続けるために、介護サービスをいつかは利用することを、どこか頭のすみに置いていただいた方がいいのではないか、とも思います。

 介護サービスを利用しないで、介護をされている方は、介護者の中でも、かなり困難な状況にあるかもしれませんので、ご自分の心身の状態にも、少しでも気を配っていただければ、と思います。

介護にかかるお金について

 介護サービスを利用するにしても、利用しないにしても、介護生活に入って、できたら、早めの時期から、考えてほしいのが、「介護に関わるお金」のことです。

 例えば、仕事を辞めざるを得なくなり、介護に専念された場合、収入がなくなることが多いと思います。

 そうした場合、貯金を崩したり、節約したり、といった方法をとられることになるかと想像できますが、さらには、介護が必要な方(要介護者)が家族で、それも親御さんの場合。もし、親御さんが年金を受給されていたり、貯金や財産があったときは、その親御さんのお金を使って、介護をする方が適切だと思います。

 もしくは、仕事を辞めて介護に専念する場合、どこまでの予算がかけられるか分かりませんが、介護者の生活費も、介護を受ける側(要介護者)に出してもらうことも、検討してもいいのかもしれません。実際には、難しくても、そういうことを検討してもいいのではないでしょうか。

 もしも、親御さんの資金があまりない場合で、ご兄弟がいらっしゃって、そして、介護をする方が仕事を辞めている時は、他のご兄弟が協力して、介護にかかる資金や、介護者の生活費なども出費する。そういったことも、一度は提案し、話しあってもいいように思います。

 

 それだけ介護を続けるのは、大変なことであり、介護を受ける側(要介護者)にとっても、介護者がいろいろな意味で負担や負担感を減らすのは、よりよい介護のために、とても大事なことだと思います。

 こうしたことについては、今までの生活から、介護生活に入っていく、という変化があった時に、「介護に関するお金」のことも、ご家族やご親戚で、話し合いをされるチャンスではないかと思います。

 ただ、あまりにも、それを話し出すのが難しい時は、今までの話と矛盾するかもしれませんが、無理をされない方がいいとも思っています。

(こうしたことに関しては、この本↓がとても参考になりました)。

自分なりの介護

 介護を始めると、どうすればいいのか、と不安が膨らみ、もしくは、この介護の方法でいいのだろうか、という疑問も起こり、いろいろな情報を集めたくなるのも自然なことです。

 今は、介護に関しても、情報は数多く集まるはずですが、多くを集め過ぎると、かえって、気持ちも振り回されがちです。

 介護は、生活を支える行為ですから、地道な毎日の繰り返しですが、状況や症状も変化したり、突発的な出来事も起こりがちで、それに対応し続けることになると思います。

 自分が主体ではなくて、介護が必要な方(要介護者)の「状況」が主役になり、それらを、いつも、サポートするような毎日が続くことになるはずです。

 そういう時間の中で、介護サービスを利用した時、もしくは、情報を検索すると、専門家の言葉や行為に出会うことも多くなり、実際にさまざまなアドバイスを受けることもあるかもしれません。

 ただ、介護の専門家の言葉は、基本的には一般的なことで、個別の介護に、必ず適応するわけではありません。

 介護は、100人いれば100通りある、と言ってもいいと思いますので、専門家の言葉と、ご自分の介護が、イコールではないこともあります。もちろん耳を傾け、参考にすべきですが、全部に従うことはないと思います。

 書籍やサイトの情報も、今は数えきれないほどの豊富さだと思いますが、もっといい情報があると思い過ぎず、まずは、いいと思ったことを、危険がなければ試して、少しずつ調整していくような、本当に地道な積み重ねをしていく以外に、「自分なりの介護」を作る道はないようにも、思っています。

 そういう生活の中で、介護を受ける側も、介護者も、幸せな時間が少しでも増えることを目標として、そのために必要な情報とスキルを、焦らず、少しずつ身につけていく、と考えるのは、どうでしょうか。

 そうして、それぞれの介護状況に合わせて、自分なりの介護ができる「介護者」に、だんだん変化していくのだと思います。


 それでも、もしも悩んだりしたら、身近に相談できる専門家や、友人や知人がいらっしゃったら、できたら早めに相談されるのも、有効かもしれません。もしくは、自分だけで悩む苦しさを、少しでも減らすためにも、専門家に話をしていただいく方法もいいのでは、と思っています。

(また、この相談窓口↓は、神奈川県横須賀市ですが、お住まいの自治体でも、こういう相談窓口があるのかどうかを、探されてもいいのかもしれません。自治体の、高齢者支援課のような窓口にお尋ねすると、答えてくれる可能性があります)。


 さらに、私自身もnoteで介護相談をしていますので、少し返答に時間がかかりますが、よろしかったら、ご利用ください。


 今回は、以上です。

 次回は、④「介護負担が大きすぎる危機期」の予定です




(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。



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