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「介護時間」の光景㉜「黄色い月」。10.31.

   毎回、昔の話で、申し訳ないのですが、前半は、19年前の2001年10月31日の話です。前回(リンクあり)から、10日後のことです。(後半に、2020年10月31日のことを書いています)。
 
  2001年は、母親の介護を始めて、仕事をやめ、義母の介護も始まりつつあり、母親に療養のための病院に入ってもらっていました。その転院から1年がたった頃です。

 当時は、毎日のように病院に通っていました(リンクあり)。
 家から、電車を乗り継ぎ、バスに乗り、片道2時間をかけて、病院に通っていました。

 毎日のように、その日のことを書いていました。

2001年10月31日

 『今日、庭の柿をとって、冷蔵庫が壊れていたので、新しいのが来た。
  それから病院に向かって、午後4時50分に着いた。

  母は、「足置きに絵を描いた」と言った。
 
 ベッドに座る時に、足がブラブラしすぎないように、足置きを、病院で段ボールみたいなもので作ってくれていた。その表面に、母はいろいろな絵を描いた。イモや紅葉やサンマとか、秋の風物がいっぱい描いてあって、それを見て感心する。

 今日は、午前中に病院内で行う運動会の準備をして、歌の練習をしたとも言っていた。
 母と一緒に病棟内を散歩していたら、スタッフの方に、「大活躍でしたよ」と言われて、母は嬉しそうに笑っていた。

  午後5時15分にトイレへ。
  午後5時35分から食事。

  よく見かける患者の人が、すごく元気がない。大丈夫なのかな。
 
  食事が終わって、母はまたトイレへ行って、部屋に戻って、買ってきたネクターを一口飲んだら、またトイレへ行く。

  病棟内では、オルゴールの音楽が流れている。スピッツ、aiko、バンプオブチキンは、わかった。
  月が昇る。赤い満月に見える。
  食後に見えなくなって、病棟を一周しても、もう見えなくなっている。
  雲に隠れているのかもしれない。

  午後7時に病院を出る』。

黄色い月

 月が林のすきまから見えている。歩いているから、一部分が隠れたり、また全部が見えたりする。

 さっきと違って、きれいな黄色になった。何度も映画やテレビや、いろいろな映像で、こういう変化を見たような気がしている。

 月が普通に黄色っぽい。穏やかに丸い。かなり大きいが、不吉な感じはしない。
 記憶に残っているのは、ただれたようなぼってりとした、さっき見たような赤い月で、そういう時は、いつも不吉な事が起こっていた。

 そういう気持ちの反映だけなのかもしれないが。妙なたとえだけど、トイレの大便の状態で健康が分かる、という事と似ているかも、などと無理矢理あたまの中から考えが出てくる。
 
 秋の虫の声。
 一時期は嫌というほど強く鳴いていて、最近、聞かなくなっていた。だんだん声が弱くなってきたような気がしていた。もう少し季節が進むと、ウソみたいに聞かなくなるんだろうな、と思い出を再現させるように考えていた。
                 
                        (2001年10月31日)

 2007年に母は病院で亡くなり、2018年には義母も亡くなった。

2020年10月31日。

 とてもいい天気でした。

 久しぶりに秋晴れで、雲ひとつないような青空が目に痛いくらいで、気温は低めですが、気持ちいい1日でした。

 電車に乗っても、人手も多めで、ほとんどすべての人がマスクをしていますし、少し静かな車内です。今が、コロナ禍の真っ最中で、都内では連日、新たに感染した人が200人を超えている、という報道されていますが、そういうことを忘れるくらい、空気がゆるんでいるように思いました。

 特に、何もなく、平穏な時間でした。小さな出来事が多いとはいえ、何も起こらない1日は、本当に珍しいけれど、そういうほうが平和でいいのかも、と思って、帰りの電車に乗って、乗り換えようとしていたら、前から人が歩いてきました。

 けっこう寒いのに、タンクトップ1枚で、白いジャージをはいて、長髪で、大きな体の男性でした。なにより、その着ているものも、腕も、ほぼ真っ赤でした。最初は血液とも思いましたが、すれ違うまで見ていると、絵具か何かですが、かなり赤くなっていました。

 デスマッチ直後のプロレスラーという言葉が頭に浮かんで、すぐに「あ、ハロウィンだ」という思いが、それをかき消しました。

 もちろんマスクはしてませんし、その姿は、その人が「日常」を死守しようとしているのかもしれない、とも思いました。



(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。クリックして読んでいただければ、うれしく思います)。

介護の言葉⑦「認知が、入っている」。

「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」⑦自分がコントロールできることをする。

「介護books」

「家族介護者の気持ち」

介護離職して、介護をしながら、臨床心理士になった理由




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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
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