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自分の考えを導く、楽しい分析の場面へ児童生徒を誘おう

 情報活用の場面として、情報の収集、整理、分析、まとめ・表現とあるが、整理から分析へのステップは、他の過程と比べ、かなり大きな段差となっていることを踏まえておきたい。

 なぜなら、分析の仕方を教師が教えていないからである。考えが浮かばない児童生徒に、教師が「しっかり考えなさい。」「それで、どんなことが言えるの?」という声掛けをする姿を見掛けるが、児童生徒に責任転嫁しているだけで、そもそも教師から具体的な考え方を教えていない。

 分析の場面こそが、自分なりに考えを導く、もっとも楽しい場面である。課題をもった児童生徒は、意欲的に情報の収集を行う。しかし、情報の取捨選択をしながら情報を整理していく過程で、今何をやっているのかが分からなく児童生徒は多い。そして、分析の場面で、手元にある情報をもとにして、考えを導こうとしても、どう考えたらいいか分からず、思考停止状態に陥る。

 さて、このような状態に陥らないためには、どうしたらよいか紐解いていこう。

  1.  どの情報活用の場面でも、課題を常に意識して取り組むこと。
     情報の収集、整理、分析、まとめ・表現のどの場面においても、課題と照らし合わせて、取り組むことが必要である。児童生徒に「(活動中に)今、何のために、その活動をやっているのですか?」「(1時間の授業を終えて)今日、あなたは何を学んだのですか?」という投げ掛けに対し、理由を含めて回答できれば、その活動は課題に向かって突き進んでいることが証明できる。

  2.  分析は、分析の場面だけで行うものではない。
     「情報を収集し終えたら、整理する」「整理してから分析する」とい ったいう1つ1つの過程を区切って行うことがよくないと考える。児童生徒は、収集の段階で、「この情報とこの情報でこんなことが言えそうかな」「こんな情報があるともっといいのに」と頭で情報と情報とを関連付けながら、収集、整理、分析を同時に行っている。情報と情報とが紐付けられている状態を大切にし、並行して行うことが重要である。

     このことについては、林一真、梅田恭子(2020)「1人1台のタブレット端末を活用した情報活用能力を育成する授業設計の留意点の提案」を参考にしたい。
     

  3.  考える方法を児童生徒に教授する。
     「比較する」「関連付ける」「多面的に見る」などの考える方法を教師が児童生徒に教授し、取り組む必要性がある。自由に考えさせることが大切だと思って、教師から知識を与えず、考えさせているのは、単に児童生徒を放任しているだけである。考える方法として、泰山裕ら(2021)「思考スキルの教科横断的な活用による思考力育成」は、思考スキルとして提案されている。ぜひ参考にしたい。考える方法も一気に全てを教えるのではなく、低学年の頃から、活動に一つずつ取り入れていき、長いスパンで育成していくことが求められる。

     また、視覚的に思考スキルを学ぶ1つのツールとして、シンキングツールが黒上晴夫(2012)らによって解説書が作られ、提唱されている。黒上氏ご本人曰く、「シンキングツールは、あくまでアイデアメモであり、これは分析した結果ではない。シンキングツールで整理した情報をもとにして、自分の考えに押し上げる段階が必要。シンキングツールを綺麗にまとめることがゴールではない。」とのこと。シンキングツールがあくまで分析を導くツールであり、手段が目的になっている授業場面は少なくない。本質をしっかり踏まえておきたいものだ。


 今までの知識伝達型の授業に慣れた児童生徒は、教師が整理・分析した板書を丁寧にノートに写すことが正義と思っている子が少なからずいる。板書には、基本正しい答えが書かれているため、すぐに正しい答えを知りたい症候群に陥る。
 分析し、自分の考えを導く活動は、「間違ったことを言っていないか」「これを書いてよいか分からない」など、失敗を回避しようとする思考が裏で働き、自分の考えを導く、分析の場面を苦手にしている児童生徒は多い。

 自身の指導観や指導方法を見直し、自分の考えを導く、楽しい分析の場面へ児童生徒を誘いたいものです。


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