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『猫のお告げは樹の下で』青山美智子

青山美智子さんの『猫のお告げは樹の下で』を読みました。

タラヨウの樹がある神社にふらっとやってきて、おみくじみたいにお告げの言葉を一枚の葉で落としていく猫、ミクジ。お尻に星のマークがある黒白の猫で、迷える参拝者の前にばかり現れます。この物語では7人の思い悩む人たちの前にミクジが現れ、それぞれに「お告げ」を残していきます。失恋した相手を忘れたい美容師、中学生の娘と仲良くなりたい父親、なりたいものが分からない就活生、残りの人生を静かに送りたい祖父、転校してきた学校にうまく馴染めない小学生、夢を諦めるべきか迷う主婦、人生に迷う占い師。一つひとつの物語が終わる頃には心があたたかくなる素敵な連作短編集となっています。

一人ひとりの話にとても引き込まれ、あっという間に読み終わってしまいました。ふと立ち寄った神社でミクジに出会えたら、私にはどんなお告げをくれるんだろうかと考えずにはいられなくなりました。

青山美智子さんの作品らしく、登場人物同士のつながりが面白かったです。それぞれに悩みがあるのだけれど、目の前にいる相手も自分と同じように何かしらの悩みを抱える人物だとは気付かないという描写は、現実の世界でも同じなのだろうなと思いました。誰でも色々な悩みや思いを抱えながら日々を生きていることを改めて考えさせられました。

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