芸術と精神医学(5): ヒエロニムス・ボスと幻視芸術
皆様、こんにちは!鹿冶梟介(かやほうすけ)です。
芸術に“シュルレアリスム(超現実主義)”というジャンルがあることをご存知でしょうか?
シュルレアリスムは20世紀前半で起こった文学・芸術運動のひとつで、フランスの詩人アンドレ・ブルトンの定義によると…
...だそうです(よぅ分からんですね😅)。
要するに剥身の心(深層心理)を表現する芸術…、と小生は解釈しております。
シュルレアリスムの代表画家としては、サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、マルク・シャガールなどがおりますが、いずれの画家の作品もちょっと「不気味」です。
今回紹介するのは、この不気味な芸術「シュルレアリスム」の源流の一つと考えられる「ヒエロニムス・ボス」です!
(ボスのようにシュルレアリスムの源流となった芸術をプロト・シュルレアリスムと呼ぶこともあるそうです)
シュルレアリスムがはじまる400年以上前に実在したこの画家はあまり有名ではありませんが、その作品は精神医学的に非常に興味深いものです。
本記事では彼の作品を精神医学の観点から解説いたします!
【ヒエロニムス・ボスとは?】
ヒエロニムス・ボス: (Hieronymus Bosch: 推定1450年ー1516年)
本名: イェロニムス・ファン・アーケン(Jheronimus van Aken)
ブラバント公国(現在のベルギーとオランダ)出身の画家。
人間の本質にある罪悪・厭世感を幻想的かつグロテスクな様式で表現。
【ヒエロニムス・ボスの生涯】
画家であった祖父イェルーン・ファン・アーケンの家があるスヘルトーヘンボスで人生の大半を過ごす。
父親アントニウス・ファン・アーケンは”聖母の輝かしい同胞団(the Illustrious Brotherhood of Our Blessed Lady)”の芸術顧問であった。
1479-1481年の間に、アレイト・ホヤールト・ファン・デ・メルヴェンヌと結婚(上流階級の裕福層の娘)。
両者との間に子供が生まれたと言う記録はない。
彼がいつ亡くなったかも不明だが、”the archives of the Brotherhood of the Holy Virgin”の記録によると1561年まで彼は生存していたらしい。
生前の史料に乏しく、生涯には不明な点が多いが、祖父・父の芸術的才能を引き継ぎ、裕福な家の娘との結婚により街のキリスト教友愛団体である”聖母の輝かしい同胞団”に所属しながら名士として活躍していたことが推測される。
【ヒエロニムス・ボスの代表作】
ボスの作品は、不気味でありながらも人間の欲望や深淵にある恐怖を洞察するといわれ、当時のヨーロッパでは高い評価を受けておりました。
実際、当時ボスの作品のコピーが多数作成されたし、また欧州各地の王侯貴族から絵画の製作依頼を数多く受けております。
特に時のスペイン国王フェリペ2世はボスの大ファンとなり、彼の作品を数多く取り寄せたそうです。
しかし、ボスの作品の多くは16世紀の宗教改革運動による偶像破壊で失われ、現在では8枚のドローイングと16点の祭壇画を含む30点弱しか残っておりません…。
そんなヒエロニムス・ボスの代表作は、やはり「快楽の園: the Garden of Earthly Delights:1503-1504年」でしょう。
この絵画は3つのパネルから構成され、左が「エデンの園(the Garden of Eden)」右が「地獄(the Hell)」そして真ん中が「快楽の園(the Garden of Earthly Delights)」です。
この3つの絵画は、「神によって人がつくられる」=>「人間が快楽や欲望に溺れる」=>「やがて人間は地獄に落ちる」…、というストーリーを描いております。
なんとも救いようのない話ですね…。
そして特に注目すべきは、右パネルの「地獄」に描かれている不思議な生きもの(?)達です。
大きなパネル内には生物と物体(モノ)が融合したようなグロテクスながらかわいい(キモかわ?)怪物達が、わちゃわちゃ蠢いております。
それにしても何故このような奇抜な絵が描けるのでしょうか…?
【幻覚剤と麦角虫症とシャルル・ボネ症候群】
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