犯罪と精神医学(2): 犯罪者の遺伝子〜海外文献の紹介〜
皆様、こんにちは。鹿冶梟介(かやほうすけ)です。
突然ですが、「犯罪と遺伝子が関係する」と聞いたら驚きますか?
実は現代の科学では、「ある遺伝子異常」が人を犯罪に駆り立てる可能性がある…、ということを証明しております。
その人が犯罪を犯す可能性が、生まれながら決定していると言うのは、なんだか映画や小説のようで恐ろしい話ですよね...。
今回の記事では、"犯罪者の遺伝子"というテーマで研究論文をいくつか紹介したいと思います。
【遺伝子異常で 罪が軽くなった?】
この論文は有名科学雑誌ネイチャーに掲載された、ある殺人事件の判決に対する批判です。
2007年3月10日、イタリアに住むアルジェリア人、アブデルマレク・ベイアウトはコロンビア人ウォルター・フェリペ・ノボア・ペレスをナイフで刺殺しました。
裁判で弁護士は、ベイアウトが精神疾患に罹患していた可能性を指摘し、精神鑑定書を提出します。
その結果、懲役9年2ヶ月が宣告されました。
しかし、控訴審判決で裁判官は、更に法医学的に独立した報告書を求めます。
そして弁護人は、イタリアのピサ大学の分子生物学者ピエトロ・ピエトリーニとパドヴァ大学の認知神経学者ジュゼッペ・サルトーリに、ベイアウトの精神異常について追加調査を依頼します。
調査の結果、被告人ベイアウトの遺伝子にはモノアミンオキシダーゼA(MAOA)異常があることが判明しました。
実はこの事件の5年前に有名科学雑誌サイエンスで、低レベルのMAOA遺伝子発現が、犯罪行為に関連しているという研究が発表されていました。
裁判に提出された報告書はこの研究を引用し、「遺伝子異常のためべイアウトは挑発されると暴力をふるいやすい傾向がある」と結論づけます。
そして、この報告書を受け、裁判所はなんと刑期を1年減刑しました!
この決定に対していち早く反応したのは、この論文の著者であるフェレシン氏であり、「ゲノム(遺伝子全体)が人の行動にどのように作用するのかは不明であり、単一遺伝子の検査は意味がない」と、この判決を批判しました。
【犯罪遺伝子とは?】
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