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今回のおすすめ本 セネカ『生の短さについて』

みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、セネカ『生の短さについて』という本です!


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本作品は、『生の短さについて』『心の平静について』『幸福な生について』の三篇が収録されています。


『生の短さについて』

 本篇では、「生の短さ」についてセネカの考えが語られていきます。冒頭において「生は短い」という通説に対し、セネカは「われわれの享ける生が短いのではなく、われわれ自身が生を短くするのであり、われわれは生に欠乏しているのではなく、生を蕩尽する、それが真相なのだ。」(p.12)と述べています。これは人間の生が有限である以上どの時代、どの人間においても当てはまることです。

 しかしながら、日々の生活が永遠に続いていくという錯覚を抱いて生きている人がほとんどではないでしょうか。多くの人にとって有限であることを理解するのは家族の死別、恋人や友人との別離など、取り返しのつかない事態になってから再認識することとなります。これは毎日劇的な変化を送る生活を送ることは稀で、基本的にパターン化された生活を送ることが基本的だからだと思います。学生であれば、時間が有限であることを認識するのは、学期制で区別したり卒業というイベントによって把握することができます。

 しかし、学生という身分から離れるとまるで『カイジ』の地下帝国のような労働に塗れた生活を送ることになり、生の有限を意識した生活を送れる人はほとんどいなくなってしまうのが現状です。そして連休などで長期休みを得られたとしても、有意義に使うことに慣れていないため気づけば休みが終わっていたりするものです。こうした現代に生きる人にとっては、寿命がいくら伸びようとその晩節には人生が短く感じられることでしょう。これはセネカが生きた時代から脈々と続いている、人間の生に対する認識の薄弱さだと思われます。

 ではどうすれば生を長く有効に使うことができるのでしょうか?セネカは「時間を残らず自分の用のためにだけ使い、一日一日を、あたかもそれが最後の日ででもあるかのようにして管理する者は、明日を待ち望むこともなく、明日を恐れることもない。」(p.28)と述べています。これはかの有名なスティーブ・ジョブズのスピーチにもあったものと類似するものです。しかし、自分の用のためにだけ使うことも、今日が最後の日であるように管理することも難しいと思います(もし今日が最後の日であれば労働に勤しむ人は少ないはずです)。

 そこで、「今日できることを明日へ先延ばしにしない」ことを意識して生活を送ることが大切だと思います。僕自身よく体験することですが、年齢を重ねるごとにやらない言い訳はスキルアップしていきます。そしてその言い訳は自分が納得するように調整されているので、行動しない理由として有効に働いてしまうものです。今日やるべきことを必ずやる習慣をつけていくことが生を豊かにする第一歩だと思います。

『心の平静について』

 現代に生きる人にとって、心の平静を得られることは少なくなっています。情報化社会によって社会な不安定であることが認知され、不安に感じる出来事は至るところに存在していることがわかってしまったからだと思います。SNSではどこでも人との交流が可能になった反面、様々なトラブル巻き込まれる場面も増えているように感じます。

 セネカは「自分を信頼すること、そして、ある者は正しい道に程近い道をさまよっているとはいえ、四方至る所で交錯している多くの者たちのたどる誤った道に決して惑わされることなく、自分が正道を行っていると信じることである。」(p.75)と述べています。これはなかなか難しいところで、なんでも自分が正しいということを指してるわけではなく、他者に迷惑をかけないという前提があった上で、様々な答えがある中では自分が正しいと思う道を選ぶことだと思います。例えば受験や就職においては世間的には評価の高いところに行くのが正解とされやすいですが、実際に行ってみたら自分とは合わないことは多くあります。結局はどの道に行ったとしても自分の心理的評価次第で良くも悪くもなるのではないでしょうか。

 また、自分が正しいと思った道でも自分自身の欠陥において達成できないことも多くあります。こうした事態に陥った際に人間は耐えられず、自死に逃げてしまう人もいます。これに対してセネカは「実生活の活動に従事し、国政に携わり、市民の義務を果たすことに専心すること」(p.82)を提言しています。つまり、何かうまくいかないことがあった際には、何か作業に没頭することで意識を逸らすことが重要だということだと思います。もちろん、失敗した際には原因を分析することが大切ですが、冷静でないうちに原因分析を行うことは自己否定→自死に結びつきやすく危険だと思います。まずは冷静になるために何かに没頭することで意識を逸らすことが先決だと感じます。


『幸福な生について』

 人間誰しも幸福になりたいものですが、幸福になろうとすればするほど遠のいているように感じるものです。セネカは「最もよく踏みならされ、最も往来の激しい道こそ、最も人を欺く道なのである。」(p.134)と述べています。これは世間一般に正しいとされている道が自分の気質と合っていないことが多くあるからだと思います。

 そして「幸福な生とは、正しく確かな判断の上に築かれた、安定的で不変の生のことなのである。」(p.143)と述べているように、正しい判断を身につけることが重要だとわかります。注意点としては、財産のように失う可能性のあるものは持つべきではないと言っているわけではないことです。財産はあるに越したことはないもので、「財産を失うこと」に執着するのは良くないということです。正しい判断を支えているのが「徳」であるとセネカは述べます。これはソクラテスの「善く生きる」と通じているところがあると感じます。

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