#司書
「おしゃれ童子」(新潮文庫『きりぎりす』)太宰治著 :図書館司書の短編小説紹介
自意識過剰で自己陶酔的で独善的な一時期というのは、誰にでもあると思う。
その頃に突飛な言動をとり、数年後に当時を振り返って恥ずかしさで顔を覆いたくなる、きっと誰にでもそういう経験はあるに違いない。あって欲しい。
太宰治の「おしゃれ童子」を読んで、まず感じたのは、自分も同じようなことをしたなぁ、との恥じらいへの同調だ。
周囲から浮いた「あわれに珍妙な」恰好をしても、天上天下唯我独尊状態にあ
「名人伝」(新潮文庫『李陵・山月記』)中島敦著 :図書館司書の短編小説紹介
天下第一の弓の名人を志した紀昌。
彼は、当時の弓の名手・飛衛に弟子入りし、まず瞬きしないよう、目を鍛えることを命じられる。
一瞬かつ絶好の瞬間を見逃さないためかと思われるが、紀昌が選んだ修行場所というのは、妻の機織台の下。
そこに潜り込み、機織りの用具が激しく上下に往き来する所を至近距離で見つめ続け、それに怯まずにいられるようにしようと考えたのだ。
目を下ろすと、機織りの糸の下に瞬き