読書記録「ミッキーマウスの憂鬱」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、松岡圭祐さんの「ミッキーマウスの憂鬱」新潮社 (2008年) です!
・あらすじ
ここは夢と魔法の王国 東京ディズニーランド。今日もパークを訪れたゲストのために、キャストは笑顔でお迎えします。
そんな場所で働けるなんて夢みたいだと、後藤大輔は胸が熱くなる。
フリーターとして職を転々としていた中、派遣会社から紹介されたのが「浦安の超巨大テーマパークのスタッフ」だった。
しかも面接で、スーパーバイザーの早瀬さんから聞いたところ、「ヴィソーブのキャラクターイシュー」として働けるらしい。
ディズニーでは従業員を「キャスト」、待機列を「Qライン」と呼ぶように、様々な言い回しがある。きっと「ヴィソーブ」も素敵な仕事なのだろう…。
しかし、勤務初日から後藤は唖然とする。
彼が任されたのは、キャラクターの着付け役。しかも何の作品に登場したかも分からない「ザコキャラ」である。
つまり、後藤が聞いていた「ヴィソーブ」とは「美装部」のことで、表舞台に出ることなく、着ぐるみを着せては脱がすだけの仕事だという。
最初こそ意気消沈する後藤。しかし、ディズニーランドで起きたとある事件をきっかけに、徐々に裏舞台の意義や誇りに目覚めていく。
以前読んだ本をもう一度読もう企画。前に読んだのは中学生の頃だったので、実家の本棚の中でも古参に当たる本である。
しかも偶然にも今日(10月16日)はウォルト・ディズニー・カンパニーの創立日。この本を語るのにちょうどいい日だ。
念の為伝えておくと、この物語はフィクションである。登場する団体名・個人名・名称・事件とは全く関係がない。
その前提は分かってはいるものの、「裏舞台」の設定がリアルすぎて、著者が潜入捜査をしたのではないかと思うほどである。
そしてその舞台裏は、どこの職場と同じくらい「現実」で成り立っている。
私もいつかはディズニーキャストになりたかった人間の一人である。
小学校の頃、東京ディズニーシーは、今はなき「ストームライダー」のキャストに憧れていた。
プレショーで「本物の爆発は大したことないです。今の100万倍くらいですかね〜」で失笑を誘うくだりをやりたかった。
でも結局ならなかったのは、単純に勇気がなかったのと、電車で通うのが面倒だったからなど理由もある。
それに、キャストになって「舞台裏」を見てしまったら、純粋にディズニーを楽しめなくなっちゃうのが、怖かったのもある。
その点で言うと、この本が川口少年に与えた影響は大きそうだ…。
その上、この「株式会社オリエンタルワールド」では、正社員と準社員との格差が明確に分かれている。
正社員にとって、派遣やアルバイトなどの準社員はテーマパークの駒に過ぎず、準社員が正社員に意見を述べるなど愚の骨頂である。
そこまで厳しくないにしても、現実の会社においても、正社員と準社員というものは、待遇や給与などの差があるものだ。
それは会社に対する「職務」や「責任」の差によるものだから、その構造が間違っているとは言えないだろう。
だが1つ言えるとするならば、このテーマパークは大勢の「キャスト」によって支えられていることは事実である。
とあるテーマパークの運営企業のデータを参照すると、社員は約3,000人に対して、準社員は約20,000人にものぼる。
私の知り合いにキャストになった人もいるけれども、マニュアルや規則は多いし、パーク外で公言してはいけないことも多いそうだ。
その不均衡とも言える車輪を回していけるのは、会社ではなく「ディズニーランド」を支えたいという人が集まっているからだろう。
ディズニーシーには新しいエリアができたばかりだし、再来年にはディズニーランドもまた新しいアトラクションができるらしい。
ウォルト・ディズニーが「ディズニーランドは永遠に完成しない」と語ったように、今後も成長し続けることを望む。
Have a nice day!