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暇と退屈にどう向き合うべきか?
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
三連休最終日。一昨日は読書会を主催し、昨日は文化の日を堪能したため、「今日は何もしなくて良いか」と暇を享受している。
ただそんな日だからこそ、私は取り組まねばならぬ課題に取り組む。
2週間前に読み終えた、國分功一郎さんの「暇と退屈の倫理学」新潮社 の読書記録を書こうという課題に。
なぜかと言うと、今ちょうど「退屈」していたからね。
※ この本は一読した程度で、他の哲学書や論文を読み込んだわけではありません。あくまで暇を持て余した人間の独り言程度にご覧ください。
暇と退屈は何が違うのか?
大前提、著者によると、暇と退屈を以下のように示している。
暇とは、何もすることのない、する必要のない時間を指している。暇は、暇のなかにいる人のあり方や感じ方とは無関係に存在する。……それに対し、退屈とは、何かをしたいのにできないという感情や気分を指している。……つまり退屈は主観的な状態のことだ。
つい私たちは、暇と退屈を一緒くたにして捉えがちである。なぜなら、大抵退屈を感じる時は、暇な時間であることが多いからだ。
しかし、この定義が指すのは、「暇だから退屈している」わけではないことである。
その意味で、「暇と退屈の倫理学」は、暇という時間を、いかに過ごすべきかが、どう考えるべきかを説くのが大筋である。
なぜ人は退屈してしまうのか?
ときに、どうして人は退屈するのだろうか。フランスの思想家 パスカルによると以下のように述べている。
人間の不幸などというものは、どれも人間が部屋にじっとしていられないがために起こる。部屋でじっとしていればいいのに、そうできない。そのためにわざわざ自分で不幸を招いている。
たとえば、今日みたいに特に予定のない休日の午前中など。ベッドに横たわるにしても、ずーとスマホを眺めている。
人間は、何かしら「気晴らし」を求めずにはいられない生き物である。この退屈という時間を紛らわせてくれる、何か刺激になるものを求めてしまう。
なぜならば、気晴らしの対象が得られることにより、幸福になれると思い込んでいるからだという。
別の捉え方をすると、快楽物質とも呼ばれる「ドーパミン」が出ることを求めている。
それを見越して、スマホやアプリは「次に何が出てくるのか?」という期待感を煽るよう仕向けている。
SNSではリール動画が度々流される。ゲームでは時折ガチャチケットを配布する。
だから、暇でゴロゴロしている間、ついスマホをいじってしまうのだ。
でもスマホって楽しいかしらん?
スマホやアプリゲームは楽しい。チャンネル登録しているゲーム実況などは、時間を忘れて見入ってしまうこともある。
しかし、それは「この実況動画を見よう」という目的がある。
惰性でスマホを眺めている時は、視覚的には新しいものが次から次へと登場するも、頭の中ではどこか退屈を感じている。
その時の私は、スマホに対して、そこまで「期待」をしていない。
何に対する「期待」かと言えば、自分を楽しませてくれるコンテンツである。
実は気晴らしを探していたその場所そのものが気晴らしだったである。だから気晴らしがはっきりと見出せないのだ。
暇になるとつい触りがちなスマホ。面白いショート動画がスロットのように下から上へ流れていき、あなたへのおすすめと様々なコンテンツが出てくる。
しかし、それらは私の気晴らしを満たしてくれない。なにより私は、その事実に気づいている。
であるならばだ。なぜその時間を他のことに、、、例えば、積読状態の本を読もうだとか、ちょっくら散歩に出掛けるとか※、もっと有意義に時間を使わないのだろうか?
※ だからと言って、読書や散歩といった行為が、必ずしもスマホを眺める行為よりも優れているわけではない。
そもそも有意義な時間とは?
話が飛躍するが、人間の命は有限である。私たちは誰しも「残された限りある時間」を生きている。
だからこそ、「こんな風に一日を惰性に過ごして良いのか」といった言葉に、つい耳を傾けてしまう(あるいは、聞こえないふりをしている)。
私自身の経験談でもあるのだが、身近に自分の夢に向かって頑張る人がいたり、一生懸命仕事に打ち込んでいる人がいると、自分がなんと情けない人間なんだと思ってしまう。
私だって「それなり」に頑張ってきたはずなのに、給料などに差があるのはなぜだろう。何が間違ってしまったのだろうかと。
それで転職活動を始めて、営業職(テレアポ)をやって2ヶ月半で退職したという阿呆のような経験もしたけれども。
身の上話は置いておいて。せっかくの人生を、何か1つのことに打ち込んで、一生懸命頑張れることは、素晴らしいことであると考えられている。
それこそ、三宅香帆さんの「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」集英社のように、一生懸命働くことが強いられている世の中になっている。
だからこそ、社会や周囲の人たちは、「もっと頑張る」ように仕向ける。
世の中に出回っているビジネス書や自己啓発本を読めば、「何を頑張るべきか」はたくさん書かれている。
本を読む、運動をする、自己投資をする、身体に良いものを取り入れる、睡眠をよく取る、マインドフルネスをする。そして余暇時間(皆が休んでいる間)も仕事をするなど。
そこには決して、「スマホを眺める」なんてことは書いてない。それは「有意義な時間の使い方」ではないらしい。
じゃあ頑張れば幸せなのか?
自分が退屈だと気づいているときに、「目的」や「使命」、あるいは「夢」に向かって頑張る人々を見ると、つい憧れてしまう。
実際にパスカルは、退屈の解決法として「熱中する」ことを掲げている。
しかし國分さんは、それらの状態を目指すべきではないと言う。
「決断」という言葉には英雄的な雰囲気が漂う。しかし、実際にはそこに現れるのは英雄的有り様からほど遠い状態、心地よい奴隷状態に他ならない。
テレアポ時代に「架電するまで時間が掛かり過ぎている(≒そのためにお前は貴重な労働時間を無駄にしている)」と注意された。
そこで登場したのが自動架電システム。電話を切った10秒後に、自動で次の連絡先にコールするという悪魔のような機械である。
要は、悩んでないでさっさと電話しろ。電話中にズタボロになろうが構いやしない。アポ獲得という目標のために、不安という感情を無くすほど電話し続けろということ。
仕事を辞めた今となっては、酷な経験だったと笑い話に済ませている。おかげでWebライターとして楽しく仕事をしているわけで。
とは言え、こんな風に「目的」や「使命」のために頑張ることを、求められるのが会社であり、社会であり、人間である。
そして、その考え方が過ぎると、ブッツァーティの「タタール人の砂漠」岩波書店のように、大義名分のために命を燃やすことが、最高の生き方かのように捉えかねられない。
また、一生懸命頑張るという考え方は、仕事に留まらず、先ほど述べたような余暇時間(皆が休んでいる間)もハードワークすることにもつながる。
自分が余暇時間においてまっとうな意味や観念を消費していることを示さなければならないのである。……余暇はいまや、「俺は好きなことをしているんだぞ」と全力で周囲にアピールしなければならない時間である。
ふと会社の朝のミーティングを思い出す。今週の目標と一緒に、新しいこと・週末にしたことをなどをアイスブレイクとして語る時間がある。
でもそれって、ある意味「週末は有意義に過ごさなければならない」的な考え方が根底にあるのだろうなと、思わずにはいられない。
もっとも、時間を有意義に過ごしてこそ最高と言える人生だということが、間違っているとは私自身も思わない。
ただ、そんな「暇がない」ような生き方は、私には向いていないってだけ。
だからこそ、暇という時間にいかに向き合うかが問題である。
では暇をどう過ごせばいいか?
ここまでの話をまとめると、暇は「何もすることがない時間」であり、暇は「何かをしたいという感情や気分」を指す。
必ずしも「暇だから退屈する」わけではなく、その過ごし方によって退屈する感情が浮かぶ傾向にある。
それを捨て去るためには、退屈を感じないくらい一生懸命頑張る、いわゆる「暇を無くす」という方向性もある。
しかし、それは一種の「奴隷状態」である。だからこそ、暇という時間にいかに向き合うことが大事だと。
それに対する著者のアンサーを1つ提示すると、「贅沢を取り戻すこと」であった。
その結論に至った結論は、ぜひ本著を紐解いて考えていただきたいのだが(著者自身も、その旨は伝えている)。
私は「贅沢を取り戻すこと」を、「丁寧に生きる」ことだと解釈している。
この考え方は、「暮しの手帖」の編集長でもあった松浦弥太郎さんの考え方に近い。
ていねいに生きるには、その日が大切な一日思い出させてくれる、きっかけ必要です。何か一つだけでもいいから、暮らしに新しさを投げ込みましょう。
たとえば、心のこもった食事を楽しむだとか、ちょっとした小物にも気を配るとか、そういう無駄だと思われるものを大切にする感覚。
良いじゃないか、惰性でスマホを見ていたって。そういう時間だって、今の私には必要な時間かもしれなかったのだから。
つまるところ、「時間を無駄にした!」って重く捉えないこと。その時は、余計に生きれば良い。
それが私なりの「暇と退屈の倫理学」。それではまた次回!
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