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嘘グルメ

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本文に出てくる料理は、嘘です。嘘だけど美味しそうな描写、それが嘘グルメです。
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#小説

嘘グルメ第31話『安全靴のつま先』

嘘グルメ第31話『安全靴のつま先』

ようこそおいでくださいました。わざわざ事務局まで足を運んでくださって申し訳ないですね。コーヒーで良かったですか?あっ!申し遅れました‥私、日本安全靴協会で製作企画長をやらせて頂いております歪(ひずみ)と申します。名前は歪ですが、安全靴には歪みが出ないよう開発させてもらっております(笑)

‥そもそも安全靴というのは、危険を伴う作業の際に足元を守る為に開発されました。様々な耐久試験を繰り返し、職人さ

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嘘グルメ第30話『ライオンのモツ』

嘘グルメ第30話『ライオンのモツ』

アフリカの南西部にある街「グイデン」を車で8時間西に向けて進み、ジャングルを抜け、山をひと山ふた山と越えた、とある部族が住む集落にやってきた。その部族の名は‥

「ガルダ族」
まだこの時期にもかかわらずジメジメしていて、汗でシャツが体に張り付いている。テレビでこういう所の映像を見た時にハエが人にたかっているのを見ることがあるが、既に私の顔もその状態になっている(笑)さて、ここで出迎えてくれる筈の人

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嘘グルメ第29話『ジェラートピケ』

嘘グルメ第29話『ジェラートピケ』

女性の部屋に初めて入れてもらう時って、ドキドキしますよね。夜になって彼女の寝巻きがフワフワでモコモコの「ジェラートピケ」だったら思わずよだれが出てしまいます!…いや違いますよ?それが食べ物として美味しそうだからよだれが出るんです。

ええ、ジェラートピケのパジャマはデザインが可愛くて女性からの人気も高いですが、食材としての人気も高いです。ミシュラン1つ星の銀座にあるイタリアン「コブリチョーザ」では

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嘘グルメ第28話『潜水艦』

嘘グルメ第28話『潜水艦』

私が潜水艦乗りになったのは十代の頃でした。海上自衛隊の中でも、潜水艦のチームはスパルタで有名でした。何度も辞めたくなりましたし、そのあまりにも厳しい訓練に、毎日毎日上官に向かって「もう殺せ!!殺してくれ!!」ってお願いしてましたからね。

潜水艦の最大の特徴は「隠密性」です。海底スレスレに進み、敵陣の近くになったらギアをトップからニュートラルに入れて、エンジンを切る。そのまま余力で進みます。すると

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嘘グルメ第27話「羊の角中(つのなか)」

嘘グルメ第27話「羊の角中(つのなか)」

お前さんかい?全国の稀少なグルメを取材してるってライターさんは?俺の所にも噂でまわってきたよ。グルメの為なら何処へでも訪ねてくる変な奴がいるってな(笑)

まあこれでも食べなよ、ほらっ。これは干し草の中で作ったゆで玉子だ。天気の良い日に干し草の中に玉子を入れとく、干し草は太陽の熱を貯めて逃がさないから、朝のうちから入れておくと夕方前にはゆで玉子になるんだ。干し草の匂いが移って、ハーブみたいな香りで

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嘘グルメ第26話「能ある鷹が隠す爪」

嘘グルメ第26話「能ある鷹が隠す爪」

「能ある鷹は爪を隠す」あのことわざは例えだと思ってる人が本当に多いんですよね。ええ、実は鷹が隠している爪っていうのが本当に存在するんですよ。違うのは隠している理由です。獲物に対して鋭い爪を隠しておく、ていうことではなくて、あれ…めっちゃくちゃ旨くて狙われるから隠してるんです(笑)

僕が鷹匠を志したのが27歳の時です。僕は昔からソフトバンクホークスの球団マスコット「ハリーホーク」が好きすぎてコレク

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嘘グルメ第25話「豚のみぞおち」

嘘グルメ第25話「豚のみぞおち」

豚には一般には知られていない部位がある。その部位を一度食べると、どんなに機嫌が悪い人でも満面の笑顔になり、盛り上がらず沈黙ばかりが続くパーティーでも皆が饒舌になり盛り上がるという。その部位の名は「豚のみぞおち」。口の中に入れると、その歯応えのある食感とは矛盾するように溶けていくそうだ。。そんな噂を聞いて、私はとある場所を訪ねている。そこは養豚場でもレストランでもなく、、出版社であった。

「よく私

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嘘グルメ 第二十三話「少年ジャンプ」

嘘グルメ 第二十三話「少年ジャンプ」

すいません。えっと、約束していた記者の方でしょうか?私こういう物です。渡された名刺には大手出版社名と「出所幸二」と書かれていた。
あ、それ「でどころこうじ」と読むんです。友達からは「デッド」と呼ばれています(笑)

黄金期のジャンプ時代は死ぬほど忙しくてね、11日寝てない時もありました。何度も何度も辞めてやる!って思ってたんですけど、、不思議ですね。先生からもらった原稿を見ると輝いててね~、それ見

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嘘グルメ 第二十二話「正月の門松」

嘘グルメ 第二十二話「正月の門松」

よう来たがに。ほんとに東京から来たがにか?たかだかメシの話を聞く為にわざわざがにか?おんもしれえ~人だがに。まあ座るがに。コーヒーがにか?お茶かいいがにか?それともコイツがにか(笑)がっはっはっは!!!!こんなの昼間から飲んだら、母ちゃんにどやされるがに!!(笑)

で、正月の話しが聞きたいがにね?

正月終わっていらなくなった門松、あれ俺っちの地域では捨てずに近所の皆で食べるもんなんだがに。門松

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嘘グルメ第二十話「ウイニングボール」

嘘グルメ第二十話「ウイニングボール」

あるプロ野球球団の本拠地の近くに、野球好きが集まるバーがある。ここに野球好きならではのグルメがあると聞いてやってきた訳だが、私はスポーツに、特に、こと野球に関しては全く分からないのだ。大丈夫だろうか?と不安を隠しながらバーのドアを開けると、テレビに映される真っ最中の試合を見ながら応援する客の熱気に圧倒される。一歩店に足を踏み入れると、球場さながらの臨場感に胸が高鳴るのが分かった。

いらっしゃい!

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嘘グルメ 第十九話「団地のコウモリ」

嘘グルメ 第十九話「団地のコウモリ」

うちは大家族だからよ、まあテレビなんかでも大家族特集のやつ見たことあるかもしれねえが大体が貧乏なんだな。俺のプロポーズの言葉が「子供いっぱいの家族をつくりましょう」だったんだけども、まさか…22人もできるなんて結婚した時は想像もしなかったよ。丈夫な母ちゃんに感謝だよな~。今でもよ、、愛してんだわ。おっ、おい!何を言わせてんだよお前は!バカヤロウ!このっ!(笑)

…うちは団地で間取りが3DKだろ?

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嘘グルメ 第十八話「豚の鼻」

嘘グルメ 第十八話「豚の鼻」

ボンジュール♪ヨウコソ、ワガレストランニ♪ワザワザニホンカラキテクレルナンテ、ワタシカンゲキシテイマース。エ?オミヤゲ?イインデスヨーソンナキヲツカワナクタッテ!マア「シカモナカズバウタレマイ」ッテイイマスシネ、アリガタクイタダキマ、、オーウ!コ、コレハ…!ジャパニーズスナック「エアリアル~ノウコウチェダーチーズアジ~」デハアリマセンカ…!?コレニホンノオカシノナカデイチバンウマイデスヨネ?アリガ

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嘘グルメ 第十七話「稲を刈り取った後に残る幹」

嘘グルメ 第十七話「稲を刈り取った後に残る幹」

あらー、ありがとうねー!田植えなんか手伝ってもらっちゃって、かえって悪かったねー!東京の記者さんでしょ?田植えなんかやったことないっちゃかね?とりあえずまあなんもないけど、夕飯食べてってよぉ。オバさんの手作りで悪いけど(笑)もっと若い子が良かったねぇ(笑)ほらあんた!記者さん待ってるよ!

おお、すまねえすまねえ。トラクターの手入れをちゃんとしとかねえと翌日の機嫌が悪くなるんだわ。
ほら飲め飲めビ

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嘘グルメ 第十六話「お盆のクラゲ」

嘘グルメ 第十六話「お盆のクラゲ」

清々しい程の青空はどこまでも抜けるように高く、青い海はそんな空と白い雲を、寄り添うように映し出していた。

東京なんて遠いとこからよく来たね!こんな何もない魚臭い町にようこそ!(笑)匂ってよ匂ってよ!ほら俺の手!な?魚臭いだろ?ほら肘も肘も!ほら!魚臭いだろ?顔も顔も!ほらー!魚臭いんだよー!(笑)

ごめんねー!ついよそから来た人には匂ってもらうんだよ!(笑)これだけ漁師やってると全身魚臭いんだ

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