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採用か育成か。
就職活動や転職活動で、思うように内定が獲得できずに苦戦をする人がいる一方で、内定を辞退されたりそもそも求める人物が集まらないなどと採用活動に苦戦する企業がある。
企業側が確実に採用充足させるための方法がある。
単純に応募してきた人を採用すればいいのである。
面接や試験などを行わずに、文字通り来るもの拒まずで採用すれば、人員は確保できる。
こんな乱暴な書き方をしてしまうと、採用担当の皆様から様々なご意見が挙がってくることは目に見えている。
「そんな誰でも出来る仕事ではない」
「優秀な人でなければ自社のビジネススピードについてこれない」
「選考もせずに採用をするなんてリスクが大きすぎる」
いずれももっともなご意見だ。
私もかつては企業内で人事をしていたので、非常によくわかる。
仕事内容に能力が合致しておらずミスマッチが生じてしまうケース、採用選考時の確認が不十分で入社後にトラブルが発生するケース。
入社前に不安点を確認したり解消することと、入社後に発覚したり発生したトラブルに対応することでは、圧倒的に入社後の問題対応の方が大変であるし、リスクも大きい。
人事としては、リスクは出来る限り早い段階で発見し解消するか回避する方法を探したいところである。
結果として、選考基準が高くなり、思うように採用成果が得られないという状況に陥ってしまう。
かつて、私の上司だった人がこんなことを言っていた。
「教育研修の質が高ければ、入社ハードルは下げられる。」
例えば、レベル100の人を採用して、即戦力として入社後すぐに活躍してもらうのか、レベル50の人を採用して、研修を通してレベル80くらいまで引き上げ、OJTを通じてレベル100を目指してもらうのか、レベル1から丁寧に育てていくのか。
教育研修によってレベル1からレベル100まで育て上げられる組織であれば、レベル1の人材(未経験、スキルや知識が無い、特別な才能や能力が無い)でも採用することが出来る。
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選考に参加した候補者について、採用するか不採用とするかを判断する採否会議がある。
その際に「トレーナブルか否か」ということが議論に上がる。
求める人物要件が10個あったとして、そのうちの7個を満たした人材がいたとする。残り3つについては現時点では満たしていない。
その3つについて、入社後に教育や研修によって成長させることが出来るかどうかが判断のポイントになるのである。
一般的にはハードスキルは育成しやすいと言われるが、ソフトスキル(性格、キャラクター、思考性、価値観)といったものは育成したり変えていくことは難しい(あるいは非常に時間がかかる)とされる。すなわちトレーナブルではない、と判断されることが多い。
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これから先、しばらくは日本の労働人口は減り続けることになる。
企業側は数少ないスーパースターを探し求めるのはなく、目の前にいる人材をいかに育成していくのか、或いはその人材にあったポジションや環境を用意できるのか。
採用時の差別化ポイントは待遇や仕事内容だけではなく、育成や人材活用といった点がより重要視されてくる。
採用担当においては、広報をして母集団を形成し、スクリーニングをして入社につなげるところから、育成と配置など定着支援までの連続的なプロセス設計が求められる。
すこし議論が飛躍してしまうけれど、一括採用、総合研修の是非がどんどん見直されていくのだろうな。主義志向だけではなくキャリアも個にフォーカスする時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。
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