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加藤文元の「数学する精神」

このマガジンのタイトルにある「数学する精神」は2007年に私が書いた中公新書のタイトルです。その由来は、マガジン内の記事「このマガジンの名前『数学する精神』について」 https…
数学にまつわるさまざまな話題(数学・数学と社会・数学と人工知能・歴史・数学者・研究・数学と人間・音…
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記事一覧

テンソルとテンソル積(後半)

後半では、ベクトルとベクトルの「積」としてのテンソル積(前半の議論を少し進化させたもの)…

加藤文元
8日前
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テンソルとテンソル積(前半)

物理に現れるテンソルから、抽象代数学に現れる加群のテンソル積までの準論理的(歴史的ではな…

加藤文元
9日前
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空間とは何か(5-3)建築学的数学の終焉(3)集合論の表現様式

前回「空間とは何か(5-2)建築学的数学の終焉(2)「数学の汚染」について」より、ウィトゲン…

加藤文元
1か月前
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空間とは何か(5-2)建築学的数学の終焉(2)「数学の汚染」について

ウィトゲンシュタインはよくわからない 最近、ベルグソン哲学の研究で有名な平井靖史さんに、…

加藤文元
2か月前
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空間とは何か(番外編) 「方程式は環である」について

「方程式は環である」というのは、いわゆる「佐藤幹夫の哲学」と呼ばれているもの(の前半分)…

加藤文元
2か月前
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バークリー司教が売った喧嘩は誰が買ったのか?(微分積分学をめぐる論争について)

「空間とは何か」の連載は滞っています。今まで後延ばしにしてきたライプニッツの空間概念を論…

加藤文元
2か月前
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空間とは何か(5-1)建築学的数学の終焉(1)

この文章は2024年6月29日開催のHamacho Liberal Artsで、私が行った講演「空間に住む数学」を再構成(補筆・加筆を含む)したものです。講演に招待してくださったHamacho Liberal Arts企画の皆様に感謝致します。 建築学的数学と数学対象の実在論 21世紀の数学(未来の数学)と20世紀的現代数学を分け隔てるものは何か?そういう困難な問いについて考えてみたい。 「建築学的数学」とは20世紀前半から後半にかけて極めて特徴的・典型的だった現代数学

なぜリューヴィルはガロアを発掘したのか?

エヴァリスト・ガロア(1811〜1832)が見出した「代数方程式のガロア理論」は、1832年5月31日…

加藤文元
4か月前
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線形代数と空間概念

次はよく知られた事実である。 たとえば、$${\sqrt{2}}$$は$${2}$$次方程式$${x^2-2=0}$$の解…

加藤文元
5か月前
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ガロアは生前誰にも理解されなかったのか?

毎年5月31日はガロアの命日である。エヴァリスト・ガロア(Évariste Galois)は1811年10月25…

加藤文元
6か月前
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空間とは何か(4-2) 非ユークリッド幾何学発見における空間(後半)

本稿は連載記事「空間とは何か」の第4回目「非ユークリッド幾何学発見における空間」の後半で…

加藤文元
7か月前
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このマガジンの名前『数学する精神』について

(このポストは本マガジンの説明として書いたものです。マガジン内の記事ではありますが、どな…

加藤文元
7か月前
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大抵の概念は複合概念である

以前書いた「「$${0}$$と$${0}$$の最大公約数」とは?」 では、数学の定義に関する問題点とし…

加藤文元
7か月前
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空間とは何か(4-1) 非ユークリッド幾何学発見における空間(前半)

非ユークリッド幾何学の発見とは一体何なのか? ユークリッドの平面幾何学はユークリッド平面、すなわち我々が普段現実のものとして普通に理解している「平らな面」に基づいて展開されている。すなわち、それは我々の視覚的所与としての平面というわかりやすいモデルと、そこで観察される幾何学的現象がもとになっている。ユークリッド『原論』第1巻の定義や公準(第五公準(=平行線公理)も含む)などといった、いわゆる仮定(ヒュポテシス)も、そういった視覚的・現実的所与があって、それによって組み立てら