線形代数と空間概念
次はよく知られた事実である。
たとえば、$${\sqrt{2}}$$は$${2}$$次方程式$${x^2-2=0}$$の解であり、$${\sqrt{3}}$$は$${3}$$次方程式$${x^2-3=0}$$の解である。このことから、たとえば$${\sqrt{2}+\sqrt{3}}$$や$${\dfrac{\sqrt{2}-2\sqrt{3}}{1+3\sqrt{2}}}$$などは整数係数の高々$${4}$$次方程式の解になっている、というのだ。
このことは抽象的な代数学を勉強したことがある人なら、すぐに証明できるだろう。実際、以下に書く証明も、初等的だがある程度は抽象的な線形代数をちゃんと勉強した人なら十分に理解できる程度のものだ。しかし、抽象論の考え方を用いないで、本当に計算によって示そうとすると、なかなか大変だと気づくはずだ。
たとえば、$${\sqrt{2}+\sqrt{3}}$$を根にもつ整数上の多項式を求めることですら、ちょっとした計算をしなければならない。
$${\sqrt{2}+\sqrt{3}}$$のような比較的素朴な例でもこれだけの計算になるのだから、一般の場合にはどんな計算をしたらよいのか、ちょっとわからないだろう。
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