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鐔鑑賞日記

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加納夏雄 老杉朧月図鐔

加納夏雄 老杉朧月図鐔

今回は先日、日刀保山梨支部で拝見させて頂いた加納夏雄の老杉朧月図鐔について詳細など書こうと思います。

明治金工である加納夏雄の作は国内外問わず大人気で手に入れる事自体が非常に困難です。
昨年の大刀剣市でも鐔が1枚出ており、値段も確か2000万円を超えていた記憶ですが初日に売れていました。
勿論値段が全てではないのですが、そういう人気金工であり作を拝見出来る事自体が非常に貴重である、という事をお伝

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金無垢埋忠鐔 桜花透

金無垢埋忠鐔 桜花透

先日、日刀保山梨支部で拝見させて頂いた金無垢の埋忠鐔について詳細など。
華やかな桃山時代を象徴する金無垢鐔。一見シンプルな造りに見えてかつ金という事もあり最近作られたような印象を抱きやすいかもしれないが、金錆や各部の造り込みなど非常に高い技術を持って仕上げられている事に感嘆する。

・茎孔茎孔周りは古金工鐔によく見られるように段を意図的に付けるように潰してあるが、これは以前山梨支部にて薄い切羽を用

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埋忠明寿① 捻り耳鉄鐔

埋忠明寿① 捻り耳鉄鐔

昨年とある刀剣店を尋ねた際に店の裏(奥の間とでも言うべきか)にポンと蓋が開いて何百枚と置かれていた鐔の中に1枚気になる物を見つける。
棚卸の一環だろうか。
遠目から見てその造り込みから桃山時代の埋忠なのは間違いないと近づいて手に取らせて頂いたところ、しっとりとした黒錆かつ薄手の鉄に、なんとも詫びた捻り耳を有し、よく分からない図柄の透かしが施されている鐔が。
銘を見ると埋忠明寿とある。

その造り込

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成木鐔㉞ 蟹図(尾張写)

成木鐔㉞ 蟹図(尾張写)

尾張鐔の写しとしては自身2枚目となる蟹図の成木鐔。
同図は成木氏も好きだったようで相当数作っていると思われ、この鐔は平成3年に「胞山」と号銘を切っていた時期の作。

横87.9×縦92.4×耳厚4.4mm(切羽台厚4.6mm)

胞山銘の製作年代については以前こちらで考察したが、平成3年の作は中でも最初期頃の作と思われる。

鉄地が手入れされ過ぎたせいなのか元からそうなのか分からないが、初めて手に

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古正阿弥鐔② 四季草木図

古正阿弥鐔② 四季草木図

日刀保では古金工の極めであるが、美術館の図録や刀装具研究家による書籍での極めや同時代の文化的な繋がり(後述)を見ると古正阿弥という極めが適切であると感じる事からここでは古正阿弥として紹介する事にする。

非常に大振りで重厚な太刀鐔の形態をしており、真鍮槌目地に日本の四季を表す草木などを金や銀、銅など様々な金属で象嵌している。
更に耳には将軍草やウサギ、トンボや梅の花が赤銅象嵌され、側面には菊が彫り

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鏡師 紋様鐔①

鏡師 紋様鐔①

鏡師による紋様鐔。
山銅で鋳造により作られているが、表面の紋様などあまりダレておらず状態がとても良い。
書籍などから類似例を探ると個人的には南北朝~室町初期頃の作の様に感じている。後程記載。

鏡師のように鋳造された鐔には同じ型を何度か流用した可能性があると思われるが、型にも寿命がありやはり最初の方に製作した鐔の方が綺麗に作れ(例えば紋様などがはっきりとする)、何度も型を使用するうちに型が摩耗し破

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成木鐔㉜ 闇が深い羊鐔の真相

成木鐔㉜ 闇が深い羊鐔の真相

大刀剣市で手に入れた変わった成木鐔。
その伝来故に買うのを躊躇したのですが、その真相について書こうと思います。

上記の様に裏面に羊が鋤き出し彫されている珍しいもの。

問題は表面です。

古金工 菊花透鐔③ 二十五花弁図

古金工 菊花透鐔③ 二十五花弁図

山銅地の大ぶりな菊透鐔。
横92.5×縦93×切羽台厚4㎜。
茎孔は縦35㎜と相当大きな大太刀に掛けられていたと思われる。

デザイン的には上杉家の菊花透鐔にも円形に菊の透かしを彫った物がある。
図録「上杉家の名刀と三十五腰」には南北朝期頃の鐔とされており、径は102㎜×99㎜、厚さ5~7㎜と大振りで、茎孔も写真から推定すると縦寸法で34㎜ほど空いているように伺える。

上記解説から引用すると「表

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成木鐔㉛ 金山写(水さし図)

成木鐔㉛ 金山写(水さし図)

自身としては初めて手にした金山写しの成木鐔。
大刀剣市で手に入れたもので今一度じっくり鑑賞してみる。

平成九年の作で胞山銘が切られている。
胞山銘で年期の入った作は少なく、胞山銘を切っていた時期を探る上で貴重に思える。

横62.5×縦62.3×耳厚5.3㎜

耳は鉄骨を意識して出すように作られている。

平成の作ながら古風な良い鉄地をしている。

茎孔の寄せ鏨などの再現も良く出来ており、なかな

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成木鐔㉚ 丑歳鐔

成木鐔㉚ 丑歳鐔

成木一成氏は金山や尾張、赤坂、京透、甲冑師や信家などの名作の写しも良く作っているが、オリジナルデザインの鐔も作っている。
この鐔も恐らく成木氏オリジナルのデザインで、干支モチーフの作と思われる。
平成5年の作で鉄地の風合いは艶やかないわゆる成木鐔の典型的な作例。

耳は鉄骨などが一切なく、綺麗にまとめられている。

尚、岐阜県博物館に同手の物が所蔵されている。
成木氏が同手の鐔を2~3枚程度製作す

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京金工極めの理由を探る

京金工極めの理由を探る

先日大刀剣市にて手に入れた真鍮鐔を改めて鑑賞。

横81×縦85×切羽台厚3.5(耳厚4.5㎜)

この手の鐔は時々見るもので大体「古金工」の極めが付いています。
しかしこれには「京金工」の鑑定書が付いていました。
京金工という事は恐らく江戸時代頃のものとして鑑定を受けたという事になります。
購入時から感じていた「なぜ?」という疑問を探るため改めてじっくり鑑賞してみます。

まず「鐔+小柄 目貫

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成木鐔㉙ 日光下での鉄色比較

成木鐔㉙ 日光下での鉄色比較

成木鐔について早くも29回目となってしまいました。
どうしても自身の好きな金工だけに鑑賞頻度も高まり、故にブログの内容も偏ってしまいます。
これだけ時間をかけて追い求められる鐔工を見つけられたというのはある意味幸せな事かもしれないですが…。

という事で29回目は日光下での成木鐔の見え方を比較してみます。
鉄鐔などはよく日光下で見るのが良いなどと言われますが、成木鐔も鉄色の違いが分かり易かったので

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法安鐔① 車透

法安鐔① 車透

今まで鉄鐔といえば成木一成氏(現代)の物にしか手を出していなかったのだが、比較的手頃な価格で鉄質の良さそうな鐔を見つけたので手元に置き鑑賞してみる。
鉄鐔に手を出さなかったのは「良く分からないから」の一言に尽きる。
現代の錆付けも非常に巧妙な物があり、古い物との区別、または古いものに新しく錆付けを行っているかなどの判断がなかなか難しい、という事が理由である。こうした鉄鐔の良さを分かるようになる為に

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