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『フラニーとズーイ』読書感想。
悩み苦しむ思春期の妹フラニーを兄のズーイがあの手この手で懸命に助けようとするお話。
本当にそれだけ。
サリンジャー作品において、″グラスサーガ”と呼ばれる、グラス家の兄弟にまつわる作品群の一つらしい。
小説全体にー年前に自殺した長男シーモアの影がつきまとい、皆癒えない傷を抱えながらもがいている様子が生々しく、どんどん話に引き込まれていく。
結局シーモアが自害した原因は不明なのだけれど、この辺はきっと“グラスサーガ“のどれかで語られているのだろう。
ラスト、ズーイが子供の頃シーモアから教わった“太ったおばさん理論(観客は皆太ったおばさんだと思えというもの)“を引き合いに出し、どうにかフラニーの心を救うことができた瞬間が好き。その瞬間にシーモアの死がようやく兄弟の内側で昇華され、彼らの一部となり機能し始めたように思えたから。
シーモアの語った太ったおばさん理論とは、私見ベタベタで噛み砕いていうと、“足が不自由だったり、病気持ちだったりでテレビしか楽しみのない人のため、その人がより幸せに過ごすためのみに演技するべきである“というもので、これを大きな解釈で捉えると“自分の行いが不幸な身の上の人を少しでも救える可能性があるならば、それは絶対行うべきだ“ということだと思う。
シンプルで美しい至言に胸打たれる。
妹のお悩み解決談だけでこの分量、そして感動。
良い小説でした。