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2018.08 017+1 ೫ Profile 序文・例外一致のダンス / 早乙女まぶた 鏡の国のノスフェラトゥ もしくは、愛する人に殺してもらうための100の方法 その68 / ひのはらみめい 島 / だんご シニフィアンのフィアンセ / 菫雪洞 ピーキー・ドッグ / 間富 4:04 / 淡水 デート、その後 / おだやか ナイーヴ / 煩先生 1995 / 水槽 待ちわびたフィナーレ / shakainu 思いつき / naname c
一度ぜんぶを間違えてみたい。そういう気分で街を歩くとき、間違えることの難しさに気づく。例えば靴を履かずに庭に降りるという単純なことがすでに難しい。目的地に行かないバスに乗ってみたり、傘を持たずに雨の中を歩いてみたりするのだってそうだ。なんなら知らない店に入るとか静かな場所でくしゃみをするなどといったことでさえ難しく感じる場合がある。これはきっと空気が汚染されていて、間違えるための力が出せなくなっているということなのだ。 空気を読み物の一種だと考えているひとたちがわれわれの
からだじゅうが粘液じみている。 からだじゅうが粘液じみている。 何かしらの穴が開いたとたん、 ぬっちょりしたものが糸を引いては 引いては 我が体から離れがたいとでもいうように 今がそうならうつの時は全く働けないね。労働は能動だから。 6〜12ヶ月周期でハイテンションきてるけど何?大丈夫? だめなんじゃない?性的刺激を求めてること、もうみんなにバレてるよ。 そりゃ ダラクするのは気持ちがいいし。 さびしいと甘えてひたすら笑顔で褒めていたらわたしのことみんなすきになる? バカヤロ
小さな島があった。住むのは老婆とその孫の少年のふたりきり。 島は豊かな木の枝が集まってできていた。木の枝で指でつまめる程度の細く小さいものばかりであるが、不思議と光沢があり太陽に向けると虹が浮かんで見えた。それらは歩くとポキリパキリと心地良く響き、足の裏をくすぐる。 島に木は1本も生えていない。木の枝は降ってくる。ふたりはそれを「雨」と呼び、雨が降る日は家で過ごす。雨があがると祖母は家を出て空に向かって拝む。少年も同じように拝み、島に散らばる木の枝をきれいに均す。ほ
大きくなったらパパと結婚する 無垢な幼女も知らない男と結ばれる 幼なじみは神様でした その子のことも忘れてしまって 勝手に取り決めないでよ 勝手に思ってるだけでしょう? えっ誰が結婚した?
進め、夏! 破滅 帰れよ もうどうでもいいだろ ベランダが西日を浴びて 人工芝が青々と茂る 積まれた本の塔に頭を突っ込んで 「明日世界が終わります!」 壁の薄い賃貸だから でかい声 出せない そうだ俺は確かここで 彼奴と殴り合いをした 嘘だよ 悠長な事言ってるから またプラゴミの日 扇風機 壊れそうだから ぶん殴った 壊せなかった 粗大ゴミの日が 再来週だったから
ひとりごとをもらせば 床が響くような夜である めくった書物の一頁が音のつるを伸ばし やがて、種子は時計の秒針にくだかれて 耐えがたい不安の香りと共に散乱した 僕の胸の中で おまえは増殖する 狼の群が 僕を懸崖へ追いつめる 白紙にインクが滲むようにじっくりと 不透明な不安が輝く天体を覆い尽くした 眼を閉じても なにも見えはしない 僕はひとりぼっちだ いま 悲哀な虫の叫びなど聞きたくはない どうか不断の問いに答えてほしいのだ だれが狂っているのだろうか 合理的な思考が僕を苦し
家に帰って 血だらけのかかとに驚く リボンのついたパンプスは たっぷりと血を吸っている いっぱい笑って 楽しくて まったく痛みに気がつかなかった あなたは何度も 無理をしないでと ゆっくりでいいからと わたしを心配してくれた しかし 舞いあがっていたわたしは だいじょうぶだいじょうぶと じぶんの痛みに鈍感になっていた わたしはわたしを大事にしたい あなたがほめてくれたわたしを わたしが殺してしまったわたしを 傷はハートの形をしていて まだ血がとまらないから 絆創膏でふたをして
琴線の弓で 虹を啓行して 愛憐の欲で 旋律を逃した 文学の鼠 遊星の挿記 勤続して 罠を患った 経血の罪で 蛇を禁足して 葬列の糖で 陰霖を孕んだ 群像の瞳 痛惜の悪意 契合して 亦を瞬いた
like ephemera, your sequences. 「あの人、病気やったけんねえ」 In my urn, in my room, couldn't even make one move. 「アイスクリームのにおいがするズボンを履いて、いつも優しい人でした」 「クズ」 「one day after one dayのめまぐるしさ、泣いて帰って来るひとびと、彼らにごはんをつくると、なぜかおかずが多いです、いつも、」 ぼくの頭から悲しみを抜き去ってしまうかのよう
かつて少女だったバケモノは地を這うように現世に留まる 少女の頃の面影が僅かに残る我が身を憂いていた いつかは少女性なんてまったく消えてしまうのだろうか この身体が衰え消えゆくまであとどのくらいかかるのだろうか 少女であったことすら忘れてしまうのだろうか 憂いは尽きない。 例えば映画のような背景を纏っていたかった。 彼女は言わばエンドロールへ辿り着かない悪徳の栄え 物語の中盤を過ぎた辺りから刺激は飽和していくことを知った モノクロ、汚れの赤、どう転んでもハッピーエンド、終わり
普段よりも遅く起きた朝、始業時間には十分間に合うほどの時間だった。 最寄り駅と自宅とをつなぐ道の途中にいくつかバス停があり、 家から一番近いところに人が並んでいるのを見つけた。 バスの予定時刻と行列を見る限り、 二分前に来ている予定のバスがまだ来ていないらしい。 夏の日差しに加え連日の立ち作業に疲れていたので、 自腹になるために普段は使わない、 バスの行列の末尾に加わることにした。 私の前には母娘が並んでいて、 娘の方が「お姉ちゃんは? お姉ちゃんは今日まだ
三日坊主の夢に全力尽くす 三日後には全部無駄だったと笑う 同じことの繰り返しで人生怠惰 残るもの無し 完全空っぽの透明人間だ 環境のせい 社会のせい 誰かのせい 自己防衛に兎に角必死 そんなんで多忙で既に瀕死 それなのにお利口で居たいから 起死回生 一発逆転狙って 今日も三日坊主の夢を描く みんな僕みたいだったらいいのに 残らず全員死ねばいいのに みんな頭いかれればいいのに 残らず全員死ねばいいのに この世は有限のモノばっかで難しい 悩んでみても 儚いだの刹那だの 美しい
意味の擬制で成り立つ人や物と、その質量の割りに合わない意味の空疎における差異に目眩のする感覚が、ひらひら落ちて凪に浮かんだ その水紋は宇宙の端にまで届く、澄んだ無意味を導体として それは僅かの濁りで、たとえば指先一本動かすことにすら宿る狂気じみた能動性で、脂っこい具体性の中に掻き消える 指先動かすのって気が狂ってるよ その辺の石に自分の名前を刻んで、それを僕の墓にしようと思った 未処理なだけの肉体は、墓に献花する機能がある死体と定義した 余生は献花のためだけにある