稀釈 / さがみどり

意味の擬制で成り立つ人や物と、その質量の割りに合わない意味の空疎における差異に目眩のする感覚が、ひらひら落ちて凪に浮かんだ 
その水紋は宇宙の端にまで届く、澄んだ無意味を導体として 
それは僅かの濁りで、たとえば指先一本動かすことにすら宿る狂気じみた能動性で、脂っこい具体性の中に掻き消える 
指先動かすのって気が狂ってるよ

その辺の石に自分の名前を刻んで、それを僕の墓にしようと思った 未処理なだけの肉体は、墓に献花する機能がある死体と定義した 
余生は献花のためだけにある
夏、久々にその墓を見に行ったら、雑草が墓に向かって葬列みたいに伸びていた ゆらゆら木漏れ日に照らされたそれは、必然を拒否した僕が必然を感じるくらい優しくて、その瞬間だけ世界は柔らかく笑った 

僕は生きるために生きることを呪っている