『しずく』を読む
西加奈子さんの短編集である。光文社文庫版。四月に頸椎の手術で入院した時、五冊本を持ち込んだのだが、術後二日ほど経って、入院病棟のロビーのテレビ台の横の収納引き出しに、くたれた本がどかっと入ってあるのを見つけて、その中の一冊がこの文庫だった。表紙がはげたり、濡れて変色してるのもあり、入院患者が次に入院する者の暇つぶしになればと、置いて行ったのだろう。『しずく』は表紙カバーが無かったが、状態は一番ましだったので病室に持って帰って、三日ほどかけて読んだ。
冒頭のは、久しぶりに旧友と再会し、乗りで二人アメリカ旅行に行ったものの器用に観光とかできず、ヒッピーの乱交パーティーに連れ込まれるというストーリーで、そんな状況でも己の若さとはっちゃけパワーで精神的に逆転するという清涼感あふれる話だった。
地味なひとも変なひとも猥雑で理不尽なこの世でギッタンバッタンしながら生きてるんやな、俺もその中の、ともに一陣の風に吹かれる塵の一粒なんやなーという気にさせられる短編集だった。いや、読んでる時には一粒、とか全く感じずに楽しく読んでたけど。
たまたまだけれど、入院中に読むには最適と言って良いほどしっくり来ました。