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『王立院雲丸の生涯』を読む

東京の国分寺に住んでいた頃、恋ヶ窪の古本屋で何の気なしに、多分タイトルに惹かれて買い、即読んだ。そして折につけ読み返す漫画。文庫版で全2巻。原作・広井王子、作画・池上遼一。連載第一回分だけ、少年サンデーで読んだ記憶があり、十何年後かに答え合わせをするように物語の顛末を知ることができた。昭和初期を舞台とした冒険活劇で、主人公が進取の気性をもつ快活青年で武道に秀で、少年漫画の主人公として申し分ない、まっとうな魅力がある。舞台が日本、フランス、イギリス、中国、また日本とハイテンポで移り変わり、エノケンロッパやヘミングウェイという実在の人物も登場し、池上遼一の高い画力で「歴史」の中に潜りこめたような気にさせられる。

だらだらと長続きしないところも強い魅力で、一瞬の光芒のように現れて去る主人公の爽快さに打ちのめされて、また忘れたころに読み返すという無限循環を楽しんでいる。

広井王子氏の文庫本書下ろしのあとがきには、連載予定が当初の1・5倍伸びて四苦八苦とあって、読んだ側からしたら、それでも短いやん!と驚かされてしまう。この物語の、無尽蔵のポテンシャルにおののく。

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