【オアシス再結成記念】1996年にノエル・ギャラガーは何を語ったか? Part3
【オアシス再結成記念】1996年にノエル・ギャラガーは何を語ったか? Part1から続く
【オアシス再結成記念】1996年にノエル・ギャラガーは何を語ったか? Part2から続く
この一年半、君はロックンロールの夢をかなえるように生きてきた。そのなかで何か大きな過ちを犯した?
自分が言ったことのいくつかは、言わなければよかったと思う。そのせいで、数え切れないほどの痛手を被ってしまったからね。
特に『オブザーバー』紙に掲載された発言のこと? 君はブラーのデイモンとアレックスがエイズで死ねばいいと言った。
言ったことは言ったし、言ったとたんにこうなった(と話して頭を抱える)。次の瞬間にインタビュアーには謝ったよ。何週間かたって、俺はその記事を読んで、新聞を置いてメグに「やらかしちまった」と話した。メグは記事を読んで「あんた、ばかじゃないの!」と言ってきたよ。最初に電話してきたのはおふくろで、「わたしゃ、こんなことを言うような子に育てた覚えはないよ!」と言われたんだ。あのとき、俺の世界は全部崩れ去った。うちのガキがいなければ何をしていたかわからない。(腕を肩に回すそぶりをして、静かな声で)「大丈夫だって、ちょっとばかを言っただけだろ」って、俺が面倒を見てる弟が肩を抱いて「マジで大丈夫だって」って言ってくれたんだ。まあでも、世間は俺を絶対に許してくれないと思ってる。
成功は君たち兄弟の間だけでなく、バンド内の人間関係にどのような影響を与えたのかな?
なんとも言い難いな。重要なのは印税は5等分されるけど、俺がソングライターで、著作権は俺にあるってことだ。
ほかのメンバーからのやっかみは? 争いの種になったりはしていない?
争いの原因にはなってない。やっかんでるかどうかは、実際にやつらに聞けばいいさ。あいつらは俺に何も言ってこないし、俺の曲の分け前を期待するような人間じゃないと信じているよ。ドラムとかベースが曲を引き上げたとして著作権の一部を支払うかたちがよくあるけど、俺はそれには反対なんだ。
それはなぜ? ほかのメンバーが創造性を発揮していないから?
いや、そういうことじゃない。けど、ベースラインが俺たちの曲をよくも悪くもするという考え方には賛成しないな。曲づくりに夢中になってきたからこそマンチェスターの友人たちを失うことなく、今の俺がいると思っている。俺が曲を書いているときは、それ以外は何もない。48時間椅子に座って、煙草を吸って、酒を飲んで、同じラインを何度も弾く。彼女にとっては地獄みたいなもんだろう。俺がそんな目に遭っているとき、あいつらは居心地のいいベッドで、居心地のいい時間を過ごしている。あいつらにとっちゃ、快適だろうよ。そして新しいアルバムをつくるとなると、あいつらは朝起きてきて「おう、曲はどこだ?」って感じでさ。生み出してるのは俺だっていうのに。自然と思い浮かぶんだけど、マジで死ぬほどやらなきゃいけない。俺は一日24時間をこのバンドに捧げているんだ。でも、もし明日、最悪な事態が起きて、すべてが止まっても、俺はボーンヘッドの娘の名付け親であり、リアム・ギャラガーの兄貴であり、ポール・マクギガンの親友であり、アラン・ホワイトの親友だ。俺たちは家族なんだよ。俺のものは何でも、やつらのものなんだ。
いずれにせよ、リアムは君の曲づくりに感謝している。彼の発言に「俺のなかではノエルはジョン・レノンに次ぐ存在だ 」というものがある。君は自分自身をどう評価している?
もし今、ジョン・レノン、ジミ・ヘンドリックス、レイ・デイヴィス、スティーヴ・マリオット、彼らの最初の2枚のアルバムと俺の最初の2枚のアルバムを比べるとしたら、俺は同じところにいると思うよ。ビートルズと一緒だ。ビートルズとの比較で言うと、俺は8枚目のアルバムを出したあとなら、彼らの完勝なんじゃないかな。たぶんね。
どうも君は曲づくりに関してあいまいな感情を持っているように見える。自然に生まれてくるとも、とても難しいとも言っている。
音楽は簡単だよ。ギターで死ぬほどかっこいいリフが弾けたら、もうイントロもコーラスも間奏も決まったようなもんだ。俺はもうタイトルも決めてある。『New Suede Shoes』っていうんだけど、エルヴィスとは関係ない。メロディーは次に来る。それから最大の難関だ。俺は座ってこうなる(架空のギターを抱えて暗い雰囲気に体を丸める)。「くそ、何を言えばいいんだ」って。『Rock'n'Roll Star』で言いたいことは全部言ってしまったからね。
じゃあ、『 (What's The Story) Morning Glory?』のレビューにも同意できる? 歌詞に締まりがないという声もあった。
もっとうまく書けるとは思うよ。もっと時間をかけてもよかったのかもな。
あのアルバムの「Cast No Shadow」は君自身の作詞に関する不満のようにも思える……「言おうとしたすべての言葉の重みに縛られて(Bound with all the weight of all the words he tried to say)」という部分なんかは特に。
それが俺なんだよ。俺はモリッシーでもないし、ボブ・ディランでもないし、ブレット・アンダーソンでもない。この3人は未来の俺でもたどり着けない優れた作詞家だ。
ということは、オアシスは何を歌うかよりも音や歌の雰囲気を重視するバンドなんだね。
大切にしているのは、バンドとオーディエンスの間にある絆と感情だよ。
「Cast No Shadow」は君が歌詞のなかで多くを語りたがっていないということをほのめかしているのかもしれない。もしすべてを吐き出したら、自分自身が傷ついてしまうかもしれないのでは?
まさにそのとおりだ。俺は魂をさらけ出したいとは思わない。俺にとっての歌詞は現在進行形のあいまいさであって、それがなんなのかは俺にもわからないんだ。
君は「Hey Now」という曲で、「俺は自分に問うんだ、なぜ俺は誰も受け入れられないんだ? って」と書いている。
この詩の意味を説明できる人間がこの世に一人いて、彼女は今隣の部屋にいるよ。俺は行き当たりばったりの性格なんだ。そんなに悲観的じゃない。でも、誰も自分の世界には迎え入れたりもしないよ。
【オアシス再結成記念】1996年にノエル・ギャラガーは何を語ったか? Part4に続く
インタビューに登場した曲|Cast No Shadow
◤短編小説集が発売中◢