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2023年10〜12月を振り返る ・ 映画版


「今年のことは今年の内に」ができずに2024年に持ち越してしまいました。反省。
そんな訳で2023年の10〜12月に映画館で観た映画の感想。並びは観た順。
観たこと前提でネタを割っているので、未見の方は読まれる際にご注意ください。
今までの他映画感想はこちら↓から。





『ルー、パリで生まれた猫』

ぬうううう、かわいいいい……!
ぶっちゃけて言うと、主人公一家、21世紀日本の猫飼い常識では相当アウト(笑)。いくらでもガンガンにダメ出しができます。
まあでもそこはいいか、と思う。だってわたしオトナだし。「これダメでしょ」てちゃんと判るから。なのでそこは全無視で、「わーかわいー」とただただ大画面いっぱいの猫さん達のキュートさを愛でて楽しみました。
この作品をお子さんと一緒にご覧になった大人の皆さんは、「猫を飼う時は外への扉の開閉に気を遣いなさい」とか「自動給餌器が空にならないよう気をつけなさい」とか「アウトドアに出かける時はペットホテルに預けなさい」とか「一度飼ったら野良にしないよう責任を持ちなさい」とか、ひとつひとつご指摘なさればよろしいかと。反面教師という意味では、この映画大変為になります。

それにしてもあの森シーンとか、どうやって撮ったんでしょうね? だって猫ですよ? それこそひょーい、とどっか訳判らんところに走って消えちゃったりしそうじゃないですか。すごいな。
オオヤマネコが出てきたのにもびっくりしました。何にびっくりしたかって、あんな巨大肉食動物が別荘近くを普通に闊歩してるような森を、親が平気でちっちゃい子供ひとりで歩かせてること。見た感じ、家に銃すらないですよね? 
登場キャラとしては、ランボーが好きでした。よだれ臭そう(笑)。マドレーヌも好き。
主役の女の子を演じたキャプシーヌ・サンソン=ファブレスちゃんがそばかすだらけで非常にかわいかった。上手いなぁこの子。




『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』

しかしほんとレア・セドゥはおしみなく脱ぐな……好き。
イグジステンズ』をちょっと思い出しました。体と機械が、ぐちゃぐちゃっと接続する感じ。
雑菌も平気だし痛みも無いよ、てことであんな乱暴な手術パフォーマンスができるということらしいのですが、ベッドや椅子の不具合では結構痛みを感じている様子。おそらくこの世界にも確実に「苦痛」はあると思うのですが、それが自分と同じかどうかはよく判らない。

男性が体の中にぼこぼこと次々「異物」をはらんで、女性達がその施術や機械のメンテをする、という構図が面白い。芸術的にも技術的にも、素材をまな板の上にのせてどうにかする、主権を持ってる側は女性で、けれども男が「体内に生産」しないと何もできない図式。
わたしは腫瘍体質で子供の頃からいろいろ経験してるんですが、昔、脇から10センチくらい下の辺りにぼこっと謎の飛び出しができたことがありまして。最初は小さく、痛みもなかったので放ってたんですが、何年もかけて大きくなって痛みも強くなり切除することに。
切り出した後にお医者さんが「ほーら」と見せてくれたのが、直径1センチくらいのピンクみの強い乳白色の珠で、ビー玉みたいにつやつやで完璧に丸かった。大変に綺麗でした。あんな完璧な球体がずーっと自分の体内にあったのだなあ。
意思とか生活習慣とか全く無関係に、体内にぼこぼこ異物ができるのは不思議な気持ちです。自分の体なのに、自分の内側なのに、全然意思疎通が取れてない。できたブツそのものだって自分なのに、それが体内にあるせいでやたらめったら痛かったりする。「一体お前は誰なんだ」という気持ちになります。

オーキッド・ベッドがクルミの殻を半分に割ったみたいで好きな造形であった。ブレックファースト・チェアは一体食事の何に貢献してくれているのかさっぱり判らなかった(笑)。
どうも消化促進とか、「食べる行為そのもの」じゃなくて食べた後の処理を助けてくれる機械のようなのですが、肉体に直接接続してはいない様子なので一体何の助けになっているのか、あんな苦労しながら食べてたらそれだけでストレスで消化悪くなりそうだと思いました。

映画観てほんの数日後に、こんなニュースの見出しを見て「おお、現実が追いついてくる」と感銘を受ける。

が、中をちゃんと見てみたら、廃プラからつくってるのは「バニラの香料」てだけでした。だからそれ以外の部分はプラ無関係。
なあんだ、とちょっとがっかりしました。だって合成香料で石油由来のものなんて普通にあるじゃないですか。プラスチックももとは石油な訳だから、経由が一過程増えたくらいの差ですよね。乳製品や卵の部分を廃プラからつくってたらどえらい未来話だと思ったのですが。
プラスチックチョコレートの世界はまだまだ遠い未来ですねえ……。




『ヤマドンガ』

ヤマヤマヤマヤマヤマドンガ🎵←癖になる
現世の話とあの世の話とある訳ですが、正直「1本の映画」としての完成度を考えたら、現世の話だけでまとめて2時間くらいで仕上げるのがベターだと思う。途中ちょっと中だるみしました。
それは多分、あの世が登場するのが話が始まってかなり先、つまりその時にはもう頭が現世の話にどっぷりつかってるので、「イヤそんなことはいいから現世今どうなった」「長い、早く現世の話に戻って」と思ってしまったからなんじゃないかと。もっと最初にあの世ワールドをしっかり見せて、「この先絡むよ」て気配を出しておいた方が良かったんじゃないかなぁ。後半に入って、閻魔様が現世に降りてきてからはテンポよく楽しめましたし。

と言いつつも、あの世良かった。何が良いって、セリフまわしが良い。
ちょっと古典入ってるんですかね。時代がかってて、韻が綺麗に踏まれてて、訳も良いし耳に聞こえる音も素敵。口タブラ合戦が素晴らしくてうっとりしました。

話が進むにつれ、閻魔様がどんどん好きになってくる。あれだけ権力好きに使ってるのに、妻ラブなところも良い。
次に好きなのは、小切手書きかけで死んだ人(笑)。もうサイコーにいいヤツ。
でも正直、ヒロインの造形にはあまり魅力を感じなかった。辛い思いをして生きてきたのは勿論気の毒なんだけど、自分が嫌だと思ってる他人からの扱われ方を、自分を好きだと言ってくれる相手に対してやるのってどうなの。それってつまり、相手を「自分の言いなりにして構わない相手」だと思ってるからできることじゃない? 気の毒さも健気さも吹っ飛ぶよね。

それに引き換え、ダナラクシュミの魅力的なこと……! 百戦錬磨の金貸し娘の時も良いし(でも置物サティーを信じるところがラブリー(笑))、「中身が閻魔」の時が更に良い。あの腰の入った座り方! 「女性が男っぽくふるまってる」んじゃなくて、「男が魔法で見た目だけ女になってる」ようにちゃんと見える。
マムタ・モハンダス、わたしこの方全然存じ上げなかったんですが、ホント上手いなぁ。本人の時と閻魔の時の目つきの違いが凄い。ダンスも上手い。
とにかくこの閻魔時の彼女が本当に素敵で、もっともっと長く見ていたかった。

ダンスと言えば、NTRは本当にダンスが上手いですね。あの座り移動ダンス、スゴかった。1本の映画でこんなに多くの女性とラブダンス踊りまくるってなかなか見ない。
そして今回はとみにダンスのエロ度が高くないですか……動きもだけど、とにかく歌詞がエロい。
インド映画ってヒットすると街で歌が流れまくって、子供も歌って踊ったりしてそうなんだけど、これ大丈夫か。キスとかベッドシーンを規制したり酒やタバコのシーンに注意書き出すより前にもっとやることはないかインド。
パリのドレス嬢として、ランバーさんが出てきたのにびっくりした。久々に見たよランバー!

それにしてもラジャさん、中身閻魔で、罠をしかけにやってきたことまで判ってて、なんであんなエロ度高めのラブダンス踊っちゃうのか(笑)。結婚の日取りに口出ししてくるなんて絶対裏があるに決まってるのに、何故かそのままスルーして通しちゃうし。見抜いてることがあんまり役に立ってないのが謎だった。
お爺ちゃんと共演できて良かったねぇ、NTR。

ナラシンハメダルは、最初はそれなりに「こういうルートで戻るのね」てちゃんと説明シーンあったのに、どんどん雑になっていってなんかもう最後は勝手にひゅーんと飛んでくるレベルになってて笑った。じゃあ最初っから雑に戻っておいでよ。




『サイラー ナラシムハー・レッディ 偉大なる反逆者』

馬ミサイル……!(『バーフバリ』のぶんぶんチョッパー戦車を思い出しました)
あの涼やかほっそり好少年が成長したらチランジーヴィになったのに驚いた(笑)。イヤ当然チランジーヴィさんだってカッコいいんですよ、いいんですけど、あのほっそりくんが……。
大変気になって調べましたところ、ルドラ・ソニくんという俳優さんだそうです。現在18歳なので、撮影当時は13歳くらいかな? 髪型といい、昭和の男性アイドル歌手っぽさもあって大変将来に期待が持てます。ご本人のインスタ拝見しても、非常に順調にイケメン度合を上げられているご様子。この先、主演映画がつくられたら日本でも公開してほしいな。
ナラシムハの母親が山村紅葉女史に激似だった。

それにしてもラクシュミがもう気の毒過ぎて気の毒過ぎて(涙)。結ばれないのもあんな結果になるのも仕方がないとしても、せめてラブラブいちゃいちゃ時間がもっと長くても良かったんじゃ? ラブダンスの一曲くらい入れてあげてほしかった。そういえば今回、ラブダンスゼロでしたね。ちょっと残念。
ラストダンスの鬼気迫る様相が美と勁さと情念を兼ね備えていて本当に素晴らしく、涙なしには見られなかった。『バーフバリ』のアヴァンティカといい、美しき強さを表現させたら抜群の人だよね、タマンナー。

そしてアヴク・ラージュ何コレかっこよすぎじゃないですか……? 
マッキー』の悪役がこんなにもステキツンデレ男となるとは。俳優ってスゴい。なんだこの絞ったら滴り落ちそうな色気は……?




『君たちはどう生きるか』

インコ鼻息荒っ……!

もうむちゃ面白かった。好き。2回観ました。
何だか見ていて今までの宮崎映画の集大成のようだと思いましたよ。『カリオストロの城』、『未来少年コナン』、『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』、『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』、『崖の上のポニョ』、『風立ちぬ』、みんな詰まってる。
背景美術が本当に息を飲む程美しくて、これだけでいつまでも見ていられる。

他にもわずかな一場面一場面にも、いろんな作品、映画に限らずいろんなものを想起しました。『銀河鉄道の夜』、『2001年宇宙の旅』、『めぐりあう時間たち』、『惑星ソラリス』、『コックと泥棒、その妻と愛人』、『ライラの冒険』、『デリカデッセン』、『パンズ・ラビリンス』、『星を追う子ども』、『すずめの戸締まり』、『ICO』、『ワンダと巨像』、古事記、イバラード、クロード・モネ、デ・キリコ、アルノルト・ベックリン、etc.etc.
なんといっても一番はこれ、村上春樹。この映画「原作・村上春樹」であってもびっくりしないレベルでハルキ・ムラカミでした。生者の世界と死者の世界とその狭間の世界、日常から異界にするりと入り込む、その間をとりもつ謎の「ヒトと動物の間のような生き物」。象徴性の高い不可解なモチーフの群れ、悪と善とが混然と混じり合う謎のルールに満ちた死の匂いの濃い世界の中で、パズルを組むようにして問題をクリアしていく主人公。
村上春樹が近年の作品で昔の話の再構築してるのも、今回の宮崎作品集大成みたいで似ている。ノベライズしてほしいくらい。

ペリカンがもう特に何とも言えず切ない。インコも、「こわぁ……」思ってたけど、大伯父さんの庭に来た部下が「なんて美しい……!」て目をうるうるさせてるのにぐっと胸が詰まりました。
わらわらちゃん達はもうたまらんかわいかった。若キリコや眞人がデカ魚解体してる時に「わーっ」となってるのがかわいすぎてもう!!!

世間よりかなり遅れて見に行ったのですが、監督の意図を汲んでほぼ情報入れず、声優が誰かも知らずに行ったらやはり微妙な人がぽつぽつとおられて、エンドクレジットで「ああ……」と思いました。主人公も、上手かったけれどもいくら何でもあの年齢の子供の声ではないと思った。ちょっとアシタカっぽい。
しかし監督、「いかにもなアニメ声がイヤ」なんだろうけど、今回の菅田将暉、むちゃくちゃ上手かったですが、あの声ってまさに「アニメでああいう役柄の時に声優が出す声」じゃないですか? あれがOKなのなら、今は普通に「アニメくさくない上手い声優」がたくさんいるんだから、食わず嫌いしないで一度使われてみたらよろしいのに。

……それにしてもいくらこの時代は「配偶者が死んだ後にその兄弟姉妹と結婚」が割とよくある話だと言え、亡くなった時期と妊娠した時期があまりにも近過ぎじゃありませんこと……? あの出産時期を見るに、コレ喪中の間に孕ませてますよなお父さん……? 「喪中の間に祝い事は避けよう」感覚は、むしろ現代よりこの時代の方が強いと思うんですが……?
それはちょっとなあ、これが亡くなった人と全く無関係の女性ならまだ「情の薄いお盛んなお父さんですね」てだけの話だけど、夏子さん実のお姉ちゃんが亡くなってる訳で、アナタだって喪中ですよね……「せめて喪中明けまで待ってください」くらい言うてもいいんじゃないかしら……?

なお青鷺を見たことがない方に、こちら鴨川河川敷にて間1メートル程の近距離でのんびりと立つお姿。

鴨川に限らず、京都では割とあちらこちらで、結構人間に近い距離感でも平気な顔でたたずんでいる。




『サタデー・フィクション』

酔った……。
開始十数秒くらいで「これは危ないかも」と思ってたんですがやはり酔った。特に最後の方の舞台襲撃辺り、キツかった。まあトリアー監督の映画に比べたら軽いもんですが(笑)。

バイ・ユンシャンが非常に好き。許すまじモー。しかしあんな目にあわされて本当に男性はあそこまで動けるものなのか。そもそもものすごい出血になりそうな気がするんですよ状況的に。
しかし正直、ユー・ジンのあの「嘘」は理由がちょっとよく判らない。「他国からアメリカに密告されず日本の奇襲を成功させること」が「なすべきこと」なの? アメリカを対日本戦に本格的に引っ張り込んで、日本をこてんぱんにやっつけてもらって中国から手を引かせよう、てこと??
アメリカをがっつり対枢軸国戦にひきずりこむのは、フランスやイギリスにとっても有難いことだと思うので、嘘をつかなくてもいいように思うんですが。当時のフランスやイギリスの政府のお偉方なら、きっと知ったところで「よしコレはアメリカには黙っておいて日米開戦させよう」て思うだろうし。

中島歩が実に良かった。モノクロ似合うなあこの人。声も良い。
古谷さんはカッコ良く有能っぽく出てきた割に、いくらクスリ盛られたとは言え、いわば色仕掛けであっさり機密喋っちゃってびっくりした(笑)。




まとめ

他に比べて今期の数がやけに少ないのは、自分にとって予想を超えるくらいに「みなみ会館閉館ショック」が大きかったから。
なんかこう、「映画館に行って映画をみる」という行動を取るのがひどく大儀に感じてしまって。どうにも腰が重たくなってしまいました。こんなにこころがへこたれてしまったのかと自分でもうろたえた。
でもこんなことではいけないね。2024年はまた、ぼちぼちとでも映画館に足を運びたい所存です。2024年最初の映画は『PERFECT DAYS』だ。
ちなみにみなみ会館閉館に関する記事はこちらから。


ここからはしょうもないおまけトークですが、世間の波よりかなり遅れての『君たちはどう生きるか』だった為、シネコンでのレイトショーしかなかったんですね。それも、終わり時刻が23時台になるレベル。
まあ選択の余地は無いので観に行きましたが、2度目の鑑賞時、席を確保した際の画面では自分以外に最後列の1席しか埋まってなかった。

「この人いなかったら貸切王だったなあ」と思いつつもシアターに入ったところ、そのおひとりが現れないまま映画スタート。
「え、まさかの2度目のジブリ貸切王!?」(1度目の話はこちら)と思っていたら、映画開始から20分以上が経って入場者がひとり。

「なあんだ、ま、でもしょうがないよね」と映画を見終わり、立ち上がって荷物をまとめつつふと見ると、その人最後列でなく前からも横からもど真ん中辺りの席に座って、しかも爆睡してた。もう完全な睡眠。ぐっすり。
「ええ……」と思いつつシアターを出ました。あれは何だろうな、最後列の人が来なかったのか、それとも最後列の人が「空いてるならいいか」と勝手に席変えたのか。

ちなみに本当に爆睡してた模様で、自分がシアター出てロビーのお手洗いに行った後、ロビーでコート着たり手袋つけたりの身支度をして、それが終わる頃になってやっとロビーに現れていた。
遅れてやってきてあんなに爆睡するなら、来ないでわたしを貸切王にしてくだすったら良かったのに……(笑)。
 
 
 
 

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