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『世界の端から、歩き出す』(ポプラ文庫ピュアフル)販促〜消えてしまった京都のお店・3


に引き続き、今回も『世界の端から、歩き出す』に出てくる、今はもう消えてしまった京都のお店のお話。
以下より、ちょっとだけ試し読みできます。
冒頭部分で「ファンタジー?」とか「あやかし系?」とか思われる方が多いようですが、実はこの後はその要素はほぼありません(笑)。



正確に言うと、こちらの本にはそのお店は出てきません。

もともとこの小説は、小説投稿サイト「小説家になろう」に掲載していたものでした。
文字数にして約353000文字。

一般的な文庫一冊は、大体10万〜12万文字。
到底おさまりきりません。
とは言え、こちら出版第二作。知名度は全くなく、いきなり上下冊で本を出すのは難しい。
そこで編集者さんから提案、「七章までの部分を本にしましょう」。

大抵の物語において、主人公は何かしらの出来事にあい、それを解決する(もしくは解決できないままに終わる)ものですが、この話においてはざっくり2つ、それがあります。
ある出来事で自分の過去に向かい合い、自分なりに受け止めて立ち上がる。けれどもその後も、まだ自分でも気づいていない自分の中の巨大なわだかまりに大きく翻弄され、くじけ、それでも再び、立ち上がって歩き出す。
この、最初の「立ち上がった」ところまでをひとまず一冊の物語にして出しましょう、そして売れたら続きを出しましょう、と。


売れませんでした(泣笑)。
まあこればかりは仕方がない。

けれども自分としては、これは後半の立ち上がりも込みでひとつの物語だと強く思っています。
いつかこの部分までも本にして出せたらいいなあ、というのが夢です。
更に野望を言うなら、主人公の叔父の若き日の物語も本にしたい。

という訳で、いまだ本になっていない後半部分に出てくる、「今はもう消えてしまった京都のお店」がこちら。
Te concepcion(テ コンセプシオン)。
主人公が恋人とクリスマスにご飯を食べるお店です。


東本願寺の斜め向かいにひっそりと立つ、紅茶専門のカフェでした。
そのひっそりさは、真っ昼間でも閉店しているように見える程。
何故だかね、外から見ると店内が大変暗く見えるんですね。入店すれば、ちゃんと明かりもついているし、内装は白が基調だし、全く暗くはないんですが、あれは一体何だったのか。今も不思議です。

紅茶専門店ですから紅茶が美味しいことは言うまでもないのですが、ここはフードも大変に美味しかった。
特に、ランチなどの食事の野菜の美味しさが筆舌に尽くしがたいものがありました。
わたくしアスパラとさやいんげんがちょっと苦手(嫌い、ではない)なのですが、ここで食べたそれは「おかわりください」と言いかけるくらい美味しゅうございました。
世によく言われる、「キミのその『○○ギライ』は本当に美味しい○○を食べてないからだよ!」て美味しんぼ的ワードがありますが、この時ばかりはそれが本当だと思った。美味しい野菜って美味しいんだ!


正直に申し上げて、今でも恋しいです。
前菜にパンとデザート、本日の紅茶がついてメインが選べる大変ゴージャスなランチが1500円前後と、申し訳なくなる程でした。ゆったりと提供してくれるので、大変豊かな時間がすごせるのです。
甘いものでは紅茶のプリンが好きでした。

ミッフィーの絵本を使ったメニューもかわいく、紅茶のカップはデンマークのブランド、ローゼンタールの人魚姫カップ。大変に洒脱で感じのいいデザイン。これ今はもう廃盤なんですね。買っておけば良かったな。
ティーコジーとか、あれこれの小物が皆いちいちかわいかった。
全身からシャイさが滲み出た、乙女感漂うオーナー(男性)のたたずまいも好きでした。


正確なオープン年を覚えていないんですが、2000年とか2001年とか、そのあたりには既にあったように思います。閉店は2015年。
閉まることを知らなくて、他県からやってきた友人を伴って京都駅から歩いていったら、つい先月に閉店した、と紙が貼られていてたいそうショックでした。

まあ、うん、いつ行ってもお客さんは本当に少なかった。だからこそゆったりもすごせていた訳ですが、何ともたまらなく切ないです。あんなに良いお店があんなに知られずになくなってしまうなんて。
いいものはちゃんと見えるかたちで応援していかねばならないのだなあ。

あのシャイなオーナーは今どうしておられるのか。どこかでまた紅茶のお店をやられているといいのだけれど。そうしたらまた全力で応援します。
あの紅茶を飲みながら、あの野菜とあのお肉とあのデザートがまた食べたい。心底食べたい。


ということで、あともう一回、「物語に出てくる消えたお店」の話、続きます。
次回は食べ物屋ではないよ。


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