【はがきサイズの短編】爆弾逃亡犯 テーマ:清明 追記あり
こんにちは!高木梢です。
今回のテーマは、「清明」です!
うまく引用できていますかね…?上記のサイトからです。春のみずみずしい雰囲気を感じますね。まだ秋ですけど!
実は冬を待ち望む 高木梢より
なぜだ、爆弾が正常に作動しない!
4月5日3時50分。俺の体に巻き付けた爆弾に設置された時刻を見てまた焦る。
ここ自然遺産の山の中でこいつを炸裂させれば、満足に食えねえ俺の家族に莫大な礼金が入るんだ。思想とか理想の未来とかどうでもいいけど、絵が好きな妹が一生困らないくらいの金が得られる思えば、俺の命なんて安いもんさ。
だから絶対にこの仕事は成功させなくちゃいけない。なのに、どうして!
これを作動させるには暗証番号が必要だと、「依頼者」が言っていた。ところがこのロック、俺の苦手な漢字でできていやがる。読みがSEIMEIなのは覚えていたが、左と右がバラバラになっていて肝心の漢字がわからねえ。
…ん?ああ、そうだ。漢字だ。
たしか依頼者は、爽やかな春の言葉で今の季節ぴったりじゃないか、クックックと笑っていた。
だから春の言葉って、「晴明」じゃねえのかよ!
いくら「日」「青」「日」「月」とやっても全然合わねえ。てか、漢字って種類ありすぎだろ!どうすんだよ、もう朝になっちゃうよ!
こうなったら、崖から飛び降りて強制的に炸裂させるぞ。俺は最期に妹の顔を思い浮かべた。そして、雄叫びをあげて走り出す。
暗く高い木々を抜けると、はっとするほど美しい朝焼けと大きな森が広がった。橙に輝く空は水彩絵の具を透明に重ねたようで、妹が絵筆を洗うバケツの水を思い出した。鳥が穏やかに鳴いていた。
俺は膝から崩れ落ちる。こんな場所を、俺は消そうとしていたのか。それに、俺はあいつを泣かせるところだった。ばかな兄ちゃんで、ごめんな。
身体から爆弾を取り外す。俺は朝日を浴びながら崖を降り、妹の元へ帰る旅を始めた。
Fin
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。素敵な画像をお借りしました。
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