【はがきサイズの短編】視線は彗星のように テーマ:射すくめる
こんにちは!高木梢です。
今回のテーマは、「射すくめる」です!
蛇に睨まれた蛙というか・・・コトバンクに出てきた漢字が初めて見る漢字だったのでテンションが上がりました!
6年2組の高野くんは、なんか怖いって女子の間で有名だ。
体も大きいし、声もすごく低いし、飛んだカモメみたいな口はいつも口角が下がっている。
鼻はきれいな鷲鼻で、なんといってもタカみたいな射るような鋭いまなざし!
クラスで一番足が速い川崎くんは、
「いずみ、あいつはしゃべらねーけどいいやつだよ」
って言ってたけど、なんで私にだけそう言うのかわからなかった。
高野くんが私のことを好きって小さな噂が流れたのは、一学期の事だった。黒板に高野と泉川が相合傘でくくられ、私は本気でうんざりした。
友達のえりかは「いずみ、かわいそう」と慰めてくれた。
高野くんは、なにも言わなかった。でも、視線は感じた。振り返ると、ぱっと目をそらす。ちゃんと目を合わせたことも、喋ることもなかった。
高野くんが、私のどこを?
だって、好きとかわかんない。
少女漫画を読むとキュンとはするけど、共感なんてしたことがない。高野くんは、そういうのわかるのだろうか。
言わなきゃわかんないよ、高野くん。
なんて噂をみんな忘れた2月、えりかとの帰り道であとちょっとで卒業だねって話していたら、えりかのコートについているフードが勢いよく彼女の頭にかぶさった。
じゃあな、えりか!と川崎くんが心底楽しそうに走り抜けていった。
川崎、死ね!とえりかは鬼の形相で叫ぶとまた大きな笑い声が上がった。
私も笑った。
川崎くんを追いかけて、数人の男の子たちが私たちの間を駆けていった。
その中に高野くんがいることを私は知らなかった。
私の右肩に大きな手をふわっと触れた。
「じゃあな、いずみ」
早口に言うと、高野くんは彗星のようにぐんぐんと遠くに走り去っていった。
うそ、まさか。初めて話しかけられた。眩しそうに私を見て、笑っていた。あんな顔、あんな目、初めて見た。
だって、まるで・・・好きな人にする顔だ。
私は、射すくめられたように立ち止まった。くらくらした。高野くんの目は、全力で私を好きだと言っていた。私も、いつかあんな目をしちゃうのだろうか。いとおしそうに見つめて、射すくめるのだろうか。高野くんを?
私は、遠くを眩しく見つめた。高野くんが私の右肩に触れた左手は、ぎゅっと握られていた。
Fin
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
素敵な画像をお借りしました。
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