【はがきサイズの短編】おめかしが上手な桜の木 テーマ:骨張る
こんにちは!高木梢です。
今回のテーマは、「骨張る」です!例によってコトバンクのリンクを張るので、よかったらご確認ください。
骨張った言い方、という意味もあるのですね~
ある公園に、おめかしが上手な桜の木がいました。桜はまだ木が若く、小さくて細い枝ばかりでしたがそれらを目いっぱい空まで伸ばして、たくさんの花を咲かせました。
春は息をのむほどの桃色の光で包まれ、夏は青い葉を涼しげに揺らしてふさふさとし、秋は見事に紅葉しました。
しかし、いくらおめかしが上手といっても、葉がすべて落ちた状態ではおしゃれなどできません。気取り屋の桜にとって、許せない事態でした。
桜は、木に止まったすずめに問いかけました。
「冬の間、なにでおしゃれをしたらいいと思う?」
「鳥の羽は?もこもこしていて、冬はあたたかいわよ」
「だめ、だめ。何羽いても、鳥の羽で枝を覆うなんてできないよ」
次は、砂場に向かって聞きました。
「冬の間、なにでおしゃれをしたらいいと思う?」
「おいらの砂をぶっかけりゃいいんでない?」
「絶対、やだ!!」
桜の木は、細い枝をしならせてキーキーとうなりました。
すずめと砂場は不思議そうに顔を見合わせました。
「なんであんなに怒っているんだろう?」
「冬以外はもっと穏やかなのにね」
そのとき、北風がひゅうっと通りました。低い声で優しく語りかけます。
「桜さん、あなたはもう美しいコートを被っていますよ」
すずめと砂場と桜の木は、どういうことかと目を丸くしました。
「今、わたしが被せたのです。透明に見える繊細な風の国のコートですよ。これであなたは、この公園で一番、いや世界で一番ステキな桜の木です!」
いや、見えなきゃ意味ないじゃんとすずめは心の中で言いました。しかし、桜の木は一人にやけ、満足そうに枝をふるわせています。砂場は退屈そうに砂をはいてあくびをしました。
北風が笑いながら飛び去ったあと、ふと桜の木は不思議そうにつぶやきました。
「ところで、これどうやって脱げばいいんだ?」
Fin
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
素敵な画像をお借りしました。
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