季節の移り変わりによる大気の熱量の変化を経験から鑑みてローストの設定を整える。
コーヒー焙煎の難しさは、季節の移り変わりにおける大気の熱量の変化だと思っている。
地球の地軸の傾きと公転のために起こる季節の移り変わりは、夏から冬へと気温は下がり、冬から夏へと気温が上昇してゆく。
その気温の変化は、そのまま大気の熱量の変化であるとボクは思っている。
そのため、焙煎の設定は季節が移り変わることで勝手に変化をしてゆく。
だから、焙煎の設定は年中一定で行うことは不可能なことである。
ボクが思うコーヒー焙煎の考え方としては、気温で判断するのではなく、大気の熱量の変化を感覚として判断し、それを焙煎の設定に落とし込む。
そして最終的な調整は、実際にローストされたコーヒーをカッピングして、その味わいからローストのバランスを微調整して整えることが目的となっている。
そのためにはロースト(焙煎)技術が必要となり、移りゆく変化に対応するために考察し、理論を考え、そして実際に取り組み検証し、その理論が正しいか否かを判断することで、設定の組み合わせから自身の思い描く味づくりのために、日々ローストと向き合い、カッピングからローストを見るというスキルを必要とする。
それが、コーヒーのローストという作業である。
今現在は、台風が去り夏の設定から秋の設定に移り変わっている。
夏から秋に、そして秋から冬に向けて、ローストの設定も日増しに変化させてゆかなければならないものなのだ。
ローストの設定は、とてもシンプルなローストの場合でも、その設定の数は5つほどにはなることだと思っている。
1. 投入温度(中点の温度)
2. 焙煎ダンパの設定
3. ゴールドポイント(水蒸気のコントロール)
4. デベロップメントタイム開始ポイント(排煙のコントロール)
5. 煎り止め
しかし、その設定数では思い描いたようにコントロール出来ない場合には、設定の数を増やすことで、思い描いた味づくりを施せるようにしていくことになる。
しかしながら、その設定1つごとが、いろんな味の変化における意味を含んでいるため、コーヒーローストにおいて思い描く味づくりをすることの難しさは、設定の数だけ、その設定が持つ状態の本質を理解していかなければならないため、かなりの時間を必要とするものであることを理解している。
そして、ローストの味づくりは「感覚」で調整をしなければならないため、ローストと「感覚」は、深く繋がっている。
ゆえに感覚の育成なしに、ローストの味づくりは成し遂げられない問題でもある。
ボクはそこに気づいてしまったために、ローストの味づくりのためのテイスティングを学んでいくことにしたのだ。
ボクはコーヒー焙煎(ロースト)は、とても面白い仕事だと思っている。
かなりの経験値を必要とし、それは1年を1シーズンと考え、何シーズンを繰り返し経験することで得られる情報であり、それは感覚で理解できるようになる情報でもあるため、感覚を育成させつつ挑まなくてはならない仕事であるためだ。
甘さや酸味のバランス、液体の量感と質感、ローストのザラつきやクリーンさ、それら全てがローストにおける設定の変化で登場しているため、コーヒーの味づくりとは、ローストの設定で味づくりがされている。
抽出とは、そのローストされたコーヒーのコントラスト(彩度)のコントロールに過ぎない。
ゆえにローストでバランスが整えられているコーヒー豆は、抽出で成分を抑制する必要性が無いものになるため、抽出がとてもシンプルになる。だから、ご家庭でも道具さえ揃っていれば抽出技術が無くても美味しいコーヒーが飲めるのだ。
それが、ローストにおける味づくりの目指すところであるのだとボクは思っている。
ボクがローストに携わっている期間は、今年で29シーズン目になるが、これまでの経験値がようやく設定の理解が思い描く味づくりと繋がるようになってきたことを実感している。
ローストの設定のひとつひとつは、とても大きな設定の意味を持っているが、その重大さを理解できるようになるまでに、29年もかかってしまった。
単純そうに見えるものほど、その意味の本質は奥が深いものである。
そして、その設定の重なり合いが意味する美味しさは、とても奥深いものになる。
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