次男の高校入試１ 《不登校実録》
私はこの期に及んで誤解していた。
私の中の次男像は
心優しくふわふわした“守るべきもの” だった。
我が子なので守るべきところは当然あるのだけれど
勝手に「弱いもの」と思い込んでいただけかもしれない。
そんな大事なことに気付いたこの数週間だった。
頑張れない自分
学校に行けなくなってからの次男は
あらゆることに弱気な発言をしていた。
友達や最近の兄を見て
「すごいね」「頑張ってるね」
と言う次男は、いつもどこか寂しそうだった。
まるで
「僕は頑張っていない」
「僕は何も得意なものはない」
と言っているようで。
自分の心を押し隠し、元気で明るい自分でいることが
次男にとっての「頑張る」の具現化だった彼。
だから今は
それができなくなった ＝ 頑張っていない
という感覚なのだろう。
長男もそうだが、たぶん根は生真面目。
自分の中の「頑張る」基準をクリアしていないと
自分を認められない。
うまくいかない自分も、辛い気持ちの自分も
全部ひっくるめて《自分》。
母はそんな次男のことが丸ごと大切なんだよ。
家の中が毎日戦争だった時期、
次男が必死に笑顔を作っているのに私は気付いていた。
あの時に「ありがとう。無理しなくていいんだよ」と
伝える余裕が私にあったなら
今の次男はここまで苦しまなくて済んだだろう。
本当はもっと前の段階で
しつこいぐらい次男に伝えればよかった。
この後悔は一生消えないと思う。
どこまでいってもタラレバだけど。
難しい日々
次男は通信制高校を受験することに決めた。
彼自身「ここに通いたい」と思えた学校があった。
（通信制高校の通学コース）
決めるまでは結構大変だった。
高校に行きたいと言う割に重い腰が上がらない。
私は次男に寄り添おうと腹を括っていた。
次男がいくら不機嫌になっても
前を向いてくれるのを待つ。
私が支えなければ！
程よい距離と程よい声掛けをしながら支えるんだ！
でも圧力や負担はかけたくない。
今もまだ傷が癒えておらず、自分を過小評価する次男を
これ以上傷つけたくない。
でも自分の足で立って欲しいという気持ちもある。
いろいろな気持ちが交錯しながら
できるだけ平静を装う。
私としては選択の難しい日々が続いていた。
弱いというのは思い違いだった
ある日、私が会社から帰宅すると
さんざん避けていた作文を次男が書いていた。
志望校の入試本番で恐らく出される課題の練習。
タイトルは
『高校生活で頑張りたいこと』
大人や他の受験生からすれば
なんだ簡単な課題だなぁと思うだろう。
しかしこれを書くためには
自分の心に向き合わなければならない。
さらに、あまり遠くない将来の自分の姿を
想像しなければならない。
中学を思うように過ごせなかった子供たちにとって
実はこういうテーマこそ、私達が想像するよりも
はるかに書くハードルは高いと思う。
それを昼間ひとりで書いていたのだ。
（内容は詳しく見せてはくれなかったけど）
次男はちょっと照れたように言った。
「ちょっと頑張ってみようと思って…」
翌日、過去問の国語を解いていた。
長男に付いてもらい久々の家庭内家庭教師。
次男自ら解こうと決めたこと、
長男も密かに驚き喜んでいるようだ。
次男の本当の気持ちが少しずつ見えてきた。
そうだった。
「やる」と決めて腹落ちした次男はとてつもなく強い。
なんでそんな大事なことを今まで忘れていたんだろう。
兄が不登校なのにひとりで登校班で毎日登校した子
大嵐の家の中で必死に明るい自分を保ち続けた子
体調が悪くても「大丈夫！」といつも言い続けた子
母を励まし、笑わせ続けてくれた子
「勉強が嫌いだ！」と言い続けていた次男。
でもプログラミングと英会話は続けているのだ。
今思えば「勉強が嫌」というより
教室で勉強を強制される閉鎖空間がしんどかっただけ。
（まぁ、社会や数学は嫌いみたいだけど(笑)）
次男は全然弱い子じゃなかった。
むしろ意志は驚くほど強い。
たださまざまな条件、環境が重なって
発動していなかっただけなのだ。
次男は勇気を振り絞ってスイッチを切り替えた。
自らの手で。
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