読書感想文・備即書忘録026:『 無理ゲー社会 』 著:橘 玲
読書感想文・備即書忘録026
『 無理ゲー社会 』
著:橘 玲
概要
この本は、現代社会の過酷な競争構造を「無理ゲー」という斬新な概念で分析した刺激的な著作物です。
本書の最大の特徴は、リベラルで自由な社会が到来予期せぬ結果として、人生攻略困難な「無理ゲー」と化している現状を鋭く指摘している点です。 」
「自由な権利」という一見的な価値観が、実は多くの人々を無視した理想的な競争に巻き込んだ結果となっていると論じています。
特に印象的なのは、知能の問題が経済的弱さや性愛の問題に直結する「メリットクラシー社会」の分析です。
本書は、孤立社会批判にとどまらず、この「無理ゲー社会」を生き抜くための具体的な戦略も提案しています。
例えば、自分の能力に適したニッチな分野で活動することの重要性や「資本主義」を夢を実現するシステムとして活用する手法などが示されています。
著者の分析は、時には冷徹で残酷に感じられるかもしれません。
『無理ゲー社会』の意義は、現代社会の競争構造を新たな視点から捉え直し、その中で生きる個人の戦略を示唆している点にあります。
総じて、本書は現代社会を生きる全ての人々にとって、新たな視点と深い洞察を提供する貴重な一冊だと言えるでしょう。
橘玲氏の鋭い分析と論理的な思考は、読者に社会の本質を、深く理解させ、より戦略的な人生設計をイメージしやすく促してくれています。
この本は、現代社会の本質を鋭く突いた内容であり、社会と人生について深く考えたい全ての人々にとって必読の書と言えるのかもしれません。
感想
著者は、私たちが抱いている「自由な社会の展望」を指摘しています。
かつてないほど自由になった現代社会だからこそ、逆説的に生きづらさが増しているのです。
自由な選択肢が増えることで、逆に個人の選択責任も増大します。
就職や結婚など、人生の重要な場面で「自分らしい」選択を求められることが、いちいちプレッシャーとなっているのです
マネージャーは、こういった現代社会の抱える状況を把握し部下や社員のストレス管理に注意を払う必要があります。
自由な社会では、能力主義(メリトクラシー)が強調されます。
しかし、能力に関しては、努力だけでは片づけられない問題があることを著者は指摘しています。
これは、公平な評価システムの構築に苦心する人事の担当者やマネージャーにとって重要な示唆となります。
著者は現代社会を「無理ゲー」と表現しています。
これは、ゲームのように設定された目標が、多くの人にとって達成不可能であることを示唆しています。
かつての日本では、お見合い結婚が一般的でしたが、現代では自由に結婚相手を選べるようになりました。
2020年の国勢調査では、50歳時点の男性の未婚率が28.3%に達しています。
この数値は、現代社会の「無理ゲー」の側面を示しています。
著者は「自分らしく生きる」という価値観が1960年代のアメリカで生まれた新しいイデオロギーであると指摘しています。
この価値観は現代社会に深く根付いており、逆に、それが生きづらさを抱いているという状況を生んでいます。
そういう「評価されにくい大人」が増えてきた社会に、本書は将来の社会生活を考える上で重要な視点を提供しています。
1)自己理解の重要性:自分の強みと弱みを客観的に理解することの大切さ
2)多様な選択肢の存在:「正解」が1つではない社会で、自分なりの道を見つける必要性
3)社会の変化への適応:急速に変化する社会に柔軟に対応する能力の重要性
4)批判的思考の育成:社会の仕組みや価値観を批判的に考察する力の必要性
「自分らしく生きる」という価値観が、むしろ仕事中心で、かつ、自己中心的な生き方を助長している可能性もあります。
真の意味でワークライフバランスを追求することが重要になってくるわけです。
ただし、個人のチカラだけでは、どうしようもない格差があることを認識し、多様な価値観や能力を尊重する努力をする組織文化の構築が求められます。
知能や学歴だけでなく、創造性やコミュニケーション能力など、多面的な評価システムの構築が必要です。
急速に変化する社会に適応するために、常に新しい知識やスキルを獲得する姿勢が重要です。
この本は、現代社会の複雑さと矛盾を鋭く指摘しています。
社会人にとっては組織運営や人材育成の新たな視点を提供し、若い世代にとって将来の社会生活に向けた重要な思考のポイントを提示してくれています。
自由な社会であるからこそ、無理ゲーになりやすい結果を踏まえ、その中で自分らしい生き方を見つけることが重要です。
同時に、社会の構造的な問題に目を向け、より公正で持続可能な社会システムの構築を目指す必要があります。
また、従業員のメンタルヘルスケアや継続的な学習支援など「無理ゲー社会」を生き抜くためのサポート体制の構築が重要となるでしょう。
この本が問題提起しているポイントは、私たち一人一人が検討し、解決策を検討していく必要があるポイントばかりです。
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