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「正しい呼吸、できてますか?」 ナーディ保(ナーディー・たもつ) --歓喜人008--

私たちの一生は、呼吸に始まり呼吸に終わる。
生まれた瞬間から呼吸は始まり、寿命がくれば息を引き取り呼吸を終える。

私たち人間は1日に約2万回も呼吸をしている。それほど当たり前に行っているから普段意識することが少ないが、「呼吸」は単なる生命維持だけでなく心身の健康のためにも欠かせないツールであることをご存知だろうか。

例えばヨガはウェルビーイングの観点から今や世界中で人気だが、そんなヨガとも切っても切りはなせないのが「呼吸」だ。ヨガでは、呼吸と身体の動きを連動させて行うこと(アーサナ)で体内のエネルギーを巡らせ、心身を整えていく。そして次の段階「呼吸法(プラーナーヤーマ)」では、呼吸によって体内のエネルギーをコントロールし、心身をより良い状態に整える。

ここ歓喜町でも代々、親から子へ、子から孫へ「呼吸」の大切さについて教え伝えられてきた歴史がある。しかし近年では少子化や核家族の増加、ライフスタイルの変化によって、すべての住人が呼吸についての正しい認識を持てなくなってきたのが現状だ。

そんな中、町の一角にとある店がオープンした。
「呼吸専門店」だ。
お店に足を運んでみると早速オーナーに会うことができた。

店の周りを掃除中の呼吸専門店店主 ナーディ保(たもつ)
鼻をイメージした三角錐の形が特徴的だ

ーー呼吸専門店というのは、一体どのようなお店なんですか?

「一言で言えば、呼吸の呼吸による呼吸のための専門店です。ここでは、私たちが生きている間ずっと付き合い続けていく呼吸の大切さについてお伝えしたり、正しい呼吸法をレクチャーしたり、呼吸による疾患がある方への応急処置も行っています。」

ーーどんな方が来られますか?

「最近多いのは、呼吸が浅い方ですね。大体はストレスの影響なので、自律神経を整える呼吸法を実践してもらいます。他には、食べたうどんが鼻から出てくる疾患の方もいらっしゃいますね。」

ーーうどんですか?呼吸とは関係ないような気がするんですが。

「そうとも言い切れません。鼻からスルッと出てくれれば良いんですが、うどんが詰まったままでは呼吸の道を塞いでしまいますから。今日この後いらっしゃる、呼吸60分スーハーコースを予約の方も、初めはうどんが詰まって来店されたんですよ。」

ちょうど、その予約のお客さんが来たようだ。

うどん疾患がきっかけで呼吸専門店へ通うHさん

Hさんの許可を経て、呼吸60分スーハーコースに同席させていただいた。
三角錐型が特徴的な「呼吸専門店」の店内は真っ白で静かな空間、その真ん中に一本の柱(パイプ)が通っているだけの極めてシンプルなデザインだ。

ナーディ「その後、お変わりないですか?」

Hさん「はい、以前はこんなに長いうどんが詰まっていましたが、だいぶ取れてきました。」

事前カウンセリング中のHさん。呼吸専門店に通い、症状も落ち着いてきたようだ

ナーディ「まだ奥に少し残ってますが、うん、まあ問題ないでしょう。このまま経過観察しましょう。今日は基本の呼吸法ナーディショーダナについて一緒に練習していきましょう。」

ナーディ「まず両坐骨に均等に体重を乗せ、背筋は真っ直ぐに、目線は鼻先を見ます。片鼻づつ呼吸をして、左右の鼻の通りのバランスを整えていきますので、手はこのように人差し指と中指を折り曲げた形(ムドラー)を作ってください。」

Hさん「こうですか?」

ナーディ「うーん、全然違いますね、こうです」

Hさん「あ、こうですね!」

ナーディ「そうじゃなくて、こう!」

店主とHさんとの掛け合いが何度か続いたのち、ようやくHさんの手が正しい形に落ち着いた。

ナーディ「それでは一度息を全て吐き切ったら、親指で右の小鼻を押さえ、左の鼻から吸います。次に薬指・小指で左の小鼻を押さえ、右の鼻から吐き出す。そのまま右の鼻から吸い、右の小鼻を閉じて左から吐きます。」

スムーズな呼吸のイメージ図

「そしてこのパイプのように、体の中にも一本のまっすぐな呼吸の通り道があるイメージで呼吸しましょう。吸う息は吐く息のために、吐く息は次の吸う息のためにあります。片鼻づつ呼吸することによって、陰と陽2つのエネルギーのバランスが整い、循環し、心身の安定につながります。」

お店のシンボル、呼吸の通り道ナーディを表したパイプ

右から左、左から右への片鼻呼吸を数回行った後、ナーディのガイドに合わせて普段の呼吸に戻す。すると、いつの間にか頭のざわつきが消えていることに気づいた。さらに普段より随分深く呼吸ができている。

ナーディ「数回でも良いので、毎日続けるとより効果を実感できるでしょう。」

Hさん「あー本当にニュートラルになりました。私また次回も60分スーハーコースで予約をお願いしますね。」

ナーディ「お待ちしてます。お大事にどうぞ」

スッキリしたHさんを見送った後「周りに呼吸でお困りの方がいらっしゃったら、ぜひご紹介ください。」と最後にナーディからショップカードを受け取った。

あなたは正しい呼吸、できていますか?

【プラーナーヤーマ・調気法 prāṇāyāma 】

プラーナーヤーマはサンスクリット語で、調気法・呼吸法を意味する。

プラーナは、気、生命エネルギーを意味し、アーヤーマは、規則、コントロール、幅を意味する。

すなわち、プラーナーヤーマとはプラーナの調整と言える。

プラーナは、大きく分割すると5種類あり

①プラーナ:吸収
②アパーナ:排出
③サマーナ:消化
④ヴャーナ:循環
⑤ウダーナ:逆流

この5つを総称してプラーナと言う。

机の脚を、どれか一本引っ張って動かせば、他の三本の脚もついてくるように、プラーナ:呼吸をコントロールすることで、他のプラーナも上昇、向上し、肉体・精神の健康に大きく貢献する。

現代では、呼吸が浅い人が多いと言われる。精神的にも肉体的にもその原因は多岐にわたる。

PCやスマホの普及により、身体が前に丸まるような姿勢になり、たくさんの情報に頭は激しく動き回り、心身ともに休む時間が減り、呼吸は自然と浅い時間が増えてくる。

呼吸が浅くなればなるほど、感情の起伏を抑えられなくなり、感情に自分が支配されてしまう。

日常でも不安や不満が強くなれば、呼吸が浅くなり、願望に自分が支配されてしまう。

呼吸をコントロールすることで、精神的・生理的に健康になることは疑いはない。

呼吸は外の世界と自分をつなぐ架け橋であり、心と肉体をつなぐ架け橋でもある。

呼吸をコントロールすることは、自分のコントロールであり、人生のコントロールである。


撮影協力:新潟市
特別出演:渡辺ひとみ(Hさん)
新潟市でヨガや姿勢改善のクラスを開催しているひとみさんの詳細やクラスについてはこちら!


ヨガが根付くちょっと変わった町の物語歓喜町

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