第6夜 地下街でロゼワインを 西堀ローサと「ベルサイユのばら」
地下街をぶらつくのが好きだ。地上の道路網と異なる方角に通路が伸び、どんなに照明が明るくても、空ではない。異界へとつながる回路があるような。
新潟市中央区には「西堀ローサ」という地下街がある。1976年にオープンした。ローサはバラ。天井にはバラを模した瀟洒(しょうしゃ)な照明器具がセットされ、中央の広場にある柱はフィレンツェで制作したというバラと美女のタイル画で飾られている。
開業当時はファッション関係の店舗が並び、流行の服に身を包んだOLや女子高校生でにぎわっていた。新潟で一番、華やかな色彩があふれる場所だったかもしれない。いまは人の流れが変わり、中高年客が中心の静かな空間になってしまったけれど。
70年代は「バラ」が熱いまなざしを浴びた時代だった。池田理代子さんの少女漫画「ベルサイユのばら」、通称「ベルばら」の大ブームである。集英社の少女誌「週刊マーガレット」で連載が始まったのが72年。74年には宝塚歌劇団により舞台化されて大ヒットし、社会現象になった。
貴族の家に生まれた「男装の麗人」オスカルと、彼女に思いを寄せる幼なじみのアンドレ。フランス革命を舞台にした豪華絢爛(けんらん)な物語に、60年生まれの私は夢中になった。漫画連載は、クラスの女子ほとんどが読んでいたと思う。アンドレが、身分違いのオスカルに対し「契りたい」との思いを抱く回では、「キャー!」という声が教室に飛び交った。宝塚公演が地方巡業で新潟県にやって来た時は、「一生のお願い」と親に泣きついて、見に行った。これが宝塚初体験。「愛 それはあーまく…♪」。劇中歌のさわりは、今でも歌えます。
当時は、オスカルさまの美しさにばかり目を奪われていたけれど、いま読み返すと、結構心に刺さるものがある。男子の跡継ぎがいないため、「男」として育てられるのだが、成人後に求められたのは、結婚して家を存続させることだった。生き方に苦しみ、ブランデーを飲み続けて、アルコール依存症気味になる場面もある。
オスカルは貴族と貧しい市民の格差について考え続け、家を捨てて革命に参加することを決意する。夫に選んだのは、影のように支えてくれたアンドレだった。当時主流だったかわいらしいヒロイン像とは、一線を画していたと思う。
西堀ローサを歩いていたら、ロゼワインの昼飲みができるという店「食堂33」を見つけた。ロゼは甘いイメージがあるが、実は辛口が多いらしい。バラ色のグラスワインをなめながら、店名の由来を聞いた。33という数字には「変身、変化」という意味があるそうだ。ベルばらに熱中した少女たち、そして西堀ローサを闊歩(かっぽ)していた華やかな女性たちはその後、どんな人生を送ったのだろう。
(写真は新潟市中央区の西堀ローサ。♥好きを押してくださると、猫おかみがお礼を言います。下の記事では、「バラの歌人」大谷雅彦さんの新作短歌も楽しめます)
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