はちみつの王様、幻に!?れんげ蜂蜜大ピンチ!
こんにちは、京都の蜂蜜屋、金市商店広報のはにまるです。
「定番のはちみつ」と聞くと、どのはちみつの名前を一番に思い浮かべますか。
はちみつはその採れる蜜源(花)によって様々な種類がありますが、ぱっと思い浮かぶはちみつと言えば、あかしあ、れんげ、百花蜜、といった名前が多いのではないでしょうか。
中でもれんげ蜂蜜は、「はちみつの王様」なんて呼ばれるほどに一時は日本のはちみつの代表格でした。ですが、実は今「幻のはちみつ」とも言われ、大ピンチになっているのです。
■思い出のれんげ畑
その昔。
私は周辺を田んぼに囲まれた地域に住んでいたので、毎年春になるとかわいいピンク色のれんげがまるで絨毯のように田んぼを覆い尽くし、ミツバチを始めいろんな虫たちが飛んでいる姿を目にしました。
その景色を眺めながらあぜ道を走りまわり、れんげの花冠を造ったり、「はちみつ~」と言って花を吸ってみたり。
そして、田植えが始まる前にはトラクターがやってきて、れんげは土の中に混ぜ込まれていきました。せっかく綺麗に咲いていたのにな、もっと田んぼから離れて咲けばよかったのに…なんて、耕された土を見ながら子供心にしんみりした記憶があります。
子供の頃は、たんぽぽやぺんぺん草のように勝手に生えてくるものだと思っていたれんげ。
種をまいて植えていたものだと知ったのは、だいぶ後になってからでした。
■田んぼになぜれんげ
どうしてれんげは、田んぼにたくさん咲いていたのでしょうか。
れんげ(レンゲソウ/ゲンゲ)はかつて稲作の肥料として、日本各地で活躍していました。
れんげには土を肥やす効果があるため、農家さんは毎年秋になると種をまき、翌春に花が咲くと、田植え前にこれを土の中に混ぜ込むことで腐葉土のように肥料として使用していました。
こうしたれんげ畑は、ミツバチたちの春の貴重な蜜源となっていました。稲作の盛んな日本でれんげ蜂蜜がとてもポピュラーなものだったのは、想像に難くないことです。
■れんげの大ピンチ
おいしいれんげ蜂蜜も採れて、肥料にもなるんだかられんげってすごい!!…はずなのですが、れんげ蜂蜜は今大ピンチなのです。
近年は化学肥料が台頭し、れんげ農法は激減。
さらに、天敵のタコゾウムシの存在も問題に。
タコゾウムシは1982年頃日本に入ってきた外来生物で、れんげの花が咲くころに大発生すると、花ごとれんげを食べてしまいます。せっかく咲いた花も、2、3日で壊滅なんてことも。
自然に優しいはずのれんげ農法ですが、種をまく手間や費用、こうした害虫被害などで続けることが難しくなってきているのです。
もちろん、れんげ農法を続けようと頑張っている農家さんもたくさんいます。養蜂家さんもミツバチたちの蜜源のために、種を植えるなど努力をしていますが、作付け面積は減る一方です。
れんげの蜜源植物として把握されている面積は、ここ10年ほどで3分の1以下となってしまっているのが現状です。
そんな逆境が続いているれんげ蜂蜜。
今ではすっかり貴重な存在となってしまい、「幻のはちみつ」とも呼ばれるようになってしまいました。
弊社社長でもあるハニーハンター市川拓三郎も、まさに今はちみつの仕入れに飛び回ってはいるのですが、残念なことに今年はタコゾウムシと悪天候などが直撃し、希少なれんげ蜂蜜がさらに不作気味だそうです。
■幻のれんげ蜂蜜
私がかつて遊んだ場所は、今はほとんどが住宅や駐車場などに変わりました。
わずかに残る田んぼにも、れんげの姿はありません。
世の中とともに街の景色も変わっていくものですが、少し視点を変えるとすぐそばにあった自然の営みがひっそりと姿を消していっているのかもしれません。
様々な人たちの努力に支えられ、今はまだれんげ蜂蜜を食べることができています。ですが、いつか本当に幻となってしまうかもしれない不安もたくさんあります。
れんげ蜂蜜を見かけたら、幻や貴重と言われる裏側にこうしたお話があることも少し思い出していただけましたら幸いです。
ちなみに、れんげ蜂蜜はとてもすっきりとした癖のない食べやすい味です。その爽やかな香りは、れんげ畑で遊んだ思い出があればちょっぴり懐かしい気持ちにしてくれるかも。
もちろん採れる地域や場所によって風味は変わってきますが、トーストから料理まで、様々な使い方が可能で、どなたでも食べやすい万能タイプです。
ぜひ出会う機会があれば、れんげ蜂蜜の素敵な個性を楽しんでみてくださいね。
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