【徒然草 授業実践】〜単元を貫く問いの失敗談〜
【はじめに】
今回は、「徒然草」の第92段「ある人、弓射ることを習ふに」の授業実践について書きたいと思います😊
前回の記事で、教材の中だけで完結しない問いを設定することについて触れました。今回は、教材の枠組みを超えた問いの設定を意識するがあまり、失態を犯してしまった私の体験談をみなさんにお伝えします。
教材の中だけで完結しない問い
前回の記事で、
学校とは、あくまで生徒が社会に出たときに1人前の大人として生活できるよう、生徒を育てる場です。
つまり、授業を通して学んだ知識やスキルを、日常生活や社会生活でどのように生かしていくかという観点が重要です。
言い換えれば、社会に出てから役に立つ考え方やスキルを授業を通して生徒に身につけさせる必要があるわけです
と述べました。
このことから、『羅生問』を例にあげて、「下人の心情は、どのように変化しているだろうか?」というような、教材の中から読み取ったことをそのまま書けば答えられるような問いにするのではなく、「生きるための悪は許されるだろうか?」というように、教材を通して学んだことをもとに、自分で思考し、自分の言葉で答える問いが理想だという結論に至りました。
今回の『徒然草』の授業実践では、このことを念頭に置いて授業をデザインしています。
「ある人、弓射ることを習ふに」の教材としての特徴
今回取り上げる『徒然草』第92段「ある人、弓射ることを習ふに」(以下、92段)は、簡単に要約すると、「初心者は、弓を射るときに、矢を二本持ってはならない。2本目の矢を頼りに1本目をおろそかにしてしまう心が無意識のうちに生じるからだ。こうしたなまけおこたる心を『懈怠(けだい)の心』と呼ぶ。」というお話です。
『徒然草』は鎌倉時代に成立した随筆ですが、現代にも通じる教訓が多く記されています。
ですから、この教訓を、自分の生活に置き換えてとらえさせることができれば、生徒は教材と自らの生活を関連づけて考えることができるはずです。
ここで、「懈怠の心とはどのような心だろうか?」といった問いや、「本文の内容を要約してみよう」といった問いを提示してしまうと、生徒は教科書から読み取った内容をそのまま書けば解けてしまうため、これこそ教材の中だけで完結した問いになってしまいます。
単元を貫く問いを考えていく上では、前述のとおり、授業を通して学んだ知識やスキルを、日常生活や社会生活でどのように生かしていくかという観点が重要です。
そのため、教材に出てくる言葉をそのまま使えば解けるような問いにするのではなく、教材を通して学んだことをもとに、自分で思考し、自分の言葉で答える問いが理想です。
では、今回の『徒然草』92段ではどのような問いを設定するのがよいのでしょうか。
私が考えた問いとその落とし穴
そこで、今回私が考えた問いがこれです。
「懈怠の心」を有している我々人間は、どのように行動すべきだろうか?
生徒たちは、92段を通じて「懈怠の心」について学びました。この「懈怠の心」は、現代の我々も同じように持っています。
そこで、生徒たちに「懈怠の心が自分の中にあると自覚したとき、どのように行動すべきか」ということを考えさせれば、教材の言葉ではなく、自分の考えをもとに、自分の言葉で答えさせることができると考えたのです。
しかし、これが落とし穴でした。
今回の授業を同じ教科の先輩の先生に見てもらうようお願いし、授業を見学してもらいました。そこで、その先生に言われた一言が、、、
この問い、はっきり言って教材を読んでなくても考えられるよね。
です。
いや〜、この言葉を言われたときはホントにハッとしました。
私は、教材の中だけで完結しないことばかり意識するがあまり、教材を学んでいなくても考えることのできる問いを設定してしまっていたのです。
どういうことかというと、今回の問いでは、「懈怠の心」が「なまけおこたる心」ということさえ知ってさえいれば、教材を読んでいなくても考えることのできる問いになってしまっていたのです。
これでは教材なんか必要ありません。教材を用意せず、1時間目からこの問いを投げても成立してしまうでしょう。
教材の中だけで完結しない、とは言っても、教材が必要ない問いになってしまっては本末転倒です。「教材を通して学んだ知識や、登場人物の考えをもとに」自分で思考する問いでなければいけないでしょう。
そこで、先輩の先生からお知恵をお借りし、先ほどの反省を踏まえて新たな問いを考えてみました。
たとえば、「兼好法師になりきって、懈怠の心を持つ人間が今後どのように行動すべきか当時の人々に向けてアドバイスしてみよう」なんてどうでしょうか。
この場合、兼好法師がどのような考えなのか、教材を通して考えなければ、この問いには答えられないでしょう。
思いつきで考えた程度の問いなので、より深く考えていけば、もっと良い問いが生まれるに違いありません。
この記事を読まれている方の中で、もっと良い問いを思いつかれた方は、ぜひコメントでお聞かせください🙇♂️
【おわりに】
今回は、教材の中だけで完結しない問いを意識するがあまり、教材を読んでいなくでも答えられる問いを設定してしまった私の失敗談について書きました😓
しかし、今回の経験で、良い単元を貫く問いの設定方法により深い理解が得られたと思います。
自分と同じように問いを設定している先生方がいらっしゃれば、ぜひ気をつけてみてください(いや、こんな初歩的なミスでつまづいてるの僕だけでしょ。)
この反省を生かしていくつかの授業を実践しているのですが、3連続で授業について書いたので、そろそろ別のトピックで記事を書こうかなと考えています。
部活動か、1年目の苦労か、はたまた、、、
最近は、担任からの連絡事項や教科係からの連絡事項、課題一覧などをすべて一つのサイトにまとめたクラス用Webサイト(Googleサイト)も運用しているので、そうした実践についても書いていければと考えています。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました😊
ぜひ次回の記事もお読みください🙇♂️
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