大手企業をクライアントにしたいBtoB企業が行うべきマーケティングの考察

結論から言ってしまうと、ABM(アカウントベースドマーケティング)を中心とした話になるのですが、実際の私の業務(大手企業を中心としたマーケティング支援会社のマーケティング活動)において、取り組んでいきたいと考えている内容をベースにまとめていきます。

今回の参考図書は以下です。

THE MODEL(ザ・モデル)の隆盛

2019年1月にマルケトの福田さんが「ザ・モデル」の書籍を出版すると同時に、BtoBマーケティング界隈では「ザ・モデル」をどのように実現して成果を出していくべきかの議論が盛り上がっていました。

しかし、ザ・モデルは万能はでありません。
BtoBマーケティングにおけるあくまで「型」の一種ではありますが、ビジネスモデルやターゲットによって必ずしも最適解というわけではありません。

こちらについては以下のnoteが非常に参考になりました。(佐藤さんありがとうございます!)

エンタープライズセールスについて書かれた記事ではありますが、マーケティングにおいても大きな示唆を与えてくれます。

THE MODEL型セールスは「絞り込んでいく」手法
エンタープライズセールスは「拡大させていく」手法

佐藤さんのnote内でこのような記載があるとおり、基本的にBtoBマーケティングでは広く網を張って絞り込んでいく手法が取られます。

しかし、今回の記事で書きたい「大企業をクライアントにしたい企業」にはこの絞り込み手法はあまり向いていないと感じました。(弊社がまさにそうなのですが、ザ・モデルを追求すべきではないという結論に至っています)

なぜかというと、私たちのような会社がクライアントにしたい大企業は国内の全企業のうち0.3%程度しか存在しないからです。網を張ってかかってくれる確率が圧倒的に低い。網を張るのは効率が悪いのです。

そこでやるべきだと考えているのが、One to Oneマーケティングの考え方が元となっているABM(アカウントベースドマーケティング)の実行です。

ABMとは?

書籍では以下のとおり定義されています。

全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントからの売上最大化を目指す戦略的マーケティング
庭山一郎『究極のBtoBマーケティング ABM』日経BP社,2016年,P.15

この「定義されたターゲットアカウント」というのが肝で、ターゲットアカウントはセールスと一緒に定義する必要があります。

すごい噛み砕いて説明すると、営業が迷わず「行きたい!」と答える企業をリスト化し、そこをピンポイントで狙うマーケティングを実行しようという考え方です。

エンタープライズセールス+ABMを実現させる

このnoteのタイトルになっている「大企業をクライアントにしたいBtoB企業」の最適解はこれじゃないか、というのが現時点での私の答えです。

・マーケティングをする対象はセールスと一緒に「狙いを定める」
・定めた対象との接点創出のための施策を実行する
・一度取引が始まったならエンタープライズセールスの考えかたに基づきマーケティングとセールスが協同して「拡大させていく」=LTVを最大化させる

エンタープライズは接点ができてもすぐ案件にならない

昨年度からマーケティング体制の地盤固めをしつつ、いろんな施策を試したのですが、この壁に正面衝突しました。

大企業になればなるほどチャンス(がある相手とタイミング)は限られ、検討時間は長くなる傾向にあります。

一度セミナーを開催しても、その後の商談フェーズで案件化につながる確率は大企業になるほど顕著に低くなることが弊社でも分かっています。

つまり、接点を作った後はいかに関係値を紡ぎ続けるかどうかが重要になります。その関係値を作るためには、セールスによる地上戦と、マーケによる空中戦の合せ技で「情報提供を通じて役に立ち続けること」が必要だと考えています。特に、見込み客ごとに最適化された情報であればあるほどよいはずです。

何かあったときの「第一想起」になれるか

そうすることで何が得られるか、というのは見込客の中における「第一想起」のポジションです。つまり、「いつか◯◯のような課題を解決する必要が発生したら、(会社名)さんに聞いてみよう」という存在になることが非常に重要です。

こちらはセールスリクエストの原さんの記事にてわかりやすく書かれていました。(原さんありがとうございます!)

データ!データ!データ!

ここまで口で言うのは簡単なのですが、実行するためにはデータ基盤の整備が不可欠です。ここがとてもむずかしく、大変です。今、私の次の課題はここにあると思っています。(実際にシステム的に作り上げることから、オペレーションの構築、社内浸透に至るまで)

書籍から引用すると、以下のようなステップが必要になります。

①ファイルの統合
②個人データの名寄せ
③企業データの名寄せ
④企業と個人の紐付け
⑤営業対象外・競合のフラグ処理(論理削除)
⑥企業の属性情報付与
⑦製品ごとのターゲットアカウントのフラグ
⑧法令要件の整備
庭山一郎『究極のBtoBマーケティング ABM』日経BP社,2016年,P.198

究極の状態は、◯◯社の◯◯部にいる◯◯さんについて、マーケティングの段階での接点、セールスの履歴、取引の情報がすべて集約されて管理されている状態×リード全員分と言えるでしょう。

そして、自社が狙いたい企業群が100社あったとして、その100社に所属されているリードと取引先情報がすぐに引き出せるという状態。

これがマジで難しい。

リードジェネレーションのステップにおいて、セミナーの参加登録や資料ダウンロードではユーザー自身が登録した情報が元になります。

セールスが商談して名刺を受領して初めて、正しい個人情報を得ることができますが、マーケティング段階で「どのリードだったのか」を突き合わせることが非常に難しいです。

そして、マーケティングフェーズではメールアドレス単位でリードを管理していますが、セールス以降のフェーズでは会社名単位でリスト化されているケースが多いのではないかと思います。つまり、取引先企業の担当者レベルまでしっかり管理されていないと、マーケティング部が持つ情報と紐付けることができません。

このデータ基盤を、どのシステムを用いた上で、どういったオペレーションで構築するのかをコミットできるかが腕の見せどころになりそうです。
(今年の私の目標でもあります)

今取り組もうとしているのは、マーケティングからセールス、そして販売後のカスタマーサクセスの一連の中で、それぞれを管理しているシステムで共通のキーをもたせることです。MAの中で管理しているリードと、SFAの中で登録されている商談相手を、共通キーをもたせて紐付けようと考えています。(しかし、SFAの浸透も本当に大変。)

まとめ

以上、最後のデータの章ではあまり具体的な解決策を示すことはできませんでしたが(まだ模索中でして)、大企業をクライアントにしたい企業がとるべきマーケティングの方向性は以下のとおりだと考察します。

・ターゲットをセールスと協働して定義づける
・そのターゲットとの接点づくりをどのようにするかを中心にしてマーケティング施策を考える
・一度できた接点を「拡大させていく」考え方でLTVを向上させる
・一度の接点ですぐに案件化しないので、継続的な情報提供で第一想起の獲得を狙う
・上記実現のためには、顧客情報の管理基盤をデザインすることが最重要(会社全体でコミットする必要があると思います)

ここまでお読みいただきありがとうございました!


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