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【歌舞伎・文楽】双蝶々曲輪日記(感想後編、八段目「引窓」を中心に)

 前回、『双蝶々曲輪日記』の全体像について記載したのですが、今回は後編として、八段目「引窓」の感想を中心に書いてみたいと思います。

 同日に投稿した前回の記事(↓)を先に読んで頂けると分かりやすいです。

■今年の鑑賞について

 今年私は、『双蝶々曲輪日記』を2回観ました。
 1回目は7月の歌舞伎鑑賞教室、2回目は11月の文楽公演です。それぞれの内容は以下のとおりでした。共通して上演された場面は、八段目の「引窓」です。「引窓」が上演回数も多く、有名な場面であることが、ここからも見受けられます。

(1)令和5年7月の歌舞伎鑑賞教室
・演目:八幡の里引窓の場(引窓)
・出演:中村 芝翫、市川 高麗蔵、中村 松江、坂東 彦三郎、中村 梅花、中村 錦之助

(2)令和5年11月の文楽公演
・演目:堀江相撲場の段、難波裏喧嘩の段、八幡里引窓の段

■八段目・引窓について

(1)あらすじ(導入部)

与五郎という豪商の若旦那に恩のある相撲取りの濡髪ぬれがみ長五郎は、与五郎を苦しめる悪人の侍たちを殺してしまいます。逃げ落ちる長五郎が、実母お幸の住む八幡の里(現在の京都府八幡市)を訪ねます。淀川のほとり、八幡の里は石清水八幡宮にも近く、八月十五日は放生会ほうじょうえという行事で賑わいます。その前夜の物語です。

「歌舞伎鑑賞教室」の配布物より抜粋。多少加工しました。

(2)みどころ

引窓とは、室内に光を採り入れるために、屋根の一部に窓を切り、引き戸のように板をスライドさせることで開閉ができるようにしたものです。板には縄がついていて、縄を緩めると窓が開き、引くと閉まるようになっています。

「歌舞伎鑑賞教室」の配布物より抜粋。

 (罪を犯した)長五郎を捕まえるために追ってきたのは、南与兵衛(後に南方十次兵衛)です。与兵衛は、お幸の義理の息子にあたります(一方、長五郎はお幸の実の息子のため、与兵衛と長五郎は義理の兄弟になります)。
 与兵衛は夜の間の見回り役を引き受けていますが、引窓の開閉により光の入る時間を昼に見立てるなど、「引窓」が効果的に使われます。果たして、与兵衛と長五郎はどのような結論を下すのか。
 そして、参考にした本の中に登場人物についてまとめられた記載(みどころ)がありましたので、こちらも引用しておきます。

後妻という立場で生みの子を持つ姑のお幸、廓の女郎で身請けされた嫁のお早、義理ゆえの人殺しの罪で追われる角力取り濡髪、かつて放埓は暮らしをしながらも、いまは家を継いで武士の身分を得た与兵衛という、それぞれに過去を持った家族を登場させ、義理の中で生きる町人の苦悩を描いている。

『現代語訳 歌舞伎名作集』(小笠原 恭子訳)507頁

(3)感想

 前回の記事に書いたのですが、角力取りの江戸時代における位置づけなどが、引っかかってしまい、初めはなかなかすっきりしませんでした。
 図書館で借りた解説本を読みながら、理解が深まってきたところです。古い作品については、当時の時代背景や、見方・捉え方を学ぶことも必要なのだな、と改めて感じました。
 そして、放生会の前夜であることや、引窓から漏れる光など、「文学的な作品」であることも納得しつつあります。次回、鑑賞する機会がありましたら、季節感や時間の流れを感じつつ、ゆっくり楽しんでみたいです。

■余談:つっころばし

 今回、本やインターネットで結構調べたのですが、『双蝶々曲輪日記』と『夏祭浪花鑑』を検索していて、ひっかかった用語に「つっころばし」という言葉がありましたので、メモを残しておきたいと思います。

 一部分ですが抜粋すると、「(「つっころばし」とは、)単なる優男にとどまらずなよなよとして滑稽味にあふれ、まさに究極の若旦那」とありました。
 「侠客物」とセットなのでしょうか。若旦那に振り回される侠客(や角力取り)も大変ですね。これが、作者の設定の問題なのか、侠客がボディガードの役割を果たすことが多かったのか、ここは文献などを読んで、いつか調べてみたいと思います。

 最後になりました、今回の写真は、引窓のイメージから、skyflowers3さん(kyon。さん)の画像を使用させて頂きました。ありがとうございました。
 本日は、以上です。

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