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【歌舞伎鑑賞教室】封印切

 2024年6月1日(土)、6月の歌舞伎鑑賞教室に参加して来ました。関東では毎年6月・7月に、高校生や初心者向け「歌舞伎鑑賞教室」が開かれています。今回は、その6月バージョンです。

■はじめに

 演目は『恋飛脚大和往来』「封印切」です。
 同作は、近松門左衛門の浄瑠璃『冥途の飛脚』を原作とした改作(の延長上にある)作品です。詳しくは書きませんが、配布プログラムによると、色々な作者に数回改作されています。

 あらすじを2点書くと、①飛脚屋が遊女の身請けに悩み、②大枚の小判の封印を切ってしまう(顧客のお金に手をつけてしまう)という大罪を犯す物語です。

 私は、文楽(浄瑠璃)で『冥途の飛脚』を観たことがあり、初めは、今回の鑑賞はやめておこうかなと思っていました。しかし、行ってみて良かったです。以下、記載します。

■上方の「和事わごと

(1)「和事」とは

 上方歌舞伎と江戸歌舞伎と言いますが、私は、まだその本質を理解出来ていません。
 今回、初心者向けということもあり、配布プログラムに、上方の「和事」についての記載がありました。歌舞伎座などで観る作品は、知っていることが前提となっている気がします。今回のようなプログラムでの記載や説明は、本当にありがたいです。

上方(京都・大阪)では、「和事わごと」と呼ばれる、色男の柔らかで優美な役柄や芸風、男女の恋の芝居が磨き上げられました。

配布プログラムより。

(2)関連用語

 関連でいくつか用語等を引用します。「つっころばし」と「じゃらじゃら」です。但し、「じゃらじゃら」は感覚的な用語で、もう少し幅広く解釈出来るかもしれません。

(「つっころばし」とは)上方和事の中でもとりわけ特徴的・象徴的な役柄で、単なる優男にとどまらずなよなよとして滑稽味にあふれ、まさに究極の若旦那といった姿に描かれます。その名の通り後ろからちょっと突かれるとよろけて転んでしまうような頼りなさが持ち前ですが、さらに並外れた大らかさや呆れるほどの人の好さも加わります。〈以下、具体例は省略〉

歌舞伎用語案内より抜粋。

(「じゃらじゃら」とは、)なまめかしく、いやらしい感じがするさま。だらしなく戯じゃれかかるさま。でれでれ。「じゃらじゃらとしなだれかかる」「人前でじゃらじゃらする」

「コトバンク」より。

(3)今回の配役とあらすじにそくして

 今回の配役は以下のとおりで、鴈治郎さんは、「和事」を得意としているようです。つっころばしの若旦那を演じられていました。封印を切る場面も見せ場ですが、前半、お二人がじゃらじゃらする場面も見せ場のようです。感想は後述します。

  • 大坂の飛脚問屋の跡取り息子・忠兵衛(通称:忠さん)→中村鴈治郎がんじろうさん

  • 遊女・梅川(通称:川さん)→市川高麗蔵こまぞうさん

◆ご参考:江戸の「荒事あらごと

 比較として、「荒事」についても記載があったので記載します。

江戸では、「荒事あらごと」と呼ばれる、超人的な力を持つ英雄の豪快な芸事が発展した

配布プログラムより抜粋。

■感想

 「じゃらじゃら」する二人について記載したいのてすが、表現するのが難しいです。
 二人は、イチャイチャもするのですが、喧嘩したり仲直りしたりもします。ここらへんは、見る人の恋愛経験の差で、理解の深さが変わってくるかもしれません(笑)。
 そして、私は、何より背景にある人間的な強さや、しなやかさのようなものを感じました。私は九州出身であることもあり、都から離れた地方の人の強さを感じるときもありますが、他方で、古くからの都に住む人の(地方とはまた違う)強さを感じることも多いです。

 その他では、登場人物が、関西の言葉を話している部分もありますが、標準語のような部分が多い気もしました。こういった点も含め、歌舞伎の歴史や由来はもう少し勉強していきたいと思います。

 最後に、冒頭の写真は「小判」で検索し、しのさんの画像を使用させて頂きました。小判形の入浴剤らしいです。ありがとうございました。


■公演概要

(1)会場・日程

  • 会場:サンパール荒川(荒川区民会館)

  • 公演期間:2024年6月1日(土)~6月21日(金)

  • 6月下旬には、神奈川、静岡でもあり。

(2)演目と配役

◆解説「歌舞伎のみかた」
・澤村 宗之助
・用語解説などあり。

◆『恋飛脚大和往来―封印切―』
・亀屋忠兵衛   中村 鴈治郎
・槌屋治右衛門  坂東 彦三郎
・肝入由兵衛   中村 寿治郎
・井筒屋おえん  中村 鴈 成
・丹波屋八右衛門 中村 亀 鶴
・遊女梅川    市川 高麗蔵

本日は、以上です。

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