見出し画像

【読書】超入門!現代文学理論講座

 2024年9月8日(日)、ちくまプリマー新書の『超入門!現代文学理論講座』を読みました。
 自分の最近の問題意識の一歩上を行く本で、とても勉強になりました。記録を残します。

■概要

・ちくまプリマー新書242
・超入門!現代文学理論講座
・2015年10月10日 初版第1刷発行
・監修:亀井秀雄
・著者:蓼沼正美

■私の問題意識とのつながり

 私は、これまで小説や戯曲を読むとき、①自分がこの作品の登場人物なら、どの人物に当たるだろうか、②(少し視野を拡げて)作者が、この作品を通して読者に伝えたいことは何か、など考えてきました。

 そんな私ですが、本書のまえがきを読み、「おおっ!」と思いました。少し引用します。

 たぶん国語の教科書を編集した人たちは、主人公の気持ちにピタッと寄り添う読み方が最も豊かな理解と鑑賞の方法であり、さらに一歩進めて、作品を書いたころの作者がかかえていた苦悩や、内面の葛藤を読み取ること、それこそが最も深く作品を理解する方法なのだ。そういう信念を持っていたように思える。〈中略〉
 だが、このような読み方が最も規範化されてしまうと、ほかのさまざまな読みの可能性を排除し、抑圧して、かえって貧しい読み方しかできなくなってしまうのではないか。

本書9ページ、10ページより。

 私の場合、「主人公」に限らず「他の登場人物」に多少視野を広げているものの、やはり、これまで受けてきた国語教育に縛られている部分が大きいなぁ、と感じた訳です。

 また、論説文や、(考えがしっかりした)小説家は、伝えたいことを明確にしてから文章を書くのかもしれませんが、私の場合は、書きながら纏まっていくことも多いです。こうした私のような人間からは、作者が伝えたいことは何か、というのも一義には決まらないように思います。

 その一方で、どのような観点から作品と向き合っていくべきか、文学部を出た人はどのような観点で作品と向き合っているのか、など、これまでずっと疑問を抱えていました。そうした私にとって、本書は、入門書としてうってつけであるとともに、眼が開くような一冊でした。

■紹介された4つの理論

 本書では、4つの文学理論(①ロシア・フォルマリズム、②言語行為論、③読書行為論、④昔話形態学)が紹介されています。
 それぞれ前後はあるものの、20世紀初頭以降に考え出された理論のようです。それが1980年代にブームとなったようです。本書より少し引用します。

かつて1980年代、人文科学の全面的な刷新に伴って様々な文学理論が誕生しました。今回の講座で取り上げたのは、その中でも現代の思潮の源流となった4つの理論でした

本書227ページ。

 個々の理論について、ここでは記載しません。私も、本書をもう少し深く読んでみたいと思いますし、文中に、参考文献となりそうな本も多くあげられていましたので、図書館などで手に取ってみようと思います。
 そして何より、これから他の人の作品に触れる際に、視野を広げたり、違った角度から作品を捉えたりすることに活かすことが出来ればなぁと思います。

■最後に

 まえがきの中に、用語〈テキスト〉と〈テクスト〉との違いなども記載されていました。「作者」と切り離された〈テクスト〉です。
 大学に入学したての頃、「〈テクスト〉として作品を読もう」と言われつつ、あまり自分は理解出来ていなかったなぁ、と思います。
 勉強不足といえばそうですが、あの頃はあの頃で、必死だったように思いますが。

 最後に、冒頭の画像は、「トライ」で検索し、金子幸嗣さんの作品を使用させて頂きました。ありがとうございました。
 本日は以上です。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集