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【漫画】虹色のトロツキー(感想)

 2025年2月26日(木)、『虹色のトロツキー』を読了しましたので、記録を残します。

■本の概要

 『虹色のトロツキー』は、安彦やすひこ良和よしかずによって描かれた漫画です。私は、 中公文庫―コミック版の全8巻を読みました。
 月刊『コミックトム』(潮出版社)にて、1990年11月号から1996年11月号まで連載されたのが、初出です。

 今から20年以上前、大学生の時に友人から薦められた本で、ようやく手に取ることが出来ました。また、別の友達からは、安彦良和さんが、『機動戦士ガンダム』の作画、キャラクターデザインの人だと教えて貰ったところです。

■あらすじ

日本軍の政治的陰謀うずまく昭和十年代の旧満州。日蒙二世の若者が、日本人と蒙古人の間に立ち、煩悶しながら激動の地、中国大陸を生き抜いていく。

中央公論新社のHP『虹色のトロツキー①』より。

昭和13年、旧満州国の新京(現・長春)に、石原いしはら莞爾かんじが唱えた「五族協和の実現」を理念として、建国大学が開学する。石原の心酔者、辻政信少佐は、日蒙二世のウムボルトを建大へ特別研修生として強引に入学させた。第二次大戦突入直前の、激動の中国大陸を、日蒙二世青年の目を通して活写した、アドベンチャーロマンの大作!

中公文庫『虹色のトロツキー①』の裏表紙より。

■印象に残った点

(1)「五族協和」の精神

五族協和ごぞくきょうわとは、満洲国の民族政策の標語で「和(倭、日)・朝・満・蒙・漢(中)」の五民族が協調して暮らせる国を目指した。

Wikipediaより。

 第二次世界戦後、アメリカを第一に捉える見方が中心となり、こうしたアジアに対する考え方は、私には(言葉が適切かわかりませんが)新鮮に映りました。
 他方、提唱した石原莞爾が張作霖爆殺事件に関与している(のではないかという)ことや、ヨーロッパとアジアを跨る旧ソ連(現ロシア)に対する捉え方も描かれ、当時から難しい情勢だったことも、作品を通して伝わってきました。

(2)人と思想

 作品には、上記した石原莞爾や辻政信、その他にも、安江仙弘のりひろ大佐、正珠爾礼布ジョンジュルジャップ、モンゴルのウルジン将軍などが登場します。勿論、旧ソ連のトロツキーにも触れられます。
 青年ウムボルトの視点から、彼らの立ち位置、立場、思想に触れることが出来ました。
 また、漫画(絵)で描かれていることもあり、特に、石原莞爾とはこういう容貌だったのか、と改めて認識し、写真画像を検索したりしました。

(3)作品内の日本や時代の評価

 見出しに挙げながらも、簡単には書きづらい点です。作品を通し、戦争・戦闘状態で、どのような状況に置かれるのか、どのような判断を下すのか、上司と部下はどのような関係になるのか、など色々と考えさせられました。

 個人的に、印象に残った点としては、日本人は死を美化しすぎるといった点や、旧ソ連の軍事技術の前に日本人(武士の潔さなと)はどうあるべきかといった点、大陸と(島国の)日本の違いの違いなどが挙げられます。史実に加え、こうした著者の観点が描かれていて、考えさせられました。(何点か挙げつつも、難しい問題です。)

■最後に

 今回は図書館から借りて来て、中断しながらも全8巻読みましたが、『虹色のトロツキー』は考える部分も多く、繰り返し読んでみたい本となりました。
 作品の終盤は、ノモンハン事件が描かれ、日蒙二世のウムボルトが日本軍の1人として、モンゴル国境でソ連軍と衝突する姿が描かれます。ノモンハン事件など、私はあまり詳しくなかったのですが、本作で触れる機会となりました。本作を足がかりとして、他の本なども読んでみたいと思います。また、石原莞爾など作品に登場した人物についても、もう少し本など読んでみたいです。
 作品を知ってから20年以上遅れてですが、手に取ることが出来て良かったです。自分1人の好みや感覚では、なかなか手に取ることのない本だったような気もします。友達に薦められる本というのもいいですね。貴重な読書体験となりました。

 最後になりましたが、冒頭の画像は「虹」で検索し、梅の実ちゃんの作品を使用させて頂きました。どうもありがとうございました。
 本日は、以上です。

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