Netflix「アレクサンドロス大王」の同性愛で保守派が激怒
Netflixの新作ドキュメンタリー「アレクサンドロス大王」は英語圏で大きな話題になっている。(わたしもレビューした)
優れた番組なのだが、アレキサンダー大王と側近のヘファイスティオンの同性愛描写は、物議をかもした。とくに保守派が激怒している。
Alexander the Great Being 'Gay' in Netflix Show Angers Conservatives(アレキサンダー大王を「ゲイ」にしたNetflixの番組で保守派が激怒)(TMZ 2月6日)
Netflixは、クレオパトラを「黒人」にするなど、ポリコレ(wokeness)で悪名高い。今度はアレキサンダーを同性愛者にしやがった、というわけだ。
Netflix made a new documentary about Alexander The Great. Within the first 8 minutes, they turned him gay.(ネットスリックスの新ドキュメンタリー「アレクサンドロス」。最初の8分たたないうちに、かれをゲイにしやがった)(End Wokeness)
しかし、上のポストに付いているコミュニティノートが言うように、古代ギリシャでは同性愛が主流だった。
それは、「プラトニック・ラブ」の語源になったプラトンの「饗宴」で書かれているとおりだ。
より正確にいうならバイセクシュアルだった。上の記事も指摘するように、オリバー・ストーンの映画「アレキサンダー」でも同様に描かれている。
わたしもNetflixのポリコレやLGBTQへの迎合は嫌いで、以前に苦言を呈したことがある(「ボディーズ」)。
だが、これは史実を描いているので、文句はつけられない。
とくにアレキサンダーとヘファイスティオンの関係は有名だ。
アレキサンダー大王は紀元前4世紀の人物だが、同時代に取材した複数の記録が残っている(それらをもとにしたプルタークの書が有名)。
それによれば、アレキサンダーの溺愛ぶりはすごかった。ヘファイスティオンが病死したとき、アレキサンダーは3日間食事をとらずに引きこもった。ヘファイスティオンを神としてあつかい霊廟をつくろうとしたので、多くの史家に批判されている(Netflixではそこまで描かれていないが)。
なお、アレキサンダーとヘファイスティオンは姿かたちが似ていた。それも、Netflixでは忠実に描かれている。
わたしが興味深いのは、(のちにプトレマイオス朝エジプトを開く)プトレマイオスとの「三角関係」だ。
アレキサンダー、ヘファイスティオン、プトレマイオスは、若いころから親密な3人組だった。
プトレマイオスは、アレキサンダーとヘファイスティオンとの関係に嫉妬しなかったのか、と現代の感覚では思うところだ。
たぶん、そんなことはなかったろうし、Netflixのドキュメンタリーでもそんな描写はない。
しかし、「プトレマイオスがアレキサンダーを暗殺した」説のわたしとしては、そういう三角関係があってくれたほうがおもしろい。
<参考>