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中部南部のイタリア人には出してはいけないカボチャ、とベーコンのオーブン焼き
レシピとも呼べないような、やけに簡単なレシピばかり連投していて、数少ないフォロワーさんに愛想を尽かされそうですが、またまた簡単レシピです。
イタリアに来て10年目くらいまで、料理のレパートリを増やすため毎月ラ・クチーナ・イタリアーナ(LA CUCINA ITALIANA=イタリア料理の意。HPはhttps://www.lacucinaitaliana.it/)という料理の雑誌をほぼ毎月購読していた。
ある号で、トレビザーナ・タルディーバと呼ばれる野菜にベーコンとパイ生地がフワッと巻かれている写真を見た。レシピではなくて、レストランの紹介記事だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1700221582123-nXWOg3SW33.jpg?width=1200)
優美で美味しそうだったので早速試してみる。
美味しい。
ただ、写真のように一つだけ出すのなら良いけれど、パイ生地はあまり食べると飽きが来る。
そこで2度目からはパイ生地を外してみた。
トレビザーナは苦味がいい感じの野菜でベーコンの塩味と相性が良かった。
![](https://assets.st-note.com/img/1700221636880-5wULimLrPL.jpg?width=1200)
3度目は若干甘みのある野菜で試したいとかぼちゃにベーコンを巻いてみた。
カボチャの甘みとベーコンの塩味がミスマッチで美味しかった。
この料理は今でも時々作る。
創作料理と呼べるような大層なものではないが、いつも評判も良い。
今ではカボチャはベーコンで、トレビザーナにはスペックと呼ばれるチロル地方の冷燻ハムを使うことに決めている。
本格的な夕食会なら前菜としても良いし、気軽な夕食で、肉料理を用意するほどでないはないが、パスタとサラダだけでは軽すぎる、少し淋しいかも、と思える時にも丁度良い。
ただし、南イタリア、中部イタリアの人には出してはいけません。
その理由はレシピの後に。
*****
![](https://assets.st-note.com/img/1700221672750-6DW0sezAdJ.jpg?width=1200)
<材料>
・カボチャ 約500g(種抜きで)
・ベーコン 100g
<調味料類>
・オリーブオイル
・ロースマリー(なくても良い)
*ベーコンの塩分があるので塩は不要。
<作り方>
![](https://assets.st-note.com/img/1700221703075-MlfLg5he37.jpg?width=1200)
1・カボチャを好きな形に切る。三日月型でも一口大でも三日月型を半分にした物でも(OK)
・・写真は小さめかぼちゃ三日月型に切り。またその半分にました。
・・ベーコンは焼くと縮むのを想定して量を考えると見た目が良く出来ます。
![](https://assets.st-note.com/img/1700221755404-3MDUHGp1kC.jpg?width=1200)
2・1にオリーブオイルを少量かけ全体にまぶす。薄くオイルの皮膜をつけるくらいの感じで。
![](https://assets.st-note.com/img/1700221782735-5kYk4ADgfE.jpg?width=1200)
3・ベーコンをカボチャに巻きつける。
![](https://assets.st-note.com/img/1700221804511-y73ZS2xOfu.jpg?width=1200)
4・180度に温めたオーブンで15分程度(かぼちゃの厚みにより加減)焼く。
5・熱々をテーブルに運ぶ。
![](https://assets.st-note.com/img/1700221857072-fTJtRjYdpy.jpg?width=1200)
*****
今この料理の評判が良いのは、大半の友人が北イタリア出身だからだ。
20年前の大失敗は、招待者の出身地が問題だった。
ミラネーゼも何人かいたはずだが、ガブリエレとコンチェッタも招待していた。
ガブリエレはプロダクトデザイナーでマルケ州(中部イタリア)出身。当時奥さんと息子はマルケに住んでいて週3、4日ミラノで仕事をしていたので、頻繁にウチに食事に来ていた。
コンチェッタはカラブリア州(南イタリア)出身で92年の夏休みロンドンの英語学校で知り合ったファッションデザイナー。当時はヴェルサーチで靴やバッグをデザインしていた。
その日の夕食会でこの料理をアンティパストに出したのか、セコンドとしてだしたのかは覚えていないが、大皿に乗せたこの料理をテーブルに運ぶとガブリエレとコンチェッタが大きく顔を歪めた。
コンチェッタ「何これ?!カボチャ?カボチャなんてお客に振る舞う野菜じゃないわよ。」という。
ガブリエレ「カボチャなんてうちの方では動物にくれてやる野菜なんだよ、知らないの?」
コンチェッタ「こんな料理、一体どこで習ったの?」
冒頭に書いたようにトレビザーナから発展させて、、、と話すと。
ガブリエレ「そんな勝手に発展させちゃダメだよ。」と。
結局二人はカボチャには手を付けなかった。
確かに二人とも言いたいことを言え合える友人だったが、正直少し厳し過ぎない?
私は当時、既に独立していたが、以前勤めていた事務所のボスや事務所関連の友人知人が皆エミリア地方(北イタリア)の人達で、代表名物料理にはカボチャのトルテッリーニなどもある地方だから、南イタリアの人にとってカボチャがそんなに「いけない野菜」などと知る術もなかった。
今その話を北イタリアの友人にするとカボチャがそんなに「いけない野菜」なのかと皆驚く。
イタリア人同士でも意外と知らないものだ。
19世紀の美食家ペリグリーノ・アルトゥージがイタリア初のレシピ本「La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene」(料理学と美食学、とでも訳すのでしょうか)を執筆した際にエミリア地方のカボチャのトルテッリーニのレシピも掲載しようか迷った末「カボチャは”控えめすぎる野菜”だから」という理由でその有名な歴史に残るレシピ本にカボチャのトルテッリーニは入れなかった、という話を知ったのはずっと後になってからの事。
ですので、イタリアでカボチャ料理を作る時は招待者の出身地を必ず確認してからメニューに入れてください。
![](https://assets.st-note.com/img/1700221887665-xagbEtpVEu.png)
・赤い部分が南イタリア:アブルッツォ、モリーぜ、カンパーニャ、バジリカータ、プーリア、カラブリア州、この図では、サルでニア、シチリアは「島」とされていますが通常シチリア州も南イタリアとされます。
・黄色い部分が中部イタリア:トスカーナ、ウンブリア、マルケ、ラツィオ州
・緑色が北イタリア:エミリアロマーニャ、ヴェネト、トレンティーノ・アルト・アディジェ、リグーリア、ピエモンテ、ヴァッレ・ダオスタ州
*日本で出版されている「イタリアのおいしい旅」という本ではエミリア・ロマーニャ地方が中部イタリアに分類されていますが、全くの間違えです。著者はイタリアに10年以上住んでいたはずなのに。
他にも南イタリア特産乾燥トマトがまるでミラノの食材のように書かれていて、そういう全く間違った事が紙媒体の出版物に平気で書かれているというのはとても残念です。