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罪悪感の植え付け

私たちには楽しかった日々もあったし、心から笑い合った日もあった。

きっと彼には心から楽しかった日などなかったのかもしれないが。

彼はとにかく私をお姫様扱いした。

彼の家は丘の上にあったため、彼よく私をおんぶして登った。
それが面白くて、恥ずかしくて一緒に笑い転げて転倒したこともあった。

荷物は全部彼が持ち、車のドアは彼が開けて閉めてくれたしあらゆるドアというドアは彼が開け閉めし、いつもレディーファーストだった。

彼とは毎日のように色んな国のレストランで食事を楽しみ、しょっちゅう旅行に行き、広い家に住み、朝起きると彼は私の朝食を作り置きして仕事に出かけた。

外国人の彼氏というのはこんな風なのかと思いながらも、罪悪感も持っていた。


私は彼に何もしてあげていない…
こんなにしてもらってばかりでいいのか…
私はこんなにしてもらう程価値があるのか…

これは多分私の自己肯定感の低さにも問題があると思うが、こんな考えを持ったことも今までになかったし、彼と会うまでは特に私なんて…と思ったことはあまりない。

そんなふうに私に罪悪感を持たせるのも、私を洗脳するための戦略の一部だったのだと思う。

正直、そんなことぐらい私は自分でできるからやらせて欲しいと思っていたし、そんな事知ってるからいちいち説教しないでと思っていた。

それがまた自己肯定感を下げるのだ。
彼は私を何もできない、何も知らないバカだと思っているのか…?

こうして彼は少しずつ私に
”お前は何もできないバカだから俺に従え”
と言わないで、私に植え付けていた。

モラハラが始まってからは、このセリフを息をするように常に言われ続けることになるのだった。

私は、その劣等感や罪悪感から逃れたくてその頃から少しずつ自分で料理を作り始めた。

私が料理をしない理由は、学生時代からバイトや遊び、社会に出てからは夜遅くまで働いていたため家で料理をする時間はなかった。

仕事をしていた時は、ランチを食べる時間もない日もあるほど忙しかった。

それに実家暮らしだったこともあり、する必要もなかった。

そして食べ物自体に興味が薄く、レストランで美味しい料理を選ぶセンスもまるでなかったし、食に関する知識も知ろうとする意欲もなかった。

私が作った料理は失敗ばかりで酷いものだったが、彼はいつも文句一つ言わずに残さず食べた。

唯一これだけが彼が後にも先にも一度も文句を言わなかったことだ。

彼は料理については結婚してからも、私に作って欲しいと言ったことは一度もなかった。

結婚後彼の両親と同居したことがあるが、彼の母親は1週間に一度くらいしか料理をしなかった。

だから彼の中では、母親、妻が毎日料理を作るのが日常ではなかったのかもしれない。

彼はそもそも大学以降は海外に出ており、ずっと一人暮らしだったから家事全般は私よりも慣れていて無駄なく完璧にこなしていた。

家事についても結婚後はかなりネチネチと言われることになるのだった…




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カイ
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