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凪良ワールド⭐️『汝、星のごとく』🌠祝‼️本屋大賞💕

講談社 凪良ゆう著 2023年 本屋大賞受賞

久しぶりに凪良ゆうの世界を堪能😆
やっぱりスゴい❤️情景が流れ出す🎵

あらすじ
瀬戸内海に浮かぶ小さな島。
コンビニもカラオケもない。
娯楽と言えば住民の噂話。よく言えば親身、悪く言えば閉鎖的なご近所さんたち。
   高校生の暁美あきみの父は、恋人のところからもうひと月も帰ってこない。母の酒の量は増えるばかりだ。そんなことは島の皆が知っている。
「元気出しなよ」と励ますことばの裏に見えかくれするかわいそうな子。

ある朝、母に父の様子を探るようにと地図を渡された。
どうして私が?うんざりする反面、母の気持ちもわかる。
港でバスに乗ろうか迷っているとき、目に入ったのは転校生の青埜櫂あおのかい
京都からスナックをやってる母と島に引っ越してきたという。
切れ長の目なのに鋭くない。規定と違う鞄があか抜けて見えた。

「また、飲んでるの?」思わず口からでた言葉。
「なんでわかんねや」
「島の男の人はよく飲むから」
違う、本当は母と同じ臭い。
魚の入った鍋を持ち、楷のお母さんが駆けてくる。
「彼女?魚はええからデートしてき」
「ただの同級生や」
慌てて首を横にふるふたりを残して、鼻歌を歌いながらスカートを翻して帰って行った。
島の女たちとは違うふわふわとした印象に
(あんな人ならお父さん、帰ってきたかもしれない)と思った。

「そんな、にらまんといたって」
えっ?思わず隣の櫂を見た。
「まあ、女に好かれるタイプやないけどな」
ドキリとした。
「そういう意味じゃなくて…」
違う、いや、でもそうかもしれない。
「わかっとるよ。気にせんでええ。ほな」
反射的に櫂のシャツをつかんだ。
「なん?」
気がつけばバス停まで引っ張って来ていた。
こんなときに限って、バスは直ぐに止まり、目の前で扉を開く。
バスの最後尾で父の愛人の所へいくと告げた。
「そら、根性いるわな」
櫂はシートにもたれ、つきあってやるよと言う空気だけが、伝わってくる。

地図の先で出会った父の恋人は、私の描いていたのとは全くちがう印象だった。

第一章  潮騒  より


花火、自転車、海。
彼女の作品には欠かせないシチュエーションであり、重要な展開の演出。

ヤングケアラー。毒母。
社会の片隅でもがきながらも自分だけの世界を夢に終わらず目的地として手にいれる楷。
同じような境遇から飛び出したいのに、母と言う荷物を捨てきれないで生きる暁美。

互いを必要としているのに、すれ違ってゆく心。
人はなぜ相手の心が見えないんだろう。
こんなにもお互いを求めているのに、些細な言葉ですれ違ってゆく。

各章毎に、楷から目線、暁美目線で出来事が綴られてゆくから、すれ違うふたりに、
「違うんだよ、彼はそんなこと思ってないよ」
「早く、今のうちなら間に合うのに」と読んでるこちらがそわそわハラハラさせられる。

相手を思うからこそ口にできない本当の気持ち。
少年から大人へと成長してゆくふたりを、読者は歯がゆい気持ちで見守るしかない。

二人にとっての救いは、北原先生の存在だ。
本当に今、彼らと同じような状況の人たちのそばに、北原先生がいればいいのに、と思ってしまう。
北原親子に、なつかしさを感じたのは、「わたしの美しい庭」の百音もね統理とおりに会えた気がしたから。

彼らは相変わらず、自分らしく潔く生きている。
だからこそ、暁美や櫂のがんじがらめの生き方に警鐘を鳴らせられるのかもしれない。

誰でもない、自分が思う「普通」を、ありのままに。

だが、それが一番むずかしいのかもしれない。

しばらくは、もう一度ページを開ける勇気がない。

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