BOOK REVIEW❼:世界で生きるチカラ〜国際バカロレアが子どもたちを強くする〜
国際バカロレアのイメージはエリート教育。アメリカではIB(International Baccalaureat)と呼ばれ、私が勤務していたアメリカの高校にありませんでしたが、他校ではIBの日本語クラスを教えている先生がいました。教員も特別な研修が必要なことや、世界中で単位が認められること、また、日本でもいくつかのインターナショナルスクールや有名私立が取り入れていることぐらいは知っていましたが具体的に説明できるほどの知識もなく、この本を読んで見ることにしました。
読んだ感想は、「これが日本の公立高校でも全てできたら、今の問題は全部解決するだろうなー!」というもの。考えた人、すごい!素晴らしいプログラムだと思います。
もともと国際バカロレアが始まったのは本部があるスイス。一昔前はジュネーブに国際機関が多く集まり、その子女たちが、その後どの国にいても通えることができるようにとして作られたのが起源だそうです。
【国際バカロレアの理念】
多文化に対する理解と尊敬を通じて、平和でよりより世界の実現のために貢献する、探究心、知識、そして思いやりのある若者の育成を目的とする。
学校や政府、国際機関と協力しながら高度なプログラムを開発することで、世界中の子どもたちが一人ひとりの違いを知るだけでなく、それぞれに理があることを理解し、行動的で共感する心を持ちながら、生涯学び続けることができる学習者になるよう働きかける。
【国際バカロレアの10の学習者像】
1 探求する人
2 知識のある人
3 考える人
4 コミュニケーションができる人
5 信念のある人
6 心を開く人
7 思いやりのある人
8 挑戦する人
9 バランスのとれた人
10 振り返りができる人
授業の構成は以下の6つの視点と6つのテーマを組み合わせる形で実施されます。一般的な国語や算数といった教科はなく、「教科融合型」の授業です。
<6つの視点>
① 言語的視点
② 社会学的視点
③ 数学的視点
④ 芸術的視点
⑤ 体育・道徳的視点
<6つのテーマ>
❶ 自分自身について- Who we are
❷ 私たちが置かれている場所や時代について- Where we are in place and time
❸ 自己の表現方法について - How we express ourselves
❹ すべてのことはどのように機能しているかについて- How the world works
❺ 社会を体系付ける方法について- How we organize ourselves
❻ 地球に共存する術について- Sharing the planet
授業例も紹介されていますが、生徒が自分の答えを見つけて行く様子や、それをファシリテートする先生方の様子を読んでいるだけで「こんな授業楽しそうだな」「私もこんな授業できたらな」「自分も子供のころにこんな授業が受けられたら今の自分とは違う自分になっていたかも」なんて考えてしまいました。
作者の坪谷ニュウエル郁子さんはご東京インターナショナルスクールの理事長をされていて、ご自身の子どもさんの教育のためにインターナショナルスクールを作っってしまったというパワーウーマン。2012年に文科省がIB認定校を国内で2018年までに200校に増やす目標を立て、本格的に国際バカロレアの導入を目指した際に、国際バカロレア機構アジア太平洋地区の理事に着任し、国内での取りまとめをされています。
彼女の考え方で面白いなと思ったものを下にメモしておきます。
・ 「豊かさ」の基準が変わってきている。(会社のために働くや経済的な豊かさよりも、個性を生かしたり楽しく社会へ貢献したいと考える若者が増えていること)
・ 日本人らしい国際人を目指す
・ グローバル教育=英語教育ではない。日本語でも英語以外の教科でもグローバル教育はできる。(この発想は英語以外の先生方の中にはあまりないのでは)
・ グローバル人材とは「常に自己成長を続け、世の中に貢献することを目標にする人材」
国際バカロレアの導入は令和二年6月時点で44校にとどまっています。1コースにつき400万円かかるなど経済的な理由や、教員が研修を受けなければいけないことなどが導入が進まない背景にあるようです。ただ、今は日本の教職課程でもIBの免許が取れる大学が増えてきているとか。文科省はこの後、国際バカロレアをどれぐらい進めていくのでしょうか。公立ではまず難しいと思いますが、発想や目指す生徒の資質などは大いに参考にしていきたいですね。
こちらの本はtomandfriedaさんの記事で知り、購入しました。面白い本を紹介してくださり、ありがとうございました!