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秋川 美鈴
2021年6月13日 12:49
あのね抱き上げた君の後ろ頭を見ること年老いてよく眠るようになった君の寝顔を見ることゆっくり歩く君といつもの道を行くことそれが幸せだったんだけれど春の日に君は長い長い散歩に出かけたもう会えないんだねあの日から心を真綿にくるんでしばらくぼんやりしているんだ君から受け取った愛愛おしい耳に馴染んだ君がたてる色々な音忘れない鼻先から尻尾までの手触りず
2021年10月16日 16:39
9月ももうすぐ終わるそろそろ渡っていくのかな最後に残った家族が今日も空を飛ぶここで生まれた君たちはその翼で長く空を渡るのだねその目で何を見るのだろう華奢で小さな美しい鳥たちよ春に逝った私の犬に今私は心の中で話しかける絶対の不在が私の心も空っぽにした春君たちが山々を越えて私の勤める山あいの建物に到着したそして秋が近づく今その犬と共に在る感覚を私は持つことができる
2020年5月23日 08:58
老犬とゆっくり行ったり来たりの散歩ジャスミンの花柄をつんでクリスマスローズの葉の手入れキッチンで扇風機を回しておでこに風コーラの氷指で沈めたとなりの家の庭歩き始めたこどもの小さな笑い声涼しい泡がはじけて静かな朝
2021年2月11日 23:38
N駅の向こう側暗闇の芯に走りこむ車両車内で高校の制服を着た私が20代の母と言葉を交わす夢途切れて足元が重いのは君だったか小さな頭をそっと撫ぜるこちらとあちらの世界の間に庭園があるとしてごらん水を集める石盤に集まる雫が広がって浮ぶスイレンの花びらに風が触れる星の賑わいが静まり返るそんな夜私の不安は音楽のよう大きく小さく
2020年4月25日 11:22
三角定規重ね こうもり泳ぐ茜雲まだちょっと寒いね猫のぬくもりトナカイの毛布シマトネリコの枝青い卵が4つ水色の空気自転車の音君はゆっくり歩くようになったね
2021年6月13日 12:30
長い昼寝薄目を開けた君の頭をそっと撫ぜる君はため息をつくそれは私も好きって返事壁のマリメッコ赤い花が笑っている少し喉が渇いたねお水を入れ替えよう魚のビスケットとミルクも少しおやつにしよう17歳の君よもう少し一緒にいれるかな
2021年6月13日 12:32
長くなった昼寝目が覚めると足がこわばってつっぱるんだマッサージをするけどよろめきながら水を飲む私が部屋から出ると敷居のところで目をパッチリ開いて戻るのを待つね階段にじっとたたずむ姿は私が小さいころ見たうちのおばあちゃんとそっくりだとも後追いをする幼児のようだとも思うよ君の若いころ家族の言い争いが起こるとかけつけたみんなの間をうろうろして「諍いはやめ