それが紙であれ電子書籍であれ、ミステリを名乗る小説を読むときには、その「1行」がいったいどこに(どのページの何行目に)現れるのか、恐る恐る、びくびくしながら、読んでいる気がします。いちばんこわいのはページをめくった途端に、「視界の左端」にその「1行」が見えてしまったとき。そこに至るすべての過程を一つ一つ丁寧に辿ってその「1行」にたどり着きたいのに、先に目に入ってしまったときには、「ああなんてことをっ」と、後戻りのできない絶望にもだえ苦しむことに――というのは言い過ぎでしょうか。
その「1行」というのは、ほかでもない、「どんでん返し」の1行です。それを読んだら、これまで読んできたものが表情を変える。世界は裏返り、意味は反転する。驚きのあとで、ようやく理解と、感情が追いついてくる。そうか、そういうことだったのか。だとしたら、あの場面は、あの人は。――この物語は。
あまたある「どんでん返し」の作品群のなかから、今回お届けするのは、追いついて湧き上がってくる感情があまりにも強烈で、さっきまでの驚きをすっかり追い越してしまうような、5つのどんでん返しミステリです。
世界は裏返り、意味は反転する。
おすすめの「どんでん返しミステリ5選」
浅倉秋成『家族解散まで千キロメートル』(KADOKAWA)
〈家族の嘘〉が暴かれる時、本当の人生が始まる。どんでん返し家族ミステリ
★『家族解散まで千キロメートル』関連情報はこちらをチェック!
伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』(創元推理文庫)
第25回吉川英治文学新人賞受賞
澤村伊智『予言の島』(角川ホラー文庫)
初読はミステリ、二度目はホラー。この島の謎に、あなたもきっと囚われる。
道尾秀介『ソロモンの犬』(文春文庫)
道尾秀介の描く青春は切なくて可笑しくて、悲しい
夕木春央『方舟』(講談社文庫)
極限状況での謎解きを楽しんだ読者に驚きの〈真相〉が襲いかかる。