本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」
先日、こちらのnoteを読みました。
夏目漱石の小説「門」。
その主人公が住む家の「間取り」を、Marmaladeさんは小説の内容から読み解いたそうです。
正直、今まで考えたことのない本の楽しみ方でした。内容を読むだけでなく、一冊の本を楽しみつくす素敵な試みだと思います!
こんな風に、誰もが知る「本」というフォーマットを使って新しい遊びができないか?を最近考えています。
表紙があって。目次があって。ページをめくりながら進めていく感覚。途中でしおりを挟んだり。気になるページの角を折り曲げる方もいるかもしれない。もちろん、全てkindleという人も。
これからの読書の楽しみ方はどうなるのか?
それを考える材料として、この本を読んだので紹介したいと思います!
紙の本も愛するKindle開発者
著者のジェイソン・マーコスキーは、Amazonキンドルの開発の現場責任者です。
本書の中で、著者は(当然ですが)Kindleの素晴らしさや可能性について繰り返し言及します。
その一方で、紙の本にまつわる幼少期の体験や、紙の本を通じた読書体験の長所にも度々触れています。
母の料理本には感謝祭や休日に食べた料理の記憶が深く刻み込まれているが、電子書籍ではこうはいかない。この料理本はこすれば匂いが出てくるし、タイムマシーンのような意味も持っている。
食べ物の染み自体が昔食べた料理を思い出させてくれるからだ。実を言うと、私自身も料理するときは紙の料理本を使うようにしている。クッキーの生地はiPadの上に落ちるよりも、本に落ちた方がいい。
(p.39)
また、紙の本の場合は自分が書いた字を見て過去を思い出すこともある。私が書く仕事をするときに使うデスクには、8歳の頃に使っていたボーイスカウトの本が置いてある。
「水の節約方法を書いてみよう」「好きな本の種類を挙げてみよう」などといった課題のリストが書いてあり、それぞれの課題の下にある自由記入欄に私の書いた答えがあり、その下に母のサインと日付が記してある。
ロープの一つ結び、ペンチの使い方から、近所で共産主義者の不審な動きをみかけたときの警察への連絡方法(私は冷戦末期に幼少期を過ごした)まで、当時を振り返り、こうした課題の一つ一つに自分で書いたメモを見返すこともできる。
(p.39)
これまで自身が積み上げてきた読書体験を踏まえた上で、より良い「読書の未来」について語っているのが本書になります。
読書の未来
著者は「本の作り方」や「読書体験」いずれにおいても、作者と読者の共創が必要になると述べています。
アマゾンやアップルもいずれそのようなソーシャル・ネットワークを構築するだろう。
一冊一冊の本ごとに「小部屋」が用意され、読者は本の中からその小部屋に直接アクセスできる。
小部屋では熱心な読者がテーマを設定して議論を進めていく。
場合によっては作者自身が自分の本の小部屋に入って来て、読者の質問に答えたりすることもあるだろう。
(p.123)
出版社の早い段階で本を何人か読ませ、その読者も該当の本の編集工程に参加させるという手法を採っている出版社もいくつかあるようだ。
読者は問題のあるページにコメントを付記し、作者が見て納得できるのであれば、その修正内容が次の版の本に反映される。
(p.124)
このようにして読者が書籍製作に関わっていくことで、いずれ「原作者」という考え方も消失していくのではないだろうか。
ある種のジャンルでは、作者は少し強い権限を持った読者の一人になることも考えられる。
原稿を書くのは作者だが、事実確認や重要ポイントの具体化、見落としの補完などの面では読者との意見交換に頼ることになるからだ。
(p.125)
本というパッケージ(小部屋)の中で、作者と読者の境界を限りなく無くしていく。
これからの本は「コンテンツを運ぶ」だけではなく、本の外側も包括した「読書体験を売る」ものにならないといけない。
個人的に感じたこと
「読む」という行為は本だけの特権ではなく、能動的に想像力を働かせることさえできるのなら、ほかのメディアでも可能だと言えよう。
ただし本には映像や音声がないため、読者が自分の想像力だけで大量のディテールを補完しなければならない。
つまり、想像力の求められる度合いが映画やビデオゲームとは比べ物にならない。
(p.297)
本の魅力というのは、この「想像力で補う余白」だと思います。
その余白部分を味わうために「読む」。
冒頭で扱った「主人公の住んでいた家の間取りを考える」というのは、そういう意味でも素晴らしい例だと思います。
「想像力で補う余白」を最大限に楽しむために、本という既存のフォーマットを使って何ができるのか?
やはり、この問いに戻ってくると思います。
個人的には、今まで読んだ本をメモ付きでまとめたりして、本の繋がりを探したりしています。(※どなたでもコメント頂けますので、コメント頂けると嬉しいです!!)
いずれにせよ、本の提供する価値に改めて気づけたので、もう少し深掘ってみようと思います!
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