【読書感想文】痴人の愛/谷崎潤一郎
この本を読んだきっかけは、又吉直樹が選ぶ名作20選という帯が目に入ったから。
大学1年生の時に買って少し読んだが、タンスに3年ほど放置してしまっていた。
3年の時を経て、1週間ほどかけて読了。
ヒトには制御不能な欲動、情欲が潜んでいるだなと思った。
ナオミ(主人公の婚約相手)の虜になるとなかなか抜け出せない主人公に、もどかしさを感じた。
性に奔放なナオミに関する描写が生々しいが、文体が美しいためスラスラと読み進めてしまった。
主人公は、途中からナオミを心の中で淫婦と呼ぶが、そう呼ばれても仕方ないことを平気でしてしまう。
立場的にナオミを手のひらの上で転がしていると認識していたが、それも束の間。
ナオミのわがままや自由奔放さに振り回されまくる、その痛烈な皮肉が面白かった。
大学生や外国人との浮気を幾度となく繰り返すナオミのことが頭から離れなくなり、不安・執着・嫉妬・憎悪に苛まれ、仕事に支障をきたすレベルで脳内を毒されてしまう。
修羅場のような場面が幾度となくあったが、怖いもの見たさのような感情から、ページを捲る手が止まらなかった。
愛し方、愛され方には色々あるが、パートナーと幸せに生きるとはどういうことかを考えさせられた。
また、過度なエゴ・価値観を相手に押し付けることにより、その人がどのように逸脱してしまうのかを垣間見ることができた。
身の回りにナオミのような魔性の女性がいたら、どんな距離感で関わればいいのだろうと考えを巡らしたりしていた(どんな着地点だよ)。